スタッフレポート

象牙質知覚過敏症について、勉強会で発表して

〈象牙質知覚過敏症の症状〉

→象牙質知覚過敏症とは、

①症状として象牙質痛を発生し、

②硬組織の欠損・疾患(う蝕・咬耗・楔状欠損など)が原因とならないものを指す

・露出した象牙質に口腔内への様々な刺激(冷水刺激・酸味刺激・甘味刺激などの誘発刺激) に伴って

   生じる誘発痛

・象牙質痛に該当する…エナメル質欠損を伴い、象牙質への刺激で生じる一次痛

※エナメル質とセメント質は神経が来ておらず、感覚そのものが発生しない。そのため、ブラッシング

 や歯面研磨、スケーリングでは歯肉が腫れているなどの 他の条件がない限り痛みは生じない

・一時的で鋭い(一過性の)痛みで一次痛を発生する

・時にその痛みは数分続くが、刺激の消失とともに、痛みは消失する

・「痛みのありか」がはっきりしない

・持続性の鈍痛や、拍動性疼痛、咬合時痛や咀嚼時痛は生じない

・打診痛に陰性を示す

〈象牙質知覚過敏症の対応〉

→対症療法を行う前に、①歯肉退縮がしやすいかと、②歯肉退縮の原因の見極めが必要

(歯肉退縮がしやすいか)

→歯肉の退縮のしやすさは歯槽骨の厚みと付着歯肉の厚みに大きく影響される

① 歯槽骨の厚みがあり、付着歯肉の厚さもある…歯肉退縮は起こらない

② 歯槽骨の厚みがあり、付着歯肉の厚さが不十分 または、歯槽骨の厚みが薄く、付着歯肉の厚さが

 ある…歯肉退縮は起こりにくい

③ 歯槽骨の厚みが薄く、付着歯肉の厚さも不十分…歯肉退縮が起こりやすい

(歯肉退縮の原因)

→再発を防ぐためには、対症療法の前に象牙質知覚過敏症を発生しやすい歯肉退縮の 原因を調べ、

 その原因を除去することが重要

① オーバーブラッシング

・根尖に向かって斜め45度の角度で当てていないか(バス法)

→歯頚部の丸みを意識して、歯ブラシを歯冠方向に向け、歯頚部に対し斜め90度で磨く

・歯ブラシを掌で握っていないか(パームグリップ)、歯ブラシの動かし方は大きくないか

→歯ブラシの持ち方を執筆状(ペングリップ)に、動かし方は小刻みに動かすように指導

・必要以上に同じ部位ばかりを磨いていないか

→歯ブラシの毛の硬さを1段階やわらかくしたり、ブラシが開いている可能性が 高いので新しいものに

 変えたりする

② 外傷性咬合

外傷性咬合の確定診断は歯科医師による咬合診査になる

→咬合調整やマウスピースなどで対処する

・安静時に上下の歯が接触していないか

・舌圧痕(舌が長時間歯に押し付けられることによって生じる舌側縁に生じる歯の圧痕)

 頬粘膜圧痕(頬の筋肉が長時間収縮し、頬が歯に押し付けられることにより生じる頬粘膜に 認め

 られる線状の圧痕)がないか

・くいしばりや歯ぎしりはないか(咀嚼の約5倍大きくなる)

③ 非う蝕性歯頚部歯質欠損(NCCL: Noncarious Cervical Lesion)

 セメント‐エナメル境付近に認められる病的な歯質の欠損

④ 歯周治療による歯周ポケットの改善

 歯周基本治療により歯周ポケットが改善すると、歯肉の退縮も認められることがある

→・SRPの前にプラークコントロールをしっかりと行い歯肉の炎症をある程度消退させる

 ・歯肉や歯頚部のセメント質を必要以上に傷つけないためにも、SRPの前に 探針などを用いて歯石を

  探知したうえで、低侵襲なSRPを心がける

〈歯磨剤・抑制剤で象牙質知覚過敏症に対応する〉

① 鈍磨…感覚を鈍らせる

② 凝固…露出した象牙質表面に刺激が加わり、象牙細管内液が外向き移動するのを 凝固により防ぐ

③ 蓋…細管口を閉鎖する ※当院にあるMSコートはこれに該当する

〈感想〉

メインテナンス時のTBIでバス法をお勧めしてはいるが、Hysを訴えたり、ブラッシング圧が強かったり

する患者さんには別の方法のTBIを考える必要があると分かった。セルフケアの方法だけではなく、磨き

方や握り方も定期的に確認し、患者さん自身の手癖が付く前に修正していきたい。また、口腔内観察で

は歯だけを見るのではなく、頬粘膜や舌の状態もしっかり確認していきたい。      

                           衛生士 小鐵

  2023/11/22   ふくだ歯科