スタッフレポート

スタッフによるレポートを掲載しています。

「中和も味も免疫も、こんなにスゴイ唾液」について、勉強会で発表して

【唾液はどこでできるのか】

唾液は、唾液腺という臓器が作ります。約9割の唾液を出す大唾液腺は、耳下腺、顎下腺、舌下腺の

3つです。耳下腺が最も大きいですが、唾液が最も多く分泌されるのは顎下腺です。

耳下腺は漿液性唾液(サラサラ唾液)、舌下腺は粘液性唾液(ネバネバ唾液)、顎下腺は両方を分泌

します。漿液性唾液は水分が多い唾液です。消化の促進を促したり、細菌や食べ物を洗い流したり、

食べ物を胃腸に運んだりします。粘液性唾液はタンパク成分が多い唾液です。粘膜の保湿・保護を

したり、細菌を絡め取り体内への侵入を防いだりなど、身体を守るために様々な働きをします。

唾液の分泌には自律神経が関係しており、交感神経が優位なとき(心と体が興奮モード)には粘液性

唾液、副交感神経(お休みモード)は漿液性唾液が分泌されます。しかし、生活の中では両方の唾液が

分泌され、混合唾液として口の中を潤しています。刺激に反応して大量に分泌する唾液を、刺激唾液と

いいます。特に食事時の咀嚼による刺激は刺激唾液の分泌を増大させます。一方で、咀嚼などの刺激が

なくても自然に流れ出る唾液を、安静時唾液といいます。口腔粘膜には無数の小唾液腺が存在し、唾液

を産生しています。存在する部位によって口唇腺、口蓋腺、頬腺、臼後腺、舌口蓋腺、舌腺と呼ばれて

います。無数にあるため、粘膜を隙間なくカバーしているのです。

【唾液の出口はどこなのか】

耳下腺で作られた唾液は耳下腺乳頭から分泌され、口腔内に広がります。顎下腺と舌下腺からの唾液は

舌の根元の舌下小丘から下顎前歯部に向けて噴射されます。唾液が最も多く届くのは下顎前歯部な

ので、下顎前歯部舌側はう蝕になりにくい部位なのです。一方で、唾液が届きにくい部位もあります。

例えば、口腔前庭(口唇粘膜及び頬粘膜と歯列に挟まれた空間)です。しかし、口腔前庭を潤している

のは耳下腺乳頭から分泌された唾液です。耳下腺から分泌される唾液は漿液性唾液なので、口腔前庭

全体が潤されます。歯石がよく見られやすい場所は、唾液が届きやすく停滞しやすい部位です。歯石は

プラークが唾液中のカルシウムなどの成分によって石灰化してできるものです。上顎7番頬側は、

歯ブラシが届きにくい場所、唾液の出口である耳下腺乳頭の近くで歯石が見られやすいです。顎下腺と

舌下腺の唾液の出口である舌下小丘に近い下顎前歯舌側にも、よく歯石が付着しています。一方、

上顎前歯唇側は小児でもう蝕の好発部位。それは、唾液が届きにくい部位だからです。また、口唇閉鎖

不全症(ポカン口)なら尚更、唾液は届きにくくなります。

【年を取ると唾液は減る?】

成人の一般的な1日の唾液分泌量は、約1.5ℓといわれています(小児は500㎖)。加齢により刺激唾液は

大きく減少しませんが、安静時唾液は減少します。加齢以外でも、薬物やホルモンなど様々な要因で

40歳以降から唾液は減少傾向にある人が多いです。個人差も大きいです。

【食べ物が飲み込めるのは唾液のおかげ】

唾液の99.5%は水分です。硬いものを噛み砕いて先が尖っていても、口腔内に刺さることはなく、痛み

も感じないのは、唾液の水分で粘膜が濡れているからなのです。また、パサパサした食べ物が喉に張り

付かず、飲み込みやすいのも、唾液中の水分が泥状にしてまとめているからなのです。お年寄りが

食べ物をのどに詰まらせるのは、嚥下の能力低下と、唾液の分泌量の減少により、食べ物が唾液で

コーティングされていないからです。しっかり咀嚼することで、咀嚼-唾液反射による唾液が分泌される

ので、高齢者には咀嚼の指導をするとよいでしょう。

【口の中が掃除されるのも、唾液のおかげ】

唾液量は多い方がいいのは、唾液が口腔内を洗い流す作用に関わるからです。この作用のことを自浄

作用(洗浄作用)といいます。自浄作用は、唾液を飲み込むときにはたらきます。嚥下をするときれい

な唾液がまた分泌され、汚れた唾液は食道に飲み込まれます。人間は1分間に2回唾液を飲み込んでいる

ので、毎日相当数の洗浄が行われています。朝、口がネバネバするのは、夜中に唾液が大量に減り、

唾液の量が激減した結果、自浄作用が停滞し、細菌が増えて口腔内が汚れた証拠です。

【味を感じられるのも、唾液のおかげ】

舌の表面のザラザラした突起は、舌乳頭といいます。舌乳頭は4種類あり、舌上部には全面を覆うように

糸状乳頭、所々に茸状乳頭があります。舌の両脇には葉状乳頭があり、咽頭近くには有郭乳頭があり

ます。糸状乳頭を除く3つの乳頭には味蕾という器官があり、ここで味を感じます。味蕾は舌だけでは

なく、軟口蓋、咽頭、喉頭蓋、頬にもあります。しかし、味蕾に食べ物が触れただけでは味は感じま

せん。味物質が唾液に溶けて初めて味蕾に運ばれます。つまり、水溶性のものしか味は感じません。

また、味蕾の周りはいつも唾液が分泌されており、水に溶けた物質をすぐに洗い流します。腐敗して

いるような危険なものを食べないよう、唾液が次々と味物質を洗い流すことで、新しく口に入ったもの

が安全かそうでないかを判断することができているわけです。

 

【感想】

唾液の基礎知識や唾液の効果について、再度復習することができました。唾液量が少なくて食事中に

よくむせる患者さん、誤嚥の可能性がある患者さんには唾液腺マッサージや舌回し、水分摂取を積極的

に指導していきたいと思いました。また、歯石が付着しやすい部位について再確認することができ

ました。SRP時は、上顎7頬側近心部や下顎前歯部舌側に気にかけながら、スケーリングをしていき

たいと思います。

                       衛生士 小鐵 

  2025/01/05   ふくだ歯科
タグ:唾液

全身疾患と歯科治療について、勉強会で発表して

〈糖尿病〉

膵臓のβ細胞から分泌されるインスリンが減少したり、インスリン抵抗性が上昇(=インスリンが効き

にくくなる)したりすると、高い血糖値が持続するようになる。このような病態を糖尿病という。

糖尿病は、慢性腎臓病、虚血性心疾患、脳血管障害など重篤な合併症を引き起こしうるため、血糖値を

下げる治療が必要となる。治療には経口血糖降下薬が使われるが、血糖コントロールが困難な場合は

インスリンも使用される。注意すべき点は、低血糖と腎臓、脳、心臓などの合併症です。低血糖は、

インスリンやスルホニル尿素薬、速効性型インスリン分泌促進薬を使用・服用している患者さんに発生

する可能性がある。低血糖になると動悸、発汗、めまいなどといった交感神経症状が始まり、さらり

血糖値が低下すると、意識レベルが低下し、最終的には昏睡から死に至ることもある。

診療時に配慮すべきこと

→インスリン、スルホニル尿素薬、速効型インスリン分泌促進薬を使用・服用している患者さんでは

低血糖の既往を伺い、あれば頻度、症状、対応を確認。そのうえで低血糖の予防を行う。いつも通り

食事し、決められた量の血糖降下薬を使用・服用し来院するよう本人や家族に指導。空腹時の治療は

低血糖を起こしやすくなるので避ける。低血糖になると交感神経症状(動悸、発汗、めまいなど)が

現れるので自覚したら申告してもらうよう伝える。もし、交感神経症状の申告があったり、申告がなく

ても低血糖を疑う症状が認められたら、ただちに血糖測定を行う。低血糖が確認されたら、ブドウ糖を

含む飲み物などを飲んでもらう。意識が減弱し、経口摂取が困難になった場合は119番に連絡する。

〈慢性腎臓病(CKD)・透析〉

様々な原因により、腎臓が本来の機能を慢性的に果たせなくなった病態を慢性腎臓病( CKD)という。

主な原因は糖尿病と高血圧です。慢性腎臓病になると脳卒中、心筋梗塞、心不全、そして死亡リスクが

上昇する。時間とともに進行し、最終的には腎臓がほぼ機能しなくなる。これを末期腎不全といい、

代替療法として透析や腎移植が必要となる。透析は尿毒症の原因となる有機物質や水分を人工的に除去

する方法。

診療時に配慮すべきこと

→原因が糖尿病であれば、糖尿病へのリスクマネジメントが必要である。透析中の患者さんでは、

①歯科診療は透析の翌日にする②高血圧・低血圧に注意する③血圧測定のカフはバスキュラーアクセス

(人工的に作られた血液の出入り口)のない腕に巻く④感染症に対するスタンダードプリコーションを

行う⑤出血傾向を示す場合があるため止血に注意する⑥体位変換は段階的に行う

鎮痛剤としてのNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)は腎機能を低下させるため、投与はできるだけ

避ける。

〈脳血管障害(脳卒中)〉

脳血管の異常を原因とする、脳あるいは脊髄への障害を脳血管障害(脳卒中)という。脳血管障害は

大きく虚血によるものと出血によるもの(脳内出血とくも膜下出血)に分けられる。高齢者における

脳血管障害のリスク因子には、高血圧、ストレス、脂質異常症、喫煙、肥満、運動不足、脳血管障害の

家族歴、糖尿病などがある。脳血管障害では運動機能障害など、様々な合併症が発生する。嚥下障害も

その一つです。

診療時に配慮すべきこと

→脳血管障害においても血圧コントロールは重要である。歯石除去などの歯科処置も、できるだけ

短時間で、痛みや精神的ストレスを与えないよう配慮する。嚥下障害が残存していれば、誤嚥性肺炎の

予防として口腔ケアなどの介入を行う。脳血管障害を持つ患者さんには、高血圧、糖尿病、心房細動

などを併存していることが多いため、それぞれの疾患に対するリスク管理が必要である。

感想

疾患によって特徴や配慮すべきことがそれぞれあるので、知識を増やしていけたらと思いました。

患者さんには問診票を書いてもらっていますが、何の疾患があってどんな薬を服用しているかの確認を

怠らないようにしたいと思いました。

                    衛生士 檜垣

  2024/12/01   ふくだ歯科
タグ:全身疾患

全身疾患(高血圧・心房細動・虚血性心疾患)について、勉強会で発表して

●初めに

「安全」は医療において最重要項目です。現在では、高齢化や医療技術の進歩により 以前であれば

外来受診が難しかった方でも、歩いての外来受診ができるようになりました。以前よりも歯科医療での

「安全」の確保が難しくなっているということです。 患者さんのもつ疾患、薬剤を含むその治療方法を

理解し、医学的エビデンスに基づいたリスクマネジメントをしっかりと行わなければなりません。

① 高血圧

●疾患の全体像

高血圧とは、慢性的に血圧が上昇している病態のことです。高血圧は有病率が全年齢層で

25パーセント強、高年齢者(65歳以上)で45パーセント以上となっています。

高血圧が続き、進行していくと、最悪死に至る可能性が高くなります。

ただ、自覚症状がないことが多いため、サイレントキラーと呼ばれています。

死を含むリスクを低下させるために、血圧を下げる薬(降圧薬)が処方されます。

●診療時に配慮すべきこと

診療開始前の血圧が低くても、治療中に急激に血圧が上昇することがあります。このような変化は

高齢者に多く認められます。痛みや恐怖感などのストレスが原因になることが多いので、ストレスを

減らす工夫が必要です。DHによる患者さんの気持ちに寄り添ったやさしい声かけは患者さんの

ストレスを減らすのに有効です。

治療前に血圧が著しく高い場合は、治療を中断し、医師に相談しましょう。

ただし、痛みがあり緊急の対応が必要な場合は、最小限の治療は行います。

血圧上昇時には、ゆっくり深呼吸をしていただくと、ある程度の血圧降下が期待できます。

また、降圧利尿薬を服用している患者さんには、プライドを傷つけないように、紙などに書いて伝える

ようにしましょう。 もし、悪心、嘔吐、痙攣、意識障害を伴う場合は119番連絡をしましょう。

② 心房細動(不整脈)

●疾患の全体像

心拍数と心拍のリズムが正常範囲から外れたものを不整脈といいます。 有病率は全年齢層で

10パーセント弱、高齢者(65歳以上)で15パーセント強です。

加齢とともに不整脈は増加します。高齢者における代表的な不整脈が心房細動です。

心房細動では、脈がバラバラ(絶対的な不整脈)になり、脈拍数は多くの場合、上昇します。

最大の問題点は、血栓により脳梗塞を起こすリスクが高いことです。

また、心臓の機能が著しく低下し、心不全となる場合もあります。

●診療時に配慮すべきこと

経口抗凝固薬を服用してもらった状態で行う歯科処置は、薬の影響で歯石除去による出血が止まり

にくいため、止血が問題となります。最初は狭い範囲での歯石除去を行ってみて、出血・止血状況を

確認しましょう。狭い範囲であれば圧迫止血で対応できる場合が多いです。

抗凝固薬を休薬すると、脳梗塞などのリスクが上昇するため、医師と相談したうえで休薬する場合は、

患者さんにリスクを説明して同意を得る必要があります。

③ 虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞)

●疾患の全体像

心臓の筋肉に酸素を供給している心臓の外側にある冠状動脈が、狭窄して閉塞したりすることで、心筋

が低酸素状態(心筋虚血)となり、心機能が低下した病態を虚血性心疾患(冠動脈疾患)といいます。

全年齢層で5パーセント強、高齢者(65歳以上)で11パーセント強となっています。

狭心症と心筋梗塞に分類され、狭心症における心筋虚血は一過性で、心筋の壊死はなく、心機能低下も

比較的小さいです。一方、心筋梗塞は心筋が壊死するため、心機能の低下はより強く、とくに壊死の

範囲が広い場合は重篤な結果となり、突然死になる場合もあります。

●診療時に配慮すべきこと

恐怖心や不安などの情動により起こるストレスは狭心痛を引き起こしうることが知られています。

DHの優しい声かけや接し方をするなどの配慮が必要です。

★感想

医療の進歩とともに、医療の環境が複雑になってきています。進歩することは良いことですが、私たち

がそれに追いついていないと意味がありません。口も体の一部なので、口腔内のみではなく、全身疾患

についても新しい知識を収集し、深めていきたいと思いました。 また、ストレスが患者さんの病態を

変化させる因子になることが多いので、患者さんに寄り添った声掛けがかなり大事になることが

わかりました。患者さんによって、してほしい声掛けが違うと思うので、患者さんとの信頼関係の構築

がとても大切だと感じました。

                      衛生士 福田

  2024/10/27   ふくだ歯科

歯周病(病因)について、勉強会で発表して

1.歯周病の主原因

歯周病の主原因はバイオフィルム(プラーク)。

バイオフィルム形成を促進する因子には、

(1)歯石

(2)不適合修復物

(3)義歯

(4)矯正装置

(5)歯列不正

(6)食片圧入

などがある。

2. バイオフィルムの病原性を左右するもの 

バイオフィルムの病原性は、磨き残しの量より質(細菌種)で決まる。

悪玉歯周病菌のいないバイオフィルムは、大量に沈着していても病原性はあまり高くはない。

3. 歯周病の原因菌

歯周病の原因菌は、レッドコンプレックスと呼ばれるP.gingivalis、Tannerella forsythia、Treponema

denticola の3菌種。

この3菌種は互いに栄養共生関係にあるため、3菌種が揃うと、それぞれがより強い歯周病原性を発揮

するようになる。中でももっとも歯周病原性が高いのはP.gingivalisであることが報告されている。

4.歯周病の感染時期

Tannerella forsythiaとTreponema denticolaは小中高生の頃に、P.gingivalisは18歳以降に感染する。

そして、個人それぞれの口腔細菌叢は20歳代後半に完成すると推測されている。

口腔細菌叢が完成してもバイオフィルムの病原性と歯周組織の抵抗力の間には均衡が保たれ、

共生関係が存在しているが、口腔清掃不良や加齢などの理由で、その共生関係が破綻したときに

歯周病が発症する。

5.歯周病の部位特異性

歯周病菌は唾液によって、すべての歯の歯周組織に感染するため部位特異性はない。

6.歯周病の発症・進行を左右する原因

1990年頃には歯周病の発症・進行を左右する原因は個人が持つ歯周組織の抵抗力であるとされていた

が、現在はバイオフィルムの病原性の変化で発症するといわれている。 バイオフィルムの病原性は

歯周ポケットの状態によって変わり、特に、ポケットから出血があるとき、バイオフィルムは高い

病原性をもつようになり、歯周病は進行する。

感想

今回歯周病の病因論についてまとめていく中で、歯周病について新しく知ることが出来たり、もともと

あった知識はさらに深めることができ良かったと思いました。

メインテナンス時に、適切な患者指導ができるためにも歯周病に関する知識は必要になってくると思う

ので、今後も歯周病について学んでいきたいと思います。                                       

                         衛生士 出射

  2024/09/26   ふくだ歯科
タグ:歯周病

「歯科医療における医療安全の実現」について、勉強会で発表して

1.医療安全とは

歯科医療行為を実施する過程で、患者や医療職従業員が不必要な危害やリスクにさらされないように

する理念であり、その実現のためには歯科医療事故の防止、医療情報の早期の発見、情報の共有等が

求められる。 医療安全の実現のためには、歯科医療事故の防止が重要となり、発生した歯科医療事故

の対応も再発防止とともに重要な課題となる。

2.歯科現場におけるトラブルの例

⑴歯科医療行為の過失

⑵歯科医院内での事故

⑶説明不足によるトラブル

⑷問題患者によるクレーム

3.トラブルを回避する為には

カルテ、画像、医療記録等、医療行為の痕跡を残しておくことが大切

(衛生士記録等も証拠として使用できる)

※医師の説明に対する患者の反応や表情、患者返答は言葉そのものの記載があると患者の承諾に真実味

が増すのでより効果的

Q&A

〈質問1〉

治療が終了して、歯科医院内の廊下や部屋の中で患者が転倒した場合に、歯科医院に法的責任は

あるか。

《回答1》

ご質問のような態様で転倒事故が発生した場合、その法的責任を検討するためにはあくまでも医療者に

患者の転倒自体が予測できるかどうか、予測できたとして、 転倒の発生機序を前提として、実際、有効

に防止することができるかどうか、との点について具体的に検討することになります。責任の有無の

判断はその検討結果によります。 歯科医院の敷地内に障害物がある場合、その障害物が本来存置される

べきでない場合はその存置自体が歯科医院側の過失になります。その結果、その存置を予測しない患者

が障害物が原因で転倒した場合は、歯科医院が責任を負担することになります。 但し患者が少しでも

注意していれば、その事故を回避できたとした場合は、いわゆる過失相殺の問題となります。すなわち

発生した損害の内、患者の過失の割合の分だけ全ての損害額から控除されることになります。  

〈質問2〉

患者の暴言や理不尽な要求に対し、それを断った際に、裁判にかけるとか、 院長に訴えるなどと

言われた時、どう対処すればよいか。

《回答2》

患者が暴言を吐いたり理不尽な要求をした際には、当該患者をいわゆる問題患者と認定すべきです。

問題患者と認定されれば、最終的には診療契約の解除に持ち込みます。 それに対して患者が裁判に

かけるとか、院長に訴えるとの暴言を吐いたとしても全く恐れることはありません。そのような事態に

なることは実際にほとんどありませんし、仮に患者側が訴訟提起したとしても、患者側が勝訴する確率

は完全にゼロです。 むしろこのような患者に限って、逆に医院の方から積極的に診療契約の解除に持ち

込めば、患者はそのような事を全く想定していないわけですから、その効果は極めて有効となります。

感想

ふくだ歯科では、治療について院長からメリットデメリットを説明し承諾を得てから行っていますが、

患者さんの中には院長に対しては「わかりました」と返答したあとに、再度衛生士に対して「これって○○

ってこと?」と質問してこられ、勘違いをしていたり、理解をされていない事が分かる時もあります。

トラブルを防ぐ為にも、説明を受けている患者さんの様子をしっかり確認しフォロー出来るように

したいと思いました。

                                         衛生士 星島 

  2024/08/15   ふくだ歯科

令和のカリオロジーダイジェストについて、勉強会で発表して

 歯周病菌&う蝕原因菌は厄介!~全身疾患に関する最新情報~

①慢性炎症に関する最新情報

歯周炎は歯周組織に持続的な炎症が引き起こされる慢性炎症性疾患であり、

・心血管疾患(虚血性心疾患・脳卒中)

・自己免疫疾患(関節リウマチ)

・神経疾患(アルツハイマー病・パーキンソン病)

・メタボリックシンドローム  (肥満・糖尿病・高血圧・脂質異常症)

・その他 (がん・誤嚥性肺炎・非アルコール性肺炎・潰瘍性大腸炎など)

  などが関連することが示されています。これらに共通するのが 持続的かつ慢性炎症をともなう疾患

  であるという点です。

口腔バイオフィルムと全身疾患を繋げる3つの経路

1、慢性炎症は歯周組織の炎症性物質(サイトカイン)が血流に乗って全身に運ばれ、全身の慢性炎症

  に影響を与える。

2,菌血症は歯周病菌やその代謝物などが血流に乗って全身に運ばれ全身の慢性炎症に影響を与える。

3,口腔細菌の嚥下は口腔細菌が飲み込まれて大腸に送られる。 口腔細菌叢にディスバイオ―シスを

  起こし全身の慢性炎症に影響を与える。  

瞬間湯沸かし器のような免疫細胞が引き起こす炎症増悪スパイラル

 免疫細胞は過去の感染を覚えており(免疫記憶)、同じ病原体に再感染した場合には、より速く強い

 免疫反応を引き起こします。 これまで抗体による獲得免疫だけの機能であると 考えられてきたが、

 最近の研究により、 慢性炎症が体内のどこかに存在する場合、マクロファージや好中球など、もと

 もと体に備わっている免疫細胞にも感染の記憶が 刻まれ、次に起こる感染に対してより強力に反応

 するようになることが明らかになっています。 このように即座に過剰に反応する瞬間湯沸かし器の

 ような免疫細胞は全身すべての慢性炎症を悪化させます。これが歯周病と全身疾患をつなぐ重要な

 はたらきを担っているのです。

②口腔細菌叢と脳の関係

 Pg菌の感染がアルツハイマー病を悪化させる。

 アルツハイマー病は認知症の原因として最も多い疾患で 80歳以上では20%以上がアルツハイマー

 型認知症と 言われています。

 アルツハイマー病の原因は未だに明らかになっていませんが

① アミロイドベータ(Aβ)の蓄積

②タウ(tau)タンパク質の過剰なリン酸化と変性に伴う凝集

③神経細胞の障害

④酸化ストレス など様々な仮説が提唱されています。

 ディスバイオーシスに傾いた口腔細菌叢に存在する病原菌やその構成物質が 脳へ直接作用する

 メカニズムの仮説については歯周病菌であるpg菌の 根拠となっています。また、アルツハイマー病

 患者の脳からpg菌の強力な毒性物質であるジンジパインとよばれるタンパク質分解酵素が検出されて

 おり、その検査量が多いほど、変性したTauタンパク質量が 多いという相関が示されています。

まとめ

全身疾患についても学ぶことができ自分の中でも歯周病全身疾患の関係をより詳しく知ることができ

ました。 歯周病が全身疾患に関与していくことを知らない方も患者さんの中にはいるかもしれないので

気になる方や伝えたほうがいい方にはこの内容を分かりやすく伝えていけたらと思います。

                    衛生士 岡崎

  2024/07/21   ふくだ歯科

口内炎ができやすい患者さんへの食事のアドバイスについて、勉強会で発表して

口内炎は局所的原因による、もしくは原因不明な原発性口内炎(アフタ性、カタル性)と、全身性疾患

などが原因となる症候性口内炎(感染性、自己免疫性、膠原病性)に大別されます。

今回は原発性口内炎のうち、食事や栄養面と関連の深いアフタ性口内炎について説明します。

<原因>

・ストレス、睡眠不足、偏食

 ビタミンB2、ビタミンB6の欠乏も口内炎を引き起こす為不足には注意

ビタミンB2(発育促進、エネルギー代謝に関与)

・レバー、魚、卵、乳製品などの動物性食品

・きのこ

・納豆

ビタミンB6(タンパク質の代謝に必要)

・鶏のささみ、魚などの動物性食品

・くるみなどの種実類

・野菜などの植物性食品

これらのビタミンは水に溶け出しやすいため、煮汁ごと食べられる料理であるとビタミンを多く

摂取することができる。

<ビタミン含有量の多い食品とおすすめの料理>

ビタミンB2

☆含有量の多い食品                                                  ☆おすすめの料理

・普通牛乳200ml(0.30mg)          ・クリームシチュー

・レバー100g(3.60mg)            ・レバニラ

・うなぎ1切150g(1.11mg)            ・鰻巻き

・卵1個(0.22mg)                           ・カレイの煮付け

・納豆1パック(0.25mg)

・カレイ1尾200g(0.7mg)

ビタミンB6

☆含有量の多い食品                                                     ☆おすすめの料理

・まぐろ刺身5切75g(0.64mg)                       ・マグロの刺身

・鮭1切80g(0.26mg)                           ・鮭のムニエル

・くるみ10個(0.20mg)                           ・鶏肉のピカタ

・鶏胸肉1枚280g(1.51mg)                        ・バナナケーキ

・バナナ1本(0.38mg)

手軽にビタミンを補給する方法として、サプリメントや栄養ドリンクなどがあります。

サプリメント(例:ビタミンBミックス(ディーエイチシー)など)

栄養ドリンク(例:チョコラB Bライト(エーザイ)など)

どちらもドラッグストアやコンビニエンスストアなどで購入でき、安くて栄養組成に優れています。

感想

アフタ性の口内炎ができている患者さんにはこれまで、「疲れをとってしっかり休んでください」と

いうようなことしか言えず、具体的なアドバイスができていませんでした。ビタミンB2やビタミンB6

の欠乏も原因となることがわかったので、含有量の多い食品を覚えて具体的なアドバイスができる

ようにしたいです。

                        衛生士 沼本

  2024/06/23   ふくだ歯科
タグ:口内炎

OHIを「自分事」として聞いてもらうには・・・について、勉強会で発表して

【OHIとは…】

Oral Hygiene Instructionの略称。

プラークを除去することの意義、方法を患者さんに示し、口腔清掃指導を行うこと。

プラークの存在とその病原性を患者さんに説明することで、モチベーションを高めるとともに、

個々の患者さんに適したブラッシング法、歯間部清掃補助用具などの指導を行う。

【歯周治療の主役は患者】

初めに、歯周治療について理解してもらうことから始める。歯周病は自覚症状が少なく、罹患している

ことに気づきにくいため、「他人事」と捉えている方も少なくはない。そのような方に「あなたの口

の中は歯周病です。このまま放置していたら歯が抜けてしまいます。歯磨きでお口の中を改善しま

しょう」と伝えても、なかなか伝わらない。しかし、歯周病に罹患していることは伝えておかなければ

ならない。 まずは、歯周病に罹患していることを「自分事」として捉えてもらう。そのためには、まず

相手のことを知り、相手に合わせて話すことから始める。そうすると、患者さんは「自分のことを理解

してくれる方であれば、協力しよう」と考えてくれるかもしれない。私たちの伝え方により「自分事」

として捉えてもらい、興味・関心を持ってもらうことから始める必要がある。

① 性別・年齢・職業など個々の患者さんに伝わりやすい言葉(話し方、言葉遣い)を選ぶ

② 患者さんの反応はどうか、表現や言葉を観察することが大切

③ 相手に伝わったのかを確認する、このひと手間が次に繋がる

【プラークコントロール不良の3つの原因】

1. 患者さんの問題

 1) 磨いていない

 ・どの時間帯で磨いているかを聞く

 ・生活習慣を変えることは容易ではないので、少しずつ回数が増やしていく

 ・ブラッシング時間を延ばす

 2) 磨いているが、磨けていない

 (ブラッシングが適当)

 ・ブラッシングの重要性から説明する

 ・「適当」から「その方に合ったブラッシング」を実践することで歯周環境がさらに良 くなることも

  伝える

 (テクニックの問題)   

 ・性別や年齢、全身疾患なども考慮する

 ・リウマチやパーキンソン病、脳出血疾患などの手指の運動にかかわる疾患に罹患し ている、

  進行している場合はプラークコントロールの低下がみられやすい  

 ・ペングリップで把持した場合、利き手側の3~4番は歯ブラシを動かしにくいため、 磨き残しが

  見られやすい

 (ブラッシングの順番)

 ・ブラッシングの順番が定まっていないと、磨き残しが見られやすい

 ・同じ部位に炎症が起こりやすい方も、磨く順番を変えるだけで炎症が軽減すること もある

 (ブラッシングの時間)   

 ・就寝前はできるだけ時間をかけてブラッシングしてもらう

 (ブラッシング時に歯肉に痛みがある)

 ・なぜ痛いのか、原因を見つける  

 (例)ブラッシングによる擦過で歯肉が傷ついている   

    ↳毛先のやわらかいブラシを処方し、その場でいたくないかを確認する   

     次回来院されたときにも、「歯ブラシが使えたか」「痛みはなかったか」を確認

 (ブラッシング時の出血が怖い)

 ・歯肉に強い炎症が起きている方に多い

 ・「出血=怪我」と思っているからブラッシングができない

 ・なぜ歯肉に炎症が起きているのか、なぜ歯肉から出血しているのか説明に繋げる

2. 歯ブラシの問題

 1) 使用している歯ブラシが合っていない

  ・ヘッドの大きさ ・毛の硬さ ・毛先の形状

 2) 適切な磨き方を知らない

 3) 毛先が広がった歯ブラシを使用している

3. 口腔内の要因

 1) 歯の問題  

 ・歯石 ・不適合修復 ・補綴装置 ・歯列不正 など

 2) 口腔領域の問題  

 ・口呼吸 ・鼻炎 ・ドライマウス など

 3) 生活習慣の問題  

 ・生活習慣の変化 ・食生活の乱れ ・患者さん自身の問題 など

【「気づく」「認める」「褒める」】

・今まで、プラークコントロールが不良だった患者さんが努力してブラッシングを行い、改 善して

 きたら、必ず「気づく」「認める」「褒める」を行う

・モチベーションが上がり、さらにプラークコントロールが良くなる

・すぐにプラークコントロールが良くならない患者さんがいることも理解して、その方に合 わせて

 働きかけ続けることも大切

【伝わるOHIと伝わらないOHI】

(伝わるOHI)

 ①明確な目標設定  

 ・「次の来院までに、この歯肉の腫れを引かせてみましょう」と伝え、それに合うブラッ シング指導

  を行う

 ・引き続いて炎症が起きていれば、改めてOHIを行う

 ・目標があれば、患者さんがどこに向かえばいいのか明確になり、頑張ってもらえる

 ・行動変容を促しやすくなる

 ②患者さんのために実践  

 ・生活背景やブラッシングスキルを把握し、それに合うオーダーメイドのOHIを行う

 ・無理強いはしない

 ・その日のプラークコントロールに囚われず、歯肉の状態を確認し、発赤・腫脹を見て判 断する

 (来院直前のみ徹底して磨いていることがあるため)  

 ・自分ができる歯科衛生士であることを証明するためのOHIではない

 ③シンプルな説明  

 ・患者さんが興味・関心を持つまでは、ワンポイントアドバイス程度に留めておく  

 ・シンプルな説明に努め、短時間の方が患者さんの記憶に残りやすい  

 ・OHIを行う前に伝えたいことを一度自分の頭の中で整理しておく

(伝わらないOHI)

 ①目標を設定せず、だらだらと行う

 ②目的のないOHI、歯科衛生士の成績、自己満足のためのOHI(患者さんのためではない)

 ③説明が長い

【感想】

患者さんにTBIをするときにバリエーションが少なく、同じような説明を繰り返すことがよくあった。

炎症箇所ごとのTBIではなく、その患者さんのためのオーダーメイドなTBIを心掛けていきたいと思う。

TBIの時に、「褒める」ことは必ずしていたが、「気づく」や「認める」機会は少なかったと実感

できた。どのように指摘したら患者さんのモチベーションを下げずにアプローチができるかを意識して

TBIを行っていきたい。        

                  衛生士 小鐵

  2024/05/19   ふくだ歯科
タグ:歯みがき

頑張っている歯科衛生士への応援メッセージの講演に参加して

SデンタルクリニックのTさん

「歯科衛生士になって嫌いだった自分を好きになれた」

Tさんは何も持っていない自分が嫌いで、人生なんかどうでもいいと思っていましだが、26歳で離婚し

本当に何もなくなった時に人生をやり直してみようと28歳の時に歯科衛生士学校に入学。でもいざ就職

すると、時間が経つにつれて仕事をするのがつらい日が増えてきました。辛くなった理由は患者さんに

対して、数値が良くならなかったり、指導がうまくできずもうTBIしたくないと思ったり、私じゃなくて

もいいのでは、歯科衛生士に向いてないと思い出したからです。

その時担当した患者さんは、喫煙をしている49歳女性飲食店勤務の方で歯磨きは1日3回、最長5分の

ブラッシング、歯磨きは嫌いじゃないとのことでした。歯周基本治療は順調に進み、患者さんはタバコ

を全く吸わなくなりました。しかし再評価時に、「旅行に行ったら楽しくなってタバコを吸って

しまって、それからずっと吸っている」と言われ、また1からかと思い「絶対また禁煙できます、

頑張りましょう」と言ったみたいです。それからは患者さんの来院が途絶えてしまいました。

Tさんはとても落ち込みましたが、同じミスをしないようきちんと原因を知ろうと思いました。

禁煙指導がうまくいかなかった原因として、

1. 0か100でしか考えていなかった

2. 具体的な禁煙方法の提案、話し合いができていなかった

3. リスク説明を何度もすべきだった

の3つを上げました。

反省をもとにTさんが実践した禁煙指導

1. 諦めずに寄り添う

  禁煙できている場合

  →禁煙できていることを褒める

   都度、禁煙の進み具合の確認

   問題点について話し合う(傾向と対策)

  禁煙できていない場合

  →小さな成功や過去の成功も褒めていく

   都度、禁煙の進み具合の確認

   再チャレンジに向けての勧め

2. 具体的な禁煙方法の提案

 ① 禁煙を開始する日を決める

 ② 禁煙外来などの医療機関を勧める

 ③ タバコを吸いたくなった時の対策

  →シュガーレスガムやアメを口にする

   灰皿やライターなど喫煙道具を処分する

   歯磨きしたり運動したりする

   などの具体的な対策を考えておく

3. 繰り返しリスク説明を行う

 非喫煙者より歯周病に2~8倍罹患しやすいこと

 生活習慣病や歯周病などの様々な疾患のリスクファクターになること

 歯周治療、様々な歯科治療の成功率が低下すること  

 などを説明

この3つのことに配慮し、喫煙をしている49歳男性事務職の方で歯磨きは1日2回、最長1分の

ブラッシング、歯磨きが嫌いな患者さんを担当。なかなか禁煙できない中、小さなことを褒めるなど

患者さんの速度に合わせた禁煙指導を行った結果、禁煙に成功したそうです。それからTBIの回数を

増やすなどし、今では補助清掃用具を追加するなど歯磨きが好きになったそうです。

まとめ

患者さんの発言の真意に気づくこと

自分の弱い部分を知り諦めずに挑戦し続けることで成長できる

成長できたことで自分のことを好きになれる

自分を大切にできると仕事も大切にできる

 

感想

これから患者さんに指導していくと良い方向に行ったり悪い方向に行ったりするかもしれません。

もし悪い方にいってしまった時は、何がダメだったのか原因を知り同じ失敗をしないようにしたいと

思いました。そして苦手なことには挑戦し続け成長していけたらいいなと思いました。

                         衛生士 檜垣

  2024/04/07   ふくだ歯科

口腔マイクロバイオーム(細菌叢)について、勉強会で発表して

1. 口腔マイクロバイオームはどのように形成されるか

口腔内には700種類以上の様々な細菌が集団を(コロニー)を形成しています。口腔マイクロ

バイオームの乱れは、う蝕や歯周病を引き起こします。つまり、う蝕や歯周病になっている人となって

いない人とでは、口腔マイクロバイオームが異なるということです。 今回は、赤ちゃんの口腔内に

細菌叢が形成されていく過程で、どのような要因が影響を及ぼすのかについて説明していきます。

ⅰ)母親と同じような細菌叢が形成される

母親の体に存在する細菌叢を構成するメンバーに対しては、赤ちゃんの体で免疫反応が起こらない

ように調節されています。 そのため、出生後に母親の細菌叢に似た細菌叢が形成されやすくなります。

つまり、母親の口腔の健康状態が赤ちゃんの口腔マイクロバイオームの形成に大きく関わってきます。

ⅱ)出産形態や歯の萌出との関わり

経膣分娩か帝王切開によって、子どもが最初にさらされる微生物の数が決定します。 また、乳児期に

母乳か人工乳か、おしゃぶりを使用しているか、していないかも関わりがあります。しかし、それ以上

に歯の萌出は大きな影響を与えます。 これはまだ研究段階ですが、健康的な細菌バランスに誘導できる

方法が分かれば、歯だけではなく、全身の健康維持に貢献できると期待されています。

ⅲ)遺伝と環境はどちらの影響が大きいか

乳幼児の口腔細菌叢の分析結果は、実子と母、養子と母のペアでの類似度に違いは認められず、遺伝の

影響は非常に小さいです。また、実子と養子の双方で、血縁のない女性と比較して母親との類似性が

高いことから、接触や環境の影響が大きいことが分かっています。 母と子どもの間の類似度は子どもの

年齢とともに増加し、ごく初期に観察された宿主遺伝の影響が時間とともに失われる傾向があります。

また、興味深いことに母親と同居の配信者の口腔細菌叢は母子ペアよりもさらに類似性が高いことも

示されています。 つまり、接触頻度と物品共有環境、およびその状況におかれている年数の長さがより

大きく影響することを示しています。

2. ディスバイオーシス(口腔マイクロバイオームの乱れ)

ディスバイオーシスの要因の1つに喫煙があります。今、人気の電子タバコにもディスバイオーシスを

促進する科学物質が含まれています。電子タバコの使用に伴う歯周病のリスクがあります。

3. ディスバイオーシスを防ぐ方法

口腔内硝酸塩が存在すると、口腔細菌の糖質発酵時に起こる口腔環境の酸性化を抑制できる可能性が

あります。硝酸塩はビーツ、ほうれん草、小松菜、レタスなどのに多く含まれます。これらの摂取が、

歯の健康に影響を与える長期的な影響を評価する必要があります。 まだ、解明されていないことも多い

ですが、この研究を進めていけば、将来は若いうちに口腔マイクロバイオームの検査を受けて頂くこと

で、その患者さんのう蝕と歯周病のリスクを知ることができるようになります。それを元に、患者さん

により適切な口腔疾患予防プランが立案できるようになるかもしれません。

【感想】

研究段階のことも多いですが、口腔マイクロバイオームに対しての理解が深まることで、科学的根拠に

基づいて、患者さんの口腔内へのアプローチをしていくことが出来ると思いました。現段階では、

どんな細菌叢を持った人と暮らすかで、自分の口腔内細菌叢が変化していくことが分かっています。

難しい話にはなるので、患者さんにお伝えするときはしっかり噛み砕いて、豆知識程度の雑談として

お伝えしていきたいです。

                             衛生士 福田

  2024/03/10   ふくだ歯科