スタッフレポート

スタッフによるレポートを掲載しています。

平成30年度 歯科医療安全研修会に参加して

「歯科における感染対策とマニュアルについて」

歯科領域における医療安全

◆標準予防策の実施

◆抗体価検査・予防接種(医療従事者、研修生、学生など) 

 B型肝炎、麻疹、風疹、水痘、流行性耳下腺炎、インフルエンザ

◆針刺し、切創対策

  針捨てBOXを設置、安全装置付き機材を使用、危険物の分別を徹底

◆院内感染防止マニュアルの作成、定期的に見直し改定

◆スタッフへの研修会を実施

 

感染対策の不備による経営への影響

1.保健所の立ち入り検査、改善指導

 ◇院内感染対策指針・マニュアルの確認

 ◇整備されていない場合

  新規開業時は開設が認められないケースあり

  作成するように指導を受ける

2.医療事故・訴訟のリスク

 ◇院内感染発生時は診療所の評判を落とすことにつながることがあり、 感染した患者が診療所に

  対して、損害賠償を求める医療訴訟も増加している

 ◇スタッフの安全を脅かす(スタッフからの医療訴訟)

  スタッフの定着率の低下

 

感染対策の基本

 標準予防策(Standard Precaution)スタンダード プリコーション

 すべての人の湿性生体物質(血液・体液・汗を除く分泌物・排泄物・唾液・創傷のある皮膚・粘膜)

 は、病原体を含んでいる可能性があり常に感染の可能性がある

 

問診表の感染症情報は正しいのか?

・多くの患者は感染症を持っているのか知らない

・HIVの場合、申告しない患者が多い

・我が国では、C型肝炎やHIV、梅毒が増加している

 

標準予防策の遵守

 手指衛生の徹底…適切なタイミングで適切な方法

 →アルコール手指消毒、石けんによる手洗い

 適切な防護具の着脱…曝露のリスクに対する防護具の選択と適切な着脱

  →エプロン・ガウン、手袋、マスク、ゴーグル

  *目は粘膜なので感染のリスク多

 

手指衛生(手指消毒・手洗い)

*手に目で見て汚れがない場合…擦式消毒用アルコール製剤で手指消毒

*手に汚れがある場合…流水と石けんで手洗い

 ・手洗いより、手指消毒の方が滅菌効果が高い

 ・手洗いより、手指消毒の方が手に優しい…保湿成分あり

 ・手洗いより、手指消毒の方がアクセスが良い

 手指消毒…どこでも使える、洗い場まで行かなくて良い

 

手指衛生のタイミング

◇治療の前後

◇手袋を着用する前と手袋を外した後

◇歯科治療室や歯科技工室から離れる前

◇汚染された可能性のある環境表面や機器に触れた後

◇勤務に就く時、帰宅する時

◇食事やトイレの前後など

*迷ったら、手指衛生を行う習慣をつける

 →自分の手が不潔か清潔か考える…自分だけが安全ではいけない

   触ったところは全て不潔となってしまう

 

針刺し・切創予防策

  針刺しによる感染率

 HBV > HCV > HIV

  1~62%   1.8%    0.3%

 血中ウィルス感染症の感染経路

 ・経皮的曝露=針刺し切創事故

 ・経粘膜的曝露=眼粘膜、口腔粘膜など

 ・既存の創傷部位への曝露=あかぎれ、かさむけ

  リキャップに関連する事例

 ・リキャップ時に的が外れて刺傷

 ・リキャップ時に針がキャップを突き抜けて刺傷

 ・リキャップ後キャップが外れてしまい刺傷

 

歯科医院での針刺し・切創事例

 歯科医師の84%、コ・デンタルの72%が針刺し切創を経験

 歯科医師…診療時間中の針刺し切創が多く、器具使用中や交換時に多い

  コ・デンタル…診療時間後も多く片付け、器財洗浄・消毒時に発生

 世界的に歯科医師のB型肝炎発生率は「一般集団」より高く、米国6倍、ドイツ4倍、日本2.5倍と

 有意に高い。

 医療従事者の中でも歯科医師のHBV感染が最も多い。

 

発生後の対応

◆HBV(+)

 HBsヒト免疫グロブリン(HBIG)を48時間以内に注射。

 体内に侵入したHBウィルスをHBIGで中和排除することによりHBウィルス 感染を予防できる。

 HBsワクチンを事故直後~7日以内、1か月後、6か月後の3回投与。

◆HCV(+)

 専門医と相談。インターフェロンは推奨しない。抗ウィルス剤の内服投与。

 (一日約73,000円:8週間)

◆HIV(+)

 3剤併用による抗HIV療法、感染予防にも4週間行なう。

 針刺し切創後、1時間以内、遅くとも2時間以内に開始する。

◆梅毒トレポネーマ(+)

 ペニシリン系抗生剤の内服投与

 

滅菌法の概念

 無菌→生育可能な微生物が存在しない状態

 滅菌→微生物を殺滅し無菌状態とするプロセス

 

滅菌物の管理方法(保管・取り扱い)

・埃の多いところ(電気製品周り)、水周りを避ける

・滅菌バッグを破損させるような取り扱いをしない

 (折れ曲げる、輪ゴムでまとめる)

・バッグごとでも落としたら不潔

・濡れた(汗も)手で触らない

・濡れた痕跡のあるものは不潔物

・バッグにマジックインクなどで書かない…不潔になってしまうから

 (滅菌前にシール欄外のフィルム面に記入)

 

滅菌器使用の原則

・滅菌する器材は十分洗浄する

・器材を十分乾燥させる(濡れている器材は滅菌できない)

・積載量はチャンバーの70%以内

・滅菌物を積み重ねない

・滅菌バッグはフィルム面を上に

・乾燥不良は再滅菌が必要

 乾燥不良の原因→過積載、乾燥時間が短いなど

 

酸性水 (強/弱酸性水・電解水・イオン水・アクア水・機能水)

・環境消毒、器具消毒、創部・口腔内の消毒 

 低濃度の塩素による消毒法

 有機物が残存していると消毒効果は期待できない

 塩素濃度が低下するため保管できない 

 

【感想・考察】

今回の研修会・レポートを通して、普段何気なく行なっている手指消毒や滅菌について改めて考える

良い機会となったと思います。手指消毒のタイミングや滅菌物の取り扱いなどは特に勉強になり

ました。自分が今、不潔なのか清潔なのかというところを何気なくではなく、より意識して行なって

いく必要があると感じました。また、針刺しなどからの感染の危険も十分に考え、毎日の診療を、

慣れた作業ではなく、危機管理意識を持って取り組んでいきたいと思います。

                            衛生士   河本

  2019/07/24   ふくだ歯科

コミュニケーション術について、勉強会で発表して

《 患者さんの心を動かせるようになれば一人前 》

 歯周病は生活習慣病の色合いの強い疾患なため患者さん自身の日々の管理が最も大切な要因になり

 ます。 初対面の患者さんはかなり緊張していますし、相手がどんな人か探りを入れながら会話をする 

 ことになります。いきなりブラッシングの話をしてもテクニックを伝えるだけになってしまいます。

  そんな時、ひとことふたこと治療とは関係のない話や共通の話題などを間に挟むだけで、患者さんの

 緊張を解きほぐすのに効果的なことがあります。 また、以前から定期検診に来られている患者さん

 に、初めて担当が回っていたときには案外大きな落とし穴があります。 患者さんは治療には慣れて

 いますが、新しい歯科衛生士さんには慣れていません。こんな時にいきなり「プラークがたくさん

 残っていますよ!」というような患者さんを説教することから話始めると患者さんは心の扉を閉ざし

 てしまいます。最初に心を閉ざしてしまった患者さんの扉を開けることは容易ではありません。

 プラークコントロールはいつもと同じかもしれませんし、前回はもっとひどかったのに今回はその人

 なりに頑張ってきたのかもしれません。我々はどうしても自分の物差しで他人を評価してしまいがち

 ですが、プラークコントロールは患者さんのペースやレベルに合わせる余裕が必要です。

 

《習慣変容までの道のり》

  人の習慣を変えることはかなり難しいことです。 モチベーションのゴールはブラッシングのテク

 ニックを身につけることではなく、そのテクニックを含めてブラッシングという習慣が生活習慣の

 一部になることです。 歯科衛生士に言われて習慣が変わらないのは、まずその必要性や重要性に気づ

 いていないからです。つまり考え方が変わっていないわけです。このように習慣を変えるためには

 考え方が変わり、行動が変わり、その行動に満足してはじめて習慣が定着していきます。

 

《ポジティブアプローチ》

 「これをするとこのように健康になる。」というアプローチの仕方で患者さんの健康志向が生まれる

 と効果は長続きします。 また一度にたくさんのことを教えても結局何も伝わっていないことがあり

 ます。ポイントを絞って指導するようにすれば、成果もわかりやすく、次の指導に繋がります。 同じ

 内容のことを伝える場合でも、使う言葉によって伝わり方はずいぶん変わります。例えば、「磨き

 すぎです」を「がんばりすぎです」に変えるだけで、よくしようとしているのが裏目に出ていると

 いう、少しプラスのイメージに繋がります。 「ここにプラークがたくさん残っていますよ」ではなく

 「ここのブラッシングが苦手なようですね。」に変えるだけで患者さんの受け取り方も変わってくる

 はずです。このように『使う言葉を選ぶ』ことは、想像以上にコミュニケーションに影響するの

 です。

 

《感想》

 今まで実習生として患者さんに関わってきたけれど、働き始めて、改めて 歯科衛生士のコミュニケー

 ション力の重要さに気づきました。言葉選びや言葉の伝え方ひとつひとつ大切なので、患者さんに

 不快感を与えないようにしていきたいと思います。 また患者さんに伝えられることができるのはもち

 ろんのこと、患者さんに寄り添って聴き上手になれるように知識を増やしたいと思います。

                          衛生士 藤元

  2019/07/14   ふくだ歯科

「続くメインテナンスの秘訣」について、勉強会で発表して

通い続けられるメンテナンスとは?

いかに歯を守る技術に自信があっても、ずっと患者さんの健康を守り続けたい気持ちがあっても、

患者さんが通い続けてくれなければ、生涯メンテナンスは実現できません。

長期的・定期的にリコールに応じていただけるためには、患者さんから信頼していただけるように

ラポールの形成を心がけ、できる限りその障害になるようなことは排除しなくてはなりません。

 

Level1不快さを排除!患者さんを尊重する姿勢が伝わる環境と心配り

1. 見た目も勝負!~信頼感と好感が持てる身だしなみ~

 ヘアメイクは清潔感がポイントです。髪型も、前髪がバサーっと被っていたり、束ねた髪がダラーン

 と肩口から下がっていたりしたのでは、とても見苦しいと思われてしまいます。第一、自分自身が

 術野に集中できません。

2. プライバシーを保てる環境作り~プライベートな情報を扱うのなら~

 患者さんごとに適切な指導内容を組み立てるために、身体状態・生活習慣・お仕事やご家族について

 など込み入ったお話をうかがうので、できる限りプライバシーが守られる状況や雰囲気作りが必要

 です。 また、会話するときの声の大きさにも注意が必要です。「明るくはきはきと大きな声で」の心

 がけが逆効果になってしまう危険性もありますので注意しましょう。

3. 処置中の注意点~不快な要素を取り除く~

  Point1驚かさない(声をかける)

  処置で必ず心がけるのは「驚かさないこと」です。超音波スケーラーを使用したり、3wayシリンジで

 洗浄したりエアーで乾燥する前には「お水が出ますね」や「風が出ますね」と声をかけます。

 急にユニットを動かしたり、いきなりミラーで口唇をこじ開けたりせず、たった1秒・2秒であろう

 とも、動作を止めて声をかけ、患者さんに心の準備をしていただく間をおきます。

 Point2まぶしくしない(ライトの位置)

  必ず注意すべきなのがライトの使いかたです。けっしてまぶしい刺激を与えないように気をつけ

 ます。ライトは腹部→胸部→口腔周囲と3段階で動かしていきます。特に、ユニットを起こして

 うがいしていただいた後、再度処置を続ける時にライトの位置を気にせずにスイッチを入れてしまう

 と、眩しさを与えてしまう危険があるので注意しましょう。  

 Point3刺激を与えない(口腔内の器具の出し入れ)  

 口腔内にミラーを入れる際に歯牙にぶつけないように注意している方は多いと思いますが、はずす際

 にも気をつけましょう。また、乾燥・隔壁目的でロールワッテを使いますが、唾液の少ない患者さん

 の口腔内から取り出すときは、3wayシリンジで湿らせてから外しましょう。

 

Level2患者さんのリスクをふまえた、効果的で説得力のある指導

1. 患者さん固有のリスクを予想しよう!

 染め出しして手鏡を渡し、必死になって「ここが磨けていません」などと説明する前に、「なぜこの

 部位にプラークが付着しているのか」とプロとして科学的に考えてみましょう。そうすることが、

 患者さん固有のリスクの把握につながります。生理学・病理学などの基礎知識や、患者さんの口腔外

 から得られるパラメータをフル活用して考察していきます。それにより、リスクの判断や対処法が

 異なってきます。 歯科衛生士がメインテナンスを担当する目的は、「口腔内の健康な状態を維持して

 全身の健康をする」ことです。つまり「口」と「身体」を切り離さないという考え方が重要です。

2. 診査で得られたデータで、会話に重みを持たせよう!

  せっかく時間をかけ精密に採取したデータでも、活用されなければ意味がありません。その数字が

 何を意味し、何のために必要なものなのかをわかりやすく説明します。数字で示される客観的評価に

 は非常に大きなインパクトがあります。 しかし1回の説明では完全に理解してもらいにくかったり、

 説明するための時間が足りない場合もあるでしょう。十分に納得してほしい点については、次回の

 来院時にも再度説明することで、「あなたのことを継続的にフォローしていますよ」というアピールに

 なり、モチベーションにつなげることができます。歯周治療ではセルフケアとプロケアがかみ合わな

 ければ良好な結果として形になりません。患者さんには自分自身が治療に参加しているという自覚を

 持ってもらい、積極的に行動変容を起してもらえるように促しましょう。

~モチベーションのポイント~

Step1プラークの説明

プラークについて、以下の要旨を理解してもらえるように説明する。

・プラークは口の中の細菌が食べかすを分解してできた細菌の塊である

・プラークは酸を蘇生し歯を溶かしむし歯の原因となる

・歯肉炎を引き起こし歯周病の原因となる

・プラーク中の細菌が産生するメチルメルカプタンなどの化学物質により口臭が生じる

Step2ブラッシングによるプラーク除去効果の確認

染色液でプラークを染め出し、患者さんに手鏡でプラークの付着部位を実際に見せ、ブラッシングを

行わせて、ブラッシングでプラークが除去できることを確認させる。

 

まとめ

長期的に患者さんに関わるうえで、不快な思いをされないようにするという基本から、患者さん自身

にも治療に参加している意識を持ってもらうための工夫まで詳しくポイントが知ることができたので

とても勉強になりました。普段のメインテナンスにも積極的に取り入れていこうと思います。

                           衛生士 星島

  2019/06/30   ふくだ歯科

「患者さんの忙しさに寄り添う」について、勉強会で発表して

“忙しい”時期を乗り切る3つの心構え

① 患者さんの今の状況を受け止める

  まずは、「この患者さんの今の状況はどうか?」という気持ちを持ちながら情報集していくことが

 大切。“働き盛り”の患者さんの食習慣を聞くと、「コンビニの菓子パンと缶コーヒーで済ませる」

 「残業で遅くなるので会社で配られるチョコレートで小腹を満たす」などの答え。こうした食生活を

 理想的でないと批判するのは簡単ですが、そのような食生活にならざるを得ない生活背景を含めて

 理解しなければ、セルフケアや食習慣改善の提案はもちろん、信頼関係の構築は難しい。

② 「言い訳は余裕のなさの表れ」と受け入れる

 子育てや仕事が負担となり、メインテナンスの間隔が長くなり、なかなかセルフケアが安定しない

 時期がある方もいる。「忙しくてザッとしか磨けない」「歯間ブラシやフロスは面倒」と言われて

 も、「言い訳が必要なくらい時間も気持ちも制約があるという時期が、働き盛りなのだ」と思い、

 そのぐらいの心持ちのほうがお互いに楽だと考える。

③ 何より大切なのは「前向きになってもらう」こと

 さらなる改善のためにこちらが良いと考える食習慣やセルフケアを提案しても、患者さんの気持ちに

 ゆとりがなく、「絶対無理」と思われてしまっては、その後の行動にはつながらない。口腔衛生指導

 やSRPは歯科衛生士ができるサポートのごく一部。それ以上に大切なのは、良くなったことに目を

 むけて患者さんの気持ちが前向きになるようにすること。

 

<ケースでみる“忙しさ”を乗り切るサポーティブなメインテナンス>

働き盛り・子育てを経て今は介護中、30年間メインテナンス継続中(女性)

職業:初診時は会社員、現在はパート

主訴:上顎臼歯部冷たいものでしみる

   年齢とともに歯が大切なことがわかってきたので治療が必要なところは治したい

① 初診時〜働き盛り

・職場が近かったため、メインテナンスの間隔を3ヶ月とし勤務日に来院していただいていたが、仕事

 の多忙さ、会社の移転で勤務日の来院が困難になったこと、口腔内の状態が安定していることを

 ふまえて6ヶ月間隔に変更

・アポイントの日は会社を休んできていただくようになった。忙しい中通院していただくので、

 プロフェッショナルケアで「気持ちいい」と感じていただけるように心がけた

② 結婚・妊娠・出産・育児

・育児で忙しく、歯磨きの時間が短くなってしまうということで、リスクの高い部位から始めるよう

 勧めたり、歯磨きを実践しやすい時間帯(子供が寝た後など)を一緒に検討

・自分の口腔内の状態はもちろん、生活背景を含めてこちらが理解しているという安心感を与えるよう

 に心がけた

・夫婦ともに甘い物好きで、子育てで忙しくしているとますます食べてしまうということで、

 ステファンカーブについて説明したり、う蝕のリスクが高い部分について伝えた。

                      咬合面、う蝕治療部位、修復物周囲、

                      歯間部、露出した根面

③ 再び働き盛り、介護もスタート

・親の介護が始まり、そういう時ほどメインテナンスが重要であることをお伝えし、介護を通じて、

 口腔の重要性を再認識してもらえた

出産後子供が3歳の時に一緒に来院し、親子のメインテナンスに繋がった

 

感想

歯科衛生士は患者さんに寄り添い、患者さんをサポートしていかなければいけません。患者さん一人

一人の生活習慣、生活背景を知り、その時の状況に合わせて対応ができるように努力していきたい

です。

                         衛生士 松本

  2019/06/23   ふくだ歯科

口腔粘膜疾患識別ガイドについて、勉強会で発表して

1・口腔粘膜ってなんだっけ?   

 口腔粘膜はからだの状態を映し出す鏡     

  口腔はからだの中で唯一直視できる臓器。口腔粘膜の変化を見分けて、病変が口 腔に限局した原因

  で起こっているのか、あるいは全身的な問題や薬の影響による ものかを予見する知識も必要。

 機能の低下により罹患リスクもアップ     

  加齢が進むと口腔粘膜は免疫機能が低下し、また再生力も低下。高齢者におい ては、ブラッシング

  が不十分になるなど口腔衛生の自己管理能力が下がったり 唾液分泌量が低下することなど口腔環境

  が悪化する。   

 口腔粘膜の役割     

  ➀細菌などの侵入を防ぐ     

  ②下部組織からの体液の流出を防ぐ     

  ③感覚器官として痛覚、触覚、温度覚を伝える     

  ④粘膜下組織の細胞に情報を伝達し、免疫的防御機能を担う

 

2・口腔粘膜疾患データベース   

 口腔粘膜を診る時の基本は「色」です。     

  正常な口腔粘膜の色は「ピンク」     

  口腔粘膜疾患「白」「赤」「黒」「黄」の4色に分類することができる    

 白色病変      

  上皮の細胞に異常が生じると、角化細胞層や有棘細胞層が厚くなり、本来、14 日間で剥がれ落ちる

  細胞が残ってしまう。それにより、粘膜下組織の血管(ピ ンク色)が透けて見えず、粘膜面に

  当たった可視光線が乱反射し、白色病変と して観察される。              

  口腔カンジダ症     口腔扁平苔癬      白板症    

 赤色病変      

  紅斑は盛り上がりのない赤い色の変化のことで、多くは毛細血管の炎症充血 によって赤く見える。

   紅板症     正中菱形舌炎    多形滲出性紅斑    

 黒色病変      

  メラニン色素など色素沈着により黒く見える。      

  おもに、びまん性の変化で色素性母斑、外来性色素沈着、黒毛舌があるが、悪 性黒色腫の場合が

  あるので要注意。

  アジソン病やポイツイェーガー症候群など、口腔内に色素性沈着がみられる全 身疾患もある。     

 黄色病変      

  生体にはカロチノイド、ルテインと呼ばれる色素があり、これらは脂肪に溶け て存在することが

  多く、粘膜を通して黄色に見える。          

  Fordtce斑(皮脂腺)    脂肪腫    疣贅性黄色腫(極めてまれである)

 

  口腔がんに要注意!     

  粘膜疾患の中でも、その重篤さからとくに気をつけたいのが前がん病変。     

  がん化する可能性のある疾患は、白色病変、赤色病変に多く、とくに気をつけた い疾患名では

  前がん状態は「口腔扁平苔癬」、前がん病変は「白板症」「紅板病」。

  口腔がんの約90%は口腔粘膜を起源とするもの。

  好発部位は舌で全体の約40%を占めそのほとんどが舌縁部に発生する。

  次に歯肉で、約30%を占める。上下顎ともに臼歯部歯肉に多くみられるが、 下顎の発生率は上顎の

  約2倍。

 

【感想】     

口腔粘膜疾患のなかには患者さんの生死にかかわるものや、全身疾患との関連が 疑わしいものもある

ので、定期的に患者さんの口腔内を見ていく中で観察力を鍛 える必要があると思いました。             

                                  衛生士 赤木

  2019/06/02   ふくだ歯科
タグ:口腔粘膜

「気になっていた疑問を解決!」について、勉強会で発表して

Q.フロスがうまく使えない患者さんで、歯間ブラシも入らない方はどうしたらよいでしょうか?

A.歯間到達性の高い歯ブラシで対応するのも一つの方法です。

  まずは、患者さんがフロスなどの歯間清掃用具を上手に使えない原因をしっかりと追究することが

  重要です。原因は患者さんによってさまざまですが、歯間部への挿入方法を工夫したり、フロスの

  柄のタイプを変えることで、使えるようになる患者さんもいます。 一方で、これらの工夫を行って

  もフロスや歯間ブラシの使用が困難な場合には、フロスや歯間ブラシにこだわらずに、歯間到達性

  の高い歯ブラシで対応することも一つの方法です。ヘッドの幅が狭く、毛の細い歯ブラシの方が、

  歯間部への到達性が高くなります。また、タフト(毛束)も細い方がより歯間部への到達性が高く

  なります。歯ブラシの毛先を、歯冠方向に45~60度程度の角度で歯面に当てるようにして、

  チャーターズ法に近い磨き方にすることで、歯間部に歯ブラシの毛先が届きやすくなります。

  このように、いろいろと支援の形を考えてみて、その中から個々の患者さんにもっとも適した

  ソリューションを選択し対応していくことが大切です。

 

 Q.歯磨剤を使いたがらない方へ、根面う蝕の予防や進行抑制のためにどうアプローチすればよい

  ですか?

A. 無理強いはせず、効果のある洗口液での洗口やプロケアなどできることで対応しましょう。

  大切なことは、患者さんとよく話し合って、なぜ歯磨剤を使う習慣がないのか、あるいは使いたく

  ないのか、その理由を知ることだと思います。味が嫌い、臭いが嫌い、泡が出て長く磨けない、

  アレルギーがある、過去に「使わない方がいい」と指導されたことがあるなどが考えられます。

  フッ化物配合歯磨剤は、根面う蝕の予防と進行抑制に必須というわけではありません。根面う蝕

  の“進行抑制”に効果があるというエビデンスがあるものとしては、フッ化ナトリウム配合洗口剤に

  よる洗口があり、販売されています。ですから、リスクに応じて洗口液を勧めてみる、プロフェッ

  ショナルケア(フッ化物局所塗布も含む)の間隔を調整する、飲食指導や患者教育に努めるなど、

  できることで対応しましょう。

 

Q.ショルダーバッグの持ち方は、本当に口腔内にも悪影響を及ぼすのでしょうか?

A.顔や口腔周囲の筋肉の緊張が起こり、歯列や歯を動かす力になります。 顔と体はひとつの体の中

  で、みんな繋がっています。人は縦に立っているので体のバランスが崩しやすく、体のバランスが

  崩れると、その歪みを補うために、顔や口腔周囲の筋肉にも緊張が起こります。その筋肉の緊張

  が、歯列や歯を動かす力になるのです。 例えば、体が左に傾いたり、左を向くと、下顎が左にずれ

  て、左側臼歯部同士が強く当たります。そうすると、右側臼歯部が離開します。いつも同じ方向に

  ショルダーバッグをかけ、肩のラインが大きく歪むと、体の偏位が下顎の偏位を起こし、顔貌の

  歪みまで起こすことは、確かだと考えます。 逆もまた同じです。咬合平面が左上がりになると、

  肩のラインが右上がりになり、腰は左上がりになります。それにつれて背骨もねじれます。下顎は

  中顔面にぶら下がっており、体のバランサーの役割をしているため、ある程度体のバランスを保つ

  ことは口腔にとって非常に大事です。

 

〈感想・まとめ〉

どのケースの患者さんに対しても、まずは患者さんの話を聞くことが大切だと思いました。その中で、

最も理想的な方法でなくても、患者さんに「できそうかも」と思っていただける最適な方法を提案

できるよう努力したいです。

                                  衛生士 関口

  2019/05/26   ふくだ歯科

「さまざまな原因で起こる歯に痛み」について、勉強会で発表して

非歯原性歯痛

非歯原性歯痛の原因は、8種類に分類されている。(日本口腔顔面痛学会のガイドライン)

非歯原性歯痛とは、歯や歯周組織に異常が見られないにも関わらず、歯に痛みを感じる状態をいう。

歯の痛みを訴えて受診した人の約3%が、非歯原性歯痛だといわれている。

 

①筋・筋膜性歯痛

    筋・筋膜性歯痛は、食べ物をかむときに使う筋肉(咀嚼筋)や首の筋肉と、これらの筋肉を覆う筋膜

 の痛みが原因で起こる関連痛。関連痛とは、痛みの原因から離れた場所が痛くなることをいう。

②神経障害性歯痛

 神経障害性歯痛は、神経障害性の疼痛が原因で起こる歯の痛みで、主に2つのタイプに分けられる。

  発作性…三叉神経の痛みが原因で起こる激痛。

  持続性…代表的な原因として帯状疱疹や帯状疱疹の後遺症による神経痛。

  神経周囲の炎症や腫瘍、骨折によって神経が障害されることが原因となる場合もある。

③神経血管性歯痛

 頭痛の関連痛として起こる歯の痛み。

④上顎洞性歯痛

 上顎の骨の中にある副鼻腔の空洞に、炎症や腫瘍があって起こる関連痛。

⑤心臓性歯痛

 狭心症や心筋梗塞、心膜炎などの心臓の病気が原因で起こる関連痛。

⑥精神疾患または心理社会的要因による歯痛

 不安や気分が落ち込む抑うつといった心理社会的要因が背景にあって起こる歯の痛み。

⑦特発性歯痛

 さまざまな検査をしても原因がわからない歯の痛み。

⑧そのほかのさまざまな疾患により生じる歯痛

 巨細胞性動脈炎や悪性リンパ腫、肺がんなど、病気が原因で起こる歯の痛み。

 

非歯原性歯痛の検査と診断

 非歯原性歯痛の診断をするには、まず、虫歯や歯周病などの問題がないかを、問診や視診、エックス

 線検査などで調べる。歯や歯周組織に問題がない場合は、8つの原因にあてはまる症状がないか、

 詳しい問診や触診、場合によってはCTやMRIなどの検査をして鑑別。

非歯原性歯痛~筋・筋膜性歯痛の治療~

 一般の歯科で治療できる「筋・筋膜性歯痛」

 筋・筋膜性歯痛

  非歯原性歯痛の8つの原因の中で、一般の歯科で治療が可能なのは「筋・筋膜性歯痛」の場合。

  これは、側頭筋や咬筋など、ものをかむそしゃく筋や、首の筋肉、さらに、その筋膜の痛みが原因

  で起こる関連痛。そのほかの原因の場合は、各分野の専門知識が必要となるため、一般の歯科から

  大学病院の歯科口腔外科や各分野の専門医を紹介することが多い。

  筋・筋膜性歯痛の治療

  病気について正しく理解

   筋・筋膜性歯痛の多くは、ストレスや歯を食いしばるなど、筋肉の緊張状態が原因。

   病気についての正しい理解が治療の第一歩である。

  悪い習慣の自覚と改善

   ストレスや緊張状態を生み出す日常生活の悪い習慣を自覚することも大切。歯ぎしりや食い

   しばり、上下の歯をずっとくっつけている、頬の内側をかむ、硬いものやガムを長時間かむ

   など、無意識に行っているくせなどは、意識して直していく必要がある。最近は、長時間同じ

   姿勢でパソコン作業をしていることが原因で筋・筋膜性歯痛になる患者さんが多い。時間を

   決めて休憩をとったり深呼吸するなどして、緊張をやわらげる工夫をする。うつ伏せであごを

   つけて寝る姿勢も、あごや筋肉に負担がかかるため、控えるべき。

  薬による治療 

   痛みを抑えるために、非ステロイド性抗炎症薬などの鎮痛薬を使ったり補助的に筋弛緩薬を使う

   こともある。また、トリガーポイントに局所麻酔薬や炎症を抑えるためのステロイドを注射する

   こともある。

   理学療法

   痛みの軽減には、理学療法も効果が期待できる。痛みがある部分の筋肉に、ホットパックを

   使って温めて血流を良くしたり、指で軽くもみほぐしたりする。予防的に、口を開けたり閉じ

   たりを繰り返すストレッチなども効果的だが、痛みが強い場合は無理に行なわない。

 

【感想・考察】  

 齲蝕など歯が直接の原因ではない歯の痛みを抱えて来院される患者さんは最近、とみに増えてきて

 いるように感じます。私としては、関連痛か咬合性外傷くらいしか思いつきませんでしたが、今回の

 レポートで様々な原因がある事に驚くと共に大変勉強になりました。 痛みもただ一つだけとは

 限らず、複合的なものもあると考えられますので、患者さんに寄り添いつつ、状況をしっかりと

 お尋ねしていけたらいいなと思いました。

                         衛生士  河本

  2019/05/12   ふくだ歯科
タグ:歯の痛み

「オーラルフレイル~人間の老化は口の中から始まる~」について、勉強会で発表して

オーラルフレイルとは、口から食べ物をこぼす、ものがうまく飲み込めない、滑舌が悪くなる等と

いった軽微な衰えを見逃した場合、全身的な機能低下が進むこと。そして、これを予防することこそ、

健康寿命を延ばすことに繋がる。  

下の図は口腔機能と身体機能の衰えの過程を示したものだが、口の中の健康への意識の低下が全身の

機能低下に繋がることがわかる。           ※フレイル・・・虚弱      

[第一段階]社会性/心のフレイル期   健康       

      口の健康への意識が低下する。

      健康に関する情報等を得ようとする気持ちがなくなり、口腔内環境が悪化。歯周病など

      により歯を失う。社会へ参加する気持ちも薄れ、うつ傾向がみられることも。      

[第二段階]栄養面のフレイル期        

        口の中の些細なトラブルが多発。      

      歯を失うことにより、滑舌の低下や食べこぼし、わずかなむせや嚙めない食品が増加し、

                      食欲が低下。食べられる食品が限られてくることもある。      

[第三段階]身体面のフレイル期   虚弱    

              口の機能が衰え生活機能も低下。      

      咬合力や舌の運動力の低下、食べる量の低下によって、低栄養や代謝量の低下を招く。

                      ロコモティヴシンドローム(運動器症候群)やサルコペ二ア(加齢や疾患で筋肉量が減少)

                      になる。      

[第四段階]重度フレイル期    要介護   

        食べる機能の障害が起き、介護が必要な状態に。    

        摂食嚥下障害や咀嚼機能不全になり、フレイルや要介護に。

自分の歯に合った磨き方を習慣に  

    健康寿命を延ばすには、正しい歯磨き習慣をつけること。歯並びや歯肉の状態は人それぞれ。特に、

    中高年になると、歯茎が下がりプラークがたまりやすくなる。

    自分の口腔内 の状に合った歯ブラシや歯間ブラシのサイズ、歯ブラシの当て方、動かし方などを、

    歯科医院で教わり、日々の習慣にすることが重要なのだ。

 

感想  

年配の方だけでなく、若い世代の方にも知って頂きたい内容だと思った。口の 衰えが身体の衰えに

繋がる事を知り、患者さんの口腔内や身体の観察、問題の把握、清掃 や会話など、大事にしていこう

と思った。                   

                         衛生士 岡本

  2019/04/21   ふくだ歯科

「患者さんに合う歯ブラシの選び方」について、勉強会で発表して

・TYPE1 う蝕リスクが高い・補綴物が多い→ラウンド毛がオススメ

 しっかりと歯面に当たる面積があり、プラーク除去できるラウンド毛がオススメです。硬さに

 ついては、やわらかめの場合、プラーク除去率が低下しやすくなります。特に、唾液の分泌量が

 少なかったり、口呼吸している場合はプラークが硬くなりがちです。したがって、普通の硬さの

 タイプを選ぶか、やわらかめの場合はブラッシング時間を長めにすることが必要です。

  (製品例) DENT.MAXIMA MS /ルシェロ歯ブラシB

 

・TYPE2 歯周病リスクが高い・歯肉が腫れやすい→テーパード毛がオススメ

 毛先が細くなっているテーパード毛であれば、歯周ポケットに入りやすく、ポケット内のプラーク

 除去に向いています。ただし、ブラッシング圧が強いがために歯周ポケットに毛先が入り込みすぎる

 と歯肉に痛みがでるケースもあるので、ブラッシング圧に注意が必要です。歯肉が腫れて痛みがある

 場合、硬さはやわらかめがお勧めです。症状が改善したら、やわらかめからふつうの硬さに変更

 しましょう。この他、ブラシの動かし方が大きい場合、歯ブラシの挿入角度を間違えている場合、

 歯周ポケットがあまりない場合(1~2mm程度)、テーパード毛は不向きです  

 (製品例) DENT.EX systema44M/ルシェロ歯ブラシP

 

・TYPE3 妊娠中のつわりや嘔吐反射が強い→ヘッドが薄いタイプがオススメ

  口腔内は非常にデリケートです。特に、つわりや嘔吐反射が強い患者さんの場合、無理して開口

 しようとすると嘔吐しやすくなるので、あまり開口せずに磨いてもらいましょう。ヘッドが薄い

 タイプのほうが奥まで入れやすくなります。頬側は口を開けずに噛んだまま磨くと磨きやすいで

 しょう。

  (製品例)DENT MAXIMA S

 

 ・TYPE4 歯列不正→ヘッドの幅が小さいタイプがオススメ

 たとえば同じ3列植毛でも、製品によって歯ブラシのヘッドの幅は異なります。歯列不正の患者さん

 の場合、1歯ずつ磨けるような指導も大切ですが、ヘッドの幅が大きいと歯面に当たりにくくなる

 ので、ヘッドの幅が小さいものがお勧めです。

  (製品例)DENT MAXIMA S  

 

こんなときはどうしたらいいの?

1. かための歯ブラシで歯肉が傷ついている場合

 患者さんの中には、「かため」の歯ブラシがお好きで、どうしてもそれで磨きたいと言われることも

 あります。特に男性に多く、歯肉が退縮してエナメル質がすり減っている方もいらっしゃいます。

 できれば「ふつう」や「やわらかめ」の硬さに変更していただきたいのですが、どうしてもご理解いた

 だけない場合は、持ち方はペングリップにし、歯ブラシの動かし方が大きいと歯肉に傷が付きやすい

 ので、大きく動かさない、力を入れすぎないといった説明をしましょう。また、力の緩和が期待

 できるカーブネックの歯ブラシもお勧めです。

2. 大きい歯ブラシを使用したがる患者さん

  歯ブラシは、口を磨くわけではなく、歯を磨くものです。たとえ体格が大きいからといって、歯も

 大きいわけではありません。舌で下顎前歯部の一歯を触っていただき、歯の小ささを理解していた

 だきます。その小さな歯を1本ずつきれいに磨くわけですから、大きな歯ブラシでは小回りが利かず

 磨き残しが増えることをお伝えしましょう。

3. 市販の格安歯ブラシは効果はあるのか?

  安い物の中にも良いものはあるかとは思いますが、探し出すのは困難です。歯科専売品に比べて、

 耐久性や素材の質、毛先の形状などが大きく異なります。安価なものの多くは、毛先が乱れるのが

 早く、ラウンド毛やテーパード毛のように毛先がきれいにカットされていないものが多い傾向に

 あります。つまり磨いているのに磨けていない、歯肉にダメージを与える可能性がでてきます。

 ただし、患者さんがそれを気に入って使用している場合は、交換時期を1~2週間で交換するなど

 提案してみましょう。

※歯ブラシの交換目安は1ヶ月

 歯ブラシの使用日数が経過すると、毛先が広がり弾力性もなくなっていきます。当然、プラーク

 除去率が悪くなります。また。歯ブラシの毛や植毛部に細菌が繁殖し、菌のコントロールが困難に

 なってきます。劣化した歯ブラシを使い続けると、取り残したプラークがう蝕や歯周病の原因と

 なるだけでなく、毛先やヘッドに付着した細菌が繁殖するため、衛生上の観点からも良いとは

 言えません。

 

まとめ

 世間には、市販品・歯科専売品を問わずさまざまな歯ブラシが販売されており、その中から一般の方

 が自分に合ったものを探すことは難しいです。私たちは専門職として、それぞれの患者さんに合う

 歯ブラシを提案することが重要です。患者さんの口腔内や環境、性格などを考慮し提案出来るよう

 に、タイプ別のポイントを頭に入れておこうと思います。

                        衛生士 星島

  2019/04/07   ふくだ歯科
タグ:歯ブラシ

「乳酸菌タブレットとキシリトールとの違い」について、勉強会で発表して

◎乳酸菌は、ミュータンス菌の増殖を抑制し、キシリトールは、酸を作るなどのミュータンス菌の活動

   を弱めるという違いがあります

 

キシリトール・・・ミュータンス菌が分解できないため、摂ることで菌による酸の産生が抑え

         られます。栄養源にもならないため、ミュータンス菌自体の活動も弱められます

乳酸菌・・・酸やバクテリオシン(類縁菌に対して抗菌活性をもつタンパク質やペプチド)を産生する

      ことによってミュータンス菌の増殖を抑制し、う蝕になりにくい口腔環境を作ると考えら

      れています。

 

乳酸菌タブレットの効果

① 風邪予防効果

  シールド乳酸菌(外部からの細菌を防御してくれる森永乳業が保有する乳酸菌)が入ったタブレット

  を摂ることで風邪予防効果があるタブレット。

② 歯周病や虫歯予防効果

  乳酸菌LS1の入ったタブレット。

  口の中の善玉菌や悪玉菌に働きかける事で、歯周病予防や虫歯予防に効果があります。

     乳酸菌LS1・・・口腔内の細菌に働きかける乳酸菌

     口腔内には100億を超える無数の細菌が住み着いています。

     この細菌は腸内フローラ同様、口腔内フローラを形成しています。口腔内にも善玉菌と悪玉菌が

     あり、悪玉菌が歯周病や虫歯を引き起こす原因になります。乳酸菌LS1はこの口腔内悪玉菌に働き

     かける事で悪玉菌を減少させ、善玉菌を優位にする乳酸菌です。

③ 口臭予防効果

     乳酸菌TI2711の入ったタブレット

     口腔内にいる悪玉菌の働きを抑え、悪玉菌が放つ有害物質を防ぐ効果があります。

 

 就寝前のブラッシング後に食べてもう蝕にならない?

 ブラッシングが十分にできていれば、就寝前のブラッシング後に乳酸菌タブレットを食べてもう蝕に

 ならないと考えられます。

 理由は、 

 ① 乳酸菌が作用するのは基本的にタブレットを舐めている間であり、長時間にわたって口腔内が酸性

   の状態にはならないから。

        デンタルプラーク形成過程で取り込まれた一部の乳酸菌は長くは生きられず、他の菌と相互作用

        しながら徐々に消滅していきます。すでに出来上がった口腔フローラに外から新たに乳酸菌が

        入ってきても、なかなか定着することはできません。

   ② 甘味料としてショ糖が使用されていないから

        ショ糖の代わりにキシリトールが使用されていることがほとんどです。

        そのため、就寝中にミュータンス菌や乳酸菌による酸産生が促進されることはありません。

     *ただし、乳酸菌タブレットのう蝕予防効果とう蝕発生リスクに関する研究はキシリトールに比べて

         歴史が浅く、症例数も多くありません。特に唾液緩衝能が低い症例における影響については、

         さらなる研究が必要と思われます

 

<感想>

乳酸菌タブレットの効果について詳しく知ることができました。

最近では乳酸菌に注目されたタブレットやサプリなどが販売されています。患者さんから聞かれること

もあるかもしれないので、最低限のことには答えられるように積極的に身の回りの情報について触れて

いきたいと思います。

                             衛生士 松本

  2019/03/27   ふくだ歯科