スタッフレポート

スタッフによるレポートを掲載しています。

「そのお薬、歯科治療に影響があります」について、勉強会で発表して

1. 飲んでいる薬が歯科治療にも関係することをつねに伝えよう

    患者さんの中には「自分が飲んでいる薬は歯科治療に関係ない」と思って問診票に書いていない方も

    います。また治療の途中から服薬を始めたという方、逆に病気が改善して服薬をやめたということも

    あるかもしれません。薬を服用しているにもかかわらず、そのことを知らないまま治療をすると、

    治療に支障をきたしたり患者さんの体に重大な影響を及ぼしたりすることがあります。患者さんとの

    会話や言動から体調の変化に気づいたら声を掛け、薬の服用の有無を確認しましょう。いちばん大事

    なのは、飲んでいるお薬が歯科治療にも関係することを日頃から患者さんに伝えておくことです。

 

2. 注意したい薬

   ① 抗血栓薬・・・血液を固まりにくくし、血栓で血管がつまるのを防ぐ薬。出血が止まらなくなる点に

                           注意。

          こんな人が飲んでいるかも                                                       

           ・狭心症や心筋梗塞の予防をしている

           ・脳梗塞を起こしたことがある

           ・冠動脈ステント治療を受けたことがある

     特にこの前には注意

           ・抜歯

           ・インプラント埋入

           ・歯周外科処置

           ・縁下でのスケーリング                     

    ② ビスフォスフォネート製剤‥・骨を増やして骨折の予防に使う薬。長期間服用している人は顎骨

                                                         壊死のリスクも。

          こんな人が飲んでいるかも 

          ・骨粗鬆症の予防をしている

          ・骨ページェット病の治療をしている

          ・骨折したことがある

          ・ステロイド治療をしている

        特にこの前には注意

          ・抜歯        

          ・骨隆起の切除術 ・インプラント埋入  

          ・骨縁下ポケットのSRP

          ・歯根端切除術

          ・歯周外科処置  

    ③ 抗てんかん薬・・・脳の興奮を抑えて、てんかんの発作を防ぐ薬。副作用で歯肉の増殖を招く。

          こんな人が飲んでいるかも

          ・てんかんの治療をしている

         *覚えておこう*

            ・歯肉増殖の予防と治療 フェニトインの長期服用による歯肉増殖は、炎症症状に乏しいのが特徴

             です。しかし、口腔の清掃状態が悪いと、歯肉は赤味を増し、炎症症状が生じてきますので

             よく注意してください。歯肉増殖は必ず歯のあるところに発症します。不適合の歯冠修復物や

             う蝕、歯石の沈着など、歯肉に刺激が加わらないように治療することが大切で、場合によって

             は、歯肉切除術を行う場合もあります。

     ④ カルシウム拮抗薬・・・血管の壁の収縮を抑えて血管を広げ、血圧を下げる薬。副作用で歯肉の増殖

                                            を招く。

            こんな人が飲んでいるかも

            ・高血圧の治療をしている

            ・虚血性心疾患の予防をしている

           *覚えておこう*

              ・Ca拮抗薬の中でもジヒドロピリジン系に注意

                降圧薬の中でもCa拮抗薬を選択する症例は多く、ニフェジピンやアムロジピンなどのジヒド

                ロピリジン系Ca拮抗薬は、その代表的な薬剤です。この両薬剤の副作用として、血管の拡張

                に起因する頭痛や、顔面紅潮、浮腫のほか、歯肉増殖があります。

 

〈まとめ〉

患者さんの方からこんな薬を飲むようになったなどと積極的に伝えてくださる方は多くはありません

が、診療中の会話の中では「最近入院した」とか「薬が増えて大変」などいろいろな情報を得られることが

あります。安全に歯科治療を受けていただくためにも、定期的な問診票の確認や、会話の中での情報を

元に患者さんの服薬状況を把握できるようにしていきたいと思いました。

                        衛生士  星島

  2020/01/08   ふくだ歯科
タグ:薬の影響

「バイオフィルムを管理する予防歯科」について、勉強会で発表して

う蝕の最新病因論

⒈ う蝕原性菌

     ミュータンスレンサ球菌は間違いなく最強のう蝕源性菌であるが、21世紀になって、ミュータンス

     レンサ球菌以外の酸産生菌も、う蝕発症に関わっていることが明らかになった。

     <20世紀の常識>

     う蝕原性菌

     ・ミュータンスレンサ球菌

     ・ラクトバチラス

      う蝕誘発性糖質

     ・砂糖(ショ糖)

     <21世紀の常識>

      う蝕原性菌

      ・ミュータンスレンサ球菌

      ・ラクトバチラス

      ・ビフィズス菌

      ・Scardovia wiggsiae 種

      ・Actinomyces 種

      ・Veillonella 種

       う蝕誘発性糖質

       ・発酵性糖質  

           ショ糖、ブドウ糖、果糖、調理デンプン

        砂糖(ショ糖)はミュータンスレンサ球菌が不溶性グルカンを作るために必要であるため、う蝕

        予防の食事指導は「甘い物を避けなさい」であったのである。しかし、新たにう蝕原性菌に加え

        られた細菌種は不溶性グルカンは作らず、歯面に付着したバイオフィルムの中で酸を産生する

        ため、ショ糖が制限されても影響は少ない。

 

⒉ う蝕原性バイオフィルムのMicrobial shift

     う蝕原性菌はショ糖だけではなく、他の発酵性糖質(ブドウ糖、果糖、調理デンプン)を摂取して

     乳酸などの有機酸を産生し、歯を溶かす。ショ糖が制限されても、その他の糖質摂取によって、

     バイオフィルムのpHは酸性に傾く。そして酸性環境を好む菌種が増殖しMicrobial shift が起こり、

     う蝕原性の高いバイオフィルムへと変化してしまうのである。

   「甘い物を避けなさい」の食事指導は変わらなければいけない。調理デンプンもMicrobial shift の要因

     となるため、麺類や粉物にも注意が必要。

 

⒊ う蝕の治療

    21世紀になって、う蝕という疾患は「脱灰と石灰化のバランスが偏っている状態であり、う蝕=

    う窩ではない」という考えが浸透した。脱灰因子と防御因子(脱灰を防ぎ石灰化を促進する因子)の

    間のバランス崩壊が、う蝕の発生原因である。 このバランス崩壊はバイオフィルムの周囲環境(特に

    栄養環境)の変化によるMicrobial shift が原因である。

    疾患の治療は病因除去である。う蝕の原因はMicrobial shift であるため、高病原化したバイオ

    フィルムを低病原性に戻すことがう蝕の治療である。つまり、脱灰因子を減らし、防御因子を増やす

    ことであり、削って詰めることではない。 改善すべき脱灰因子は、食事内容・回数(バイオフィルム

    栄養環境)とう蝕原性菌量(バイオフィルムの量)である。また、含嗽剤や唾液分泌刺激などにより

    バイオフィルムのpHを中和に向かわせる工夫も必要である。防御因子の強化には、フッ化物による

    歯質強化、クロルヘキシジンによる殺菌、フィッシャーシーラント処置、生活習慣指導、あるいは

    早期治療などの対応が有効である。

    Microbial shift

    バイオフィルムを取り巻く栄養、温度、嫌気度、pHなどの環境変化によって、細菌達にとって好ま

    しい生育環境がもたらされることにより起こる常在菌。Microbial shiftによりバイオフィルムと歯・

    歯周組織の間の均衡が崩れ、う蝕や歯周病が発症・進行する。

 

感想

    う蝕の予防には脱灰と石灰化のバランスが大切なことが分かりました。防御因子の強化ではフッ素

    塗布をよく行っていますが、患者さんの中にはフッ素を塗っていれば大丈夫と思っている方もいる

    かもしれないのでフッ素の効果に加えて普段の生活習慣、食事習慣についても少し触れていけたら

    と思いました。

                                     衛生士 松本

  2019/12/31   ふくだ歯科
タグ:虫歯予防

「本当に害が少ない?加熱式タバコの実態」について、勉強会で発表して

近年、新しいタイプのタバコ製品群(いわゆる“新型タバコ”)の開発・販売が拡大し、非喫煙者においては

実態が把握しにくい状況です。新型タバコには、各種フレーバー入りの液体を加熱してエアロゾルを

発生させ吸引する「電子タバコ」と、電気的にタバコの葉を加熱したエアロゾルを吸う「加熱式

タバコ」があります。今回は、なかでも注目を浴びている加熱式タバコについて、その特徴や健康被害

などの問題を解説します。

さて、加熱式タバコは、紙巻タバコと比べクリーンで健康に悪くなさそうなイメージがあると思い

ます。それは、おそらく比較的副流煙が少なくヤニ臭さも少ないと広告・宣伝されているからで

しょう。では、本当に加熱式タバコは人体に安全なのでしょうか?

加熱式タバコから発生する有害科学物質に関する情報は、製造・販売元であるタバコ産業からのものが

多いのですが、それらは有害成分の低下が主張されています。たしかに、有害化学物質の発生量は紙巻

タバコに比べれば少ない製品が多いですが、発生する化学物質の種類は大差なく、有害性が比較的低い

科学物質も含めた総重量としても大差ありません。さらに、濃度は低いものの多種類の発がん化学物質

も発生します。

紙巻タバコの喫煙者が加熱式タバコに切り替えたことで「自分は禁煙した」と誤解しているケースが

報告させています。加熱式タバコは、紙巻タバコと異なり、パッケージにニコチンやタールの量は表示

されていません。ですから、ニコチンがどのくらい含まれているかが消費者に伝わりにくいのです。

分析では、いずれの製品も依存性の高いニコチンを相当量吸引することが可能であり、喫煙継続に

つながると考えられます。

これまで家庭内などのベランダや換気扇の下で紙巻タバコを吸っていた人が、屋内で子どもを含む家族

の前で加熱式タバコを使用するケースの増加も報告されています。しかし、加熱式タバコの受動喫煙が

健康へ悪影響を及ぼさないとの確認はされていません。使用者周辺での気道刺激や不快感を含む自覚

症状の訴えは報告されています。受動喫煙曝露を防ぐために、加熱式タバコも従来のタバコ同様の対策

が必要です。

加熱式タバコや電子タバコの使用による歯科領域への影響は、いま現在エビデンスが十分に得られて

いるとはいえません。しかし周知のとおり喫煙そのものは、口腔衛生関連においてもさまざまな悪影響

を引き起こします。口腔・咽頭がん、歯周病、う蝕、歯の早期喪失、インプラントの失敗、歯肉の

メラニン色素沈着、口臭などを引き起こすことが、疫学的に証明あるいは可能性があるとされて

います。歯科は、比較的若年のうちから継続的に繰り返し患者さんを診る機会があり、さらに、口腔は

悪影響を直接本人も一緒に観察することができる部位です。ですから、歯科で患者さんの喫煙状況を

把握し、禁煙の動機付け支援や禁煙外来の紹介・誘導などといった継続した介入・指導が求められ

ます。

 

〈感想〉

加熱式タバコに対して「害が少ない」「禁煙の第一歩」というイメージがありましたので、今回の

レポートでは初めて知ることが多くありました。同じようなイメージを持っている方はたくさん

いると思います。患者さんだけでなく、自分の周りの方にも正しい情報を伝えていきたいです。

                               衛生士  関口

  2019/12/15   ふくだ歯科
タグ:喫煙

予防歯科Q&Aについて、勉強会で発表して

食品に関する質問  

Q:キシリトール入りのガムには多くの種類がありますが、市販品と歯科専売品でどのように違いが

       あるのでしょうか?  

A:歯科専売品は市販品と比べて,う蝕予防効果の向上が期待されます     

      チューインガム(ガム)     

      もともと主にその味と爽快感を楽しむ嗜好品として消費されていた

                   ↓     

      1990年頃から砂糖ではなく代用甘味料が添加された製品が多く販売されるように なった

    (国民の健康意識の高まりを受けて)  

      ガムに添加される代用甘味料

   キシリトール

   ソルビトール

   アスパルテーム     など

       * プラーク中の細菌による発酵性が低く、う蝕の原因となる有機酸が ほとんど産生

                              されないという特徴がある

            * ガムを噛むことにより唾液の分泌が促進される

               ↑     

                       代用甘味料を添加したガムの常用がう蝕を予防すると考えられる

          多くのガムでは複数の代用甘味料がさまざまな割合で配合されている

                     (人々の嗜好に合う甘さにするなどの目的)    

        最近では、代用甘味料以外に

      リン酸化オリゴ糖カルシウム(POS-Ca) カゼインホスホペプチド(CPP-ACP)

                ↑

                                エナメル質の再石灰化を促進させる

      歯科専売品にはリン酸化オリゴ糖カルシウム、カゼインホスホペプチドなどの 成分や

              キシリトールの配合を高めたもの、フッ化物を加えたものがあり、市販品 と比べてう蝕

              予防効果の向上が期待されている。

 

歯磨剤に関する質問   

Q:患者さんから、「歯磨き粉の研磨剤が歯を削ると聞いたから、使いたくない」と 言われました。

      実際、どうなのでしょうか?    

A:一生使っても、健康障害が出るほど歯面が削られることはありません   

      実験では清掃剤(研磨剤)は歯を削るが、一生涯使用しても健康障害が出るほど削れることはない

                 ↑        

      歯ブラシの毛の硬さ、ブラッシング圧のほうが研磨性に影響する  

    日本で販売されている清掃剤の配合割合は、ペーストタイプの歯磨剤では10~60%ですが、現在の

      製品の配合量は以前より少なく、研磨性が低く抑えられている。清掃剤無配合のジェルタイプは、

      歯根露出や知覚過敏などで歯面への刺激を抑えたい患者さんに利用できる。    

 

【感想】    

この「Q&A」は、今話題になっていることや、患者さんから質問されて説明に困ったことなどの疑問

に現在のエビデンスをもとに答えられているので、参考にしていきたい。

                       衛生士 赤木               

  2019/12/04   ふくだ歯科
タグ:予防歯科

「虫歯リスクが激減!?発見!新歯みがき法」について、勉強会で発表して

虫歯予防の強い味方!歯みがき粉の“フッ素” .

日本で初めてフッ素配合の歯みがき粉が登場したのは昭和23年のこと。 今では9割の歯みがき粉に

フッ素が配合されている。 歯磨き粉がフッ素配合かどうかを調べるには、商品の原材料名を確認し、

「フッ化ナトリウム」または「モノフルオロリン酸ナトリウム」と記載されていればフッ素が配合

されている。

そもそも虫歯は、口の中にいる細菌が引き起こすと言われている。 食べ物や飲み物に含まれる糖質を

エサに、ミュータンス菌などの虫歯菌が酸を作り出し、その酸が歯に含まれるカルシウムなどを溶かし

てしまうことによって生じる。 歯が溶けると、唾液に含まれるカルシウムなどが歯を修復する。これは

再石灰化と呼ばれている。このときフッ素が唾液中などに含まれていると、再石灰化が促進、さらに

フッ素が唾液中のカルシウムなどと反応して酸に溶けにくい物質を作り、その物質で歯の表面が

コーティングされたような状態になる。すると虫歯菌が酸を出しても、歯が溶けにくくなる。

 

スウェーデンで発見!新★歯みがき法

1995年にスウェーデンの研究者たちは“イエテボリ テクニック”と呼ばれる新たな歯みがき法を

発表した。実験によると、通常の歯みがき方法と比べて、虫歯の予防効果が40%以上高いことが

わかった。その最大の目的は、歯みがきの後に口の中にフッ素を残すことである。

現在スウェーデンの歯科医院などで指導されている歯みがき方法のポイント

<ポイント1>

  フッ素配合の歯みがき粉をたっぷりと使う(目安は2cm)

<ポイント2>

  歯全体に歯みがき粉が行き渡るように意識して2分程度歯みがきを行う

<ポイント3>

   口の中の泡などをしっかり吐き出したあと、口をゆすがない ゆすぎたい場合は水を少量にして、

      回数も少なくする

<ポイント4>

      歯みがきのあと、2時間飲食をしない(最低でも30分)

歯みがき後の唾液中に残るフッ素濃度とゆすぎの回数との関係

ただしイエテボリ テクニックの対象年齢は12歳以上。 小さいお子さんにはオススメしない為、

注意する。 また、フッ素がインプラントに与える影響についてはさまざまな研究があり、心配な方は

主治医に相談すると良い。 歯みがき粉は使用上の注意にしたがって使用する

 

歯の健康を守る!「プロケア」のすすめ

スウェーデンでは多くの人が、虫歯はなくても、定期的に歯科医院を訪れ、歯科衛生士による「プロ

フェッショナルケア(通称プロケア)」を受けている。 虫歯や歯周病を引き起こす細菌は、口の中に

たまった歯垢を住みかにしている。歯科衛生士は特殊な器具を使い、普段の歯みがきではなかなか

取りにくい、歯と歯ぐきの間にたまった歯垢も丁寧に取り除く。プロケアを受けると、虫歯や歯周病の

リスクが大きく減ると言われている。 (予防を目的としたプロケアは、保険の適用外。だだし歯や

歯ぐきの健康状態によっては、保険が適用となる場合もある。)

フッ素は安全か?

フッ素は一度に過剰に摂取したり、長期間に渡って大量に摂取し続けたりすると、悪心・嘔吐や、歯や

骨に異常が出るなどの中毒症状が起こることが報告されている。そのため、海外ではフッ素摂取量の

上限を決めている国もある。この番組ではアメリカの医学研究所が1997年に発表した摂取許容量

(9歳以上で1日10mg)を紹介。 これに対し、歯みがき粉2cm(約1g)に含まれるフッ素の

量は、およそ1mg。スウェーデン式の歯みがき法を1日数回行ったとしても、口に入れたフッ素の

ほとんどは吐き出されるため、フッ素による悪影響は出ないと考えられる。フッ素入りの歯みがき粉

は、適切に使う事で虫歯予防の効果が期待できる。

 

【感想・考察】

患者さんに「歯磨き後のうがいは少ない水で」とお伝えする機会は何度もありましたが、それがどれ

だけの効果をもたらすかは分かっておらず、この番組を見て、うがいによるフッ素濃度の低下率に愕然

としました。今までの「歯磨き後はうがいをするものだ」という共通認識は、子供の頃からの刷り込み

によるものだったのかもしれないなと感じました。 ただ、患者指導においては、効果をお伝えしつつも

感情や体調に十分に配慮を示し、お話ししていけたらいいなと思いました。

                                         衛生士 河本

  2019/11/04   ふくだ歯科
タグ:歯みがき

岡山大学歯学部同窓会セミナー2019に参加して

つまようじ法とは、つまようじのように歯ブラシの毛先を歯と歯の間に出し入れすることにより、

歯間部の歯肉のマッサージと歯垢除去をおこなうブラッシング方法です。つまようじ法を行うことに

より、歯周病の予防・治療や歯の歯周病予防に効果があることが示されています。

① 動揺度の改善

動揺歯を有する患者さん20人につまようじ法での術者磨きとブラッシング指導を行ったところ、初診時

に横から平均101gの力で押すと動揺し始めていた歯が、2週間後には141g、4週間後に147g、

8週間後には157gかけないと動かないくらいにしっかりしてきた。

② 口臭の改善

対象者の口にストローを入れて口臭の原因とされる揮発性硫黄化合物の濃度を測定。つまようじ法に

よる術者磨きを1人平均7回繰り返し、濃度の変化を調べました。その結果、13人の初診時の濃度は

平均で250.2ppb(1ppbは10憶分の1)でしたが、治療後には平均59.0ppbと約4分の1に

ダウン。全員がそばにいても口臭を感じない100ppb以下のレベルに下がり、中には1100ppbから

60ppb程度まで激減した例もありました。 厚生省が30歳以上の約25000人を対象に平成五年に行った

調査では、役3500人(約14%)が口臭問題を訴え、口臭に悩む人は年々増加中とのことです。 口臭の

原因は、虫歯や歯周病、消化器系などとされますが、今回の調査によって、口の中を清潔にすれば、

口臭が防げることが裏付けられ、つまようじ法を続けることで、長期的な口臭減少に繋がるものと

考えられています。

③ 歯周病を改善

つまようじ法を行うと歯肉からの出血は早く治ります。1週間で差が出るほどです。つまようじ法は、

バス法とフロスの併用による方法に比べて、臨床的にも有効であり、短時間で終わります。

《ブラッシングのマッサージ効果》

つまようじ法のマッサージ効果をイヌの歯肉を使って調べました。 イヌの歯肉の一方を毎日歯磨きし、

反対側の歯は徹底的に歯石・歯垢除去をしました。1週間後、ブラッシング側の細胞は歯石・歯垢除去

側に比べ2倍くらいたくさんの細胞が増殖していました。また、炎症性細胞の数も5週間で半分に減って

いました。このことから歯周病には歯石・歯垢除去よりもブラッシングによるマッサージが有効である

ことがわかりました。 また、つまようじ法によるブラッシングのマッサージ効果は約200gの力で10秒

から20秒行うことが一番効果が高いという結果も出ました。 (200g消しゴムで字を消すときと同じような力に相当します。)

《つまようじ法ブラッシングの気持ちよさがモチベーションに》

患者さんにつまようじ法をすると、「気持ちいい」、「いまから食事をするのがもったいないくらい」

などポジティブな感想が多くみられたそうです。 歯と歯の間に毛先を通すという感覚は非常に

インパクトが強く、驚きとともに爽快感を味わっていただけます。

◎ ブラッシングの感想

気持ちいい・・・76%

驚き・・・・・・33%

痛い・・・・・・10%

なんともない・・2%

その他・・・・・2%

《感想》

実際につまようじ法を受けた感想は、結構ガシガシされている感覚でしたが、してもらった後は

すっきりした感じはありました。家で自分でやってみましたが、なかなか難しく患者さんがセルフケア

を行うのには難しいかなと感じました。ですが爽快感があるため、それを求めまた来院してプロフェ

ッショナルケアを受けようというモチベーションに繋がるのかなと思いました。今後TBIを行う際には

参考にしていこうと思います。

                                                                                                            衛生士 藤元

  2019/10/22   ふくだ歯科

岡山大学歯学部同窓会セミナー2019に参加して

1.歯周病の長期継続管理と生涯に渡るむし歯予防

  日本人が歯を失う原因の第1位は歯周病、第2位はう蝕であるとされています。う蝕はフッ化物を公衆

 衛生的に応用することによってかなりの予防効果が期待できます。しかし、歯周病に対しては一対一

 の対応でなければ効果を挙げることは困難です。歯科医院に来院している患者さんは主訴の多くは

 歯牙に関するものですが、その8-9割は歯周病に罹患していると言われています。来院された患者

 さんの30年後、50年後の口腔内を考えて歯周病を見逃さずに対応することにより、長期にわたって

 より良い口腔内を保つことができます。

2.歯周病の治療や長期継続管理を行っていく上での術者磨きの目的

・爽快感による動機づけ・・・self care(自分でもやってみよう)

              professional care(また受診しよう)

・治癒効果・・・徹底的なプラーク除去、歯肉のマッサージ

・コミュニケーション

3.モチベーションを上げるためには

  楽しい、気持ちいい、健康になれるなどのポジティブなモチベーションの方が継続に効果があり

 ます。そのためには1日何回、何分磨いてくださいという指導はあまり行いません。

 説明では忘れてしまうので感覚で覚えてもらうと良いでしょう。

4.予防歯科

《むし歯予防と歯周病予防の違い》

•むし歯予防・・・1.フッ化物の利用(洗口・歯磨剤)

         2.糖分の摂取制限(回数・時間帯)

         3.規則正しい食生活

•歯周病予防・・・1.適切なブラッシング(歯垢の除去・歯肉のマッサージ)

         2.professional Tooth Cleaning

                         3.適切な食生活

                         4.喫煙を避ける

 

 まとめ

 今回の講演の中で、治療の為だけでなく痛くない時にも通える歯科医院を目指すというお話があり

 ました。TBIなどで患者さんと接する際にどうしても「ここが出来ていない」「ここが悪くなっている」

 などとネガティブな指導をしてしまいがちですが、予防を目的に自主的に歯科に来院してもらうため

 に、「気持ちいいから」、「健康になれるから」というポジティブなモチベーションを持っていただける

 ように意識しながら接していけたらと思いました。

                             衛生士  星島

  2019/10/09   ふくだ歯科
タグ:虫歯予防

歯周病と糖尿病について、勉強会で発表して

日本における糖尿病患者は4人に1人となり、歯科医院でも糖尿病を抱えた患者を診る機会が増えて

きています。歯周病は糖尿病第6の合併症といわれており、歯周病治療を担当する歯科衛生士にとって

糖尿病を理解することは重要です。

 

糖尿病とは

インスリンが十分に働かないために、血液中を流れるブドウ糖(血糖)が増えてしまう病気。インス

リンは膵臓からでるホルモンであり、血糖を一定の範囲におさめる働きを担っています。

 

1型糖尿病

・膵臓でインスリンを作るB細胞が壊れてしまうため、インスリンが膵臓からほとんど出なくなり、

 血糖値が高くなる

・若い人に多い

・やせ型の方が多い

 

2型糖尿病

・生活習慣や遺伝的な影響により、インスリンが出にくくなったり、インスリンが効きにくくなったり

 して血糖値が高くなる

・中高年に多い

・肥満の方が多いが、やせ型の方もいる

 

糖尿病の自覚症状

・喉が渇く、水をよく飲む

・尿の回数が増える

・体重が減る

・疲れやすくなる  など

 

糖尿病の合併症

・毛細血管を中心に生じる細小血管障害  

 糖尿病網膜症、糖尿病腎症、糖尿病神経障害

・比較的太い血管に起こる大血管障害  

 心筋梗塞、脳梗塞などの原因となる動脈硬化

 

合併症予防 HbA1c7.0%未満

 

歯周病との関係

糖尿病は歯周病を悪化させる

糖尿病の患者さんは、唾液の分泌が少なく、プラークがつきやすくなることがよくあります。そのため

歯周病の発症リスクは健常な人の2〜3倍といわれます。免疫機能の低下で、細菌に対する抵抗力が

低く、歯周病が悪化しやすくなっています。

歯周病は糖尿病を悪化させる  

糖尿病の患者さんが、風邪などの感染症にかかると、一時的にインスリンの作用が弱くなり、血糖値が

高くなります。歯周病も感染症のため、血糖値を上げるように働きます。風邪などの一時的な病気とは

異なり、歯周病は慢性の感染症のため、その影響がずっと続き血糖コントロールを悪化させます。

歯周病により、歯茎が痛んだり歯がグラグラ揺れたりするような状況では食事の量が減ったり食べる物

が偏ったりして、食事療法や薬物療法を正しく行えないようになります。

糖尿病の人は歯周病が発症・進行しやすく、歯周病のために糖尿病の治療がうまくいかないこともあり

ます。反対に血糖をよくコントロールし適切に歯周病を治療すれば、双方に好影響を与える相乗効果を

生み出します。

PCRが下がるとHbA1cが下がる!

HbA1c1%改善に伴う合併症リスク低減効果

・糖尿病関連死 −21%

・心筋梗塞   −14%

・脳梗塞    −12%

 

感想

 糖尿病と歯周病は密接に関係していることがわかりました。歯周病治療をすることにより糖尿病の

 合併症のリスクも低減できるということで、私達歯科衛生士の役目はとても重大なものだと感じ

 ました。糖尿病についてはもちろん、糖尿病の患者さんが歯周治療になぜ通われているのか患者さん

 の気持ちもしっかりと考えていきたいです。       

                            衛生士 松本

  2019/09/29   ふくだ歯科

「初診時に響く!コミュニケーションのコツ」について、勉強会で発表して

患者さんを理解するにあたっては情報収集が不可欠です。

その手段として、問診表やカウンセリングシートがあります。これらを活用することで、口腔内に

関する訴えのみならず、歯科医院の最終受診歴、自院への来院理由、過去における体験などから、

さまざまな患者さんの行動パターンを読むことができます。そうして得られた情報をもとに、

さらに患者理解を深めるために、歯科医療コミュニケーションがなされます。

 

① 歯科医院の最終受診歴を把握する

 最後にいつ歯科医院を受診されたかという情報は、患者さんの口腔に対する意識を予測する情報の

 1つとなります。最終受診日だけでなく、その頃どのような目的で通院し終えたのか、歯科治療が

 最終受診となり、その後は歯周病予防で来院することはなかったのか、来院したとすれば、どの

 くらいの間隔で、どのような目的で通院されていたのか(治療だけなのか、メインテナンスで通って

 いたのかまで確認することができると、その患者さんの予防意識に関する情報がより深まります。

  問診票や患者さんへのインタビューから得られる情報をふまえて、患者さんの予防意識を2つの

 パターンに分けて考えることができます。1つは「メインテナンスの意義を十分理解していなかった

 ために、長い間歯科医院を受診することがなかった」パターン、もう1つは「メインテナンスの意義

 を十分に理解しているのにもかかわらず、受診を継続しなかった」パターンです。前者の場合、一方

 的な説明は控えながらも、患者さんにメインテナンスの重要性と意義に対して関心を示してもらう

 ようにアプローチしましょう。後者の場合、受診を継続できなかったことを理解・共感したうえで、

 少しでも行動変容に向かうようサポートの方法を考えていきましょう。

② 自院への来院理由を理解する

 患者さんが自院に来院することには必ず理由が存在します。それについて詳しく伺うことで、患者

 さんが自院に対しどのような印象を持っておられるのか、どのようなことを期待されているのかが

 見えてきます。 仮に他者からの紹介(口コミ)で来院した患者さんであれば、紹介者は患者さんにどの

 ような話をされ、患者さんはその内容の何に響いて来院しようとする意思決定がなされたのかを理解

 すると良いでしょう。その「何か」を医療者側が把握することで、患者さんのニーズが見えて

 きます。 広告やホームページを見て来院した患者さんも同様に、広告やホームページのどの内容に

 関心をもたれたかを把握することで、他の歯科医院ではなく、自院へ来院した患者さん独自の理由と

 なるのです。

③ 過去における体験を聴く

 主訴に加えて、初診の患者さんに確認しておきたいこととして、過去に歯科医院でどのような体験を

 したかという情報も重要です。特に、患者さんが転院を決定づけたエピソードなどの情報があれば、

 それをもとに自院でも対策につなげると良いでしょう。例えば、なかなか抜歯ができなかった状況

 で、歯科医師もスタッフも苛立っており、その雰囲気が伝わってとても怖かったという経験をもつ

 患者さんであれば、歯科治療時における声かけや、スタッフ間の言葉遣い、態度、接し方に関して、

 徹底的に配慮できるよう心掛けましょう。 また、患者さんから話を聴く際、患者さんは話している

 うちに過去の嫌な経験が想起され、当時の感情やマイナスイメージのある歯科医師、スタッフの顔・

 声・態度まで思い出して不快感が増幅した結果、話が脱線していくことがよくあります。そんな時

 は、患者さんの気持ちが落ち着いたところで、本題に戻すよう心掛けることも大切です。あくまでも

 情報収集を目的としていることを忘れてはいけません。

 

〈まとめ〉

今まで、患者さんとのコミュニケーションについては、ゆっくり時間を費やせば良いと思っていた部分

がありました。しかし、慌ただしい診療の中の限られた時間で、患者さんを理解するための適切な情報

収集と、患者さんが抱える問題に焦点を当て、解決に向けたコミュニケーションをとる事が大切だと

思いました。

                           衛生士 関口

  2019/09/04   ふくだ歯科

「認知症患者さんを不安にさせない対応をマニチュードに学ぶ」について、勉強会で発表して

「ユマニチュード」は、ケア提供者の振る舞いによって、患者さんに“やさしさ”というメッセージを

伝えるコミュニケーション技術。

 

ユマニチュードの基本技法

 ユマニチュードは150を越える細かな実践技術からなっている。もっとも基本的な技法  として、

 “4つの柱”があり、➀見つめる、②話しかける、③触れる、④立つことの支援  から成る。

 歯科の場合に特に活用できる➀から③について紹介する。

 

見る   

 笑顔を見せ、ゆっくりと正面から近づくことがポイント。できるだけ、相手と同じ 視線の高さになる

 ように姿勢を低くして話しかける。   

 注意があちこち分散する人の場合には、しっかり目をみつめて視線を捉えることで、話しかける人に

 注意を集中してもらうことができる。

 

話す   

 話しかけるときには、穏やかなトーンで、ポジティブな言葉を使うように心がける。   

 “痛い”という言葉はネガティブな発想を抱かせるので、痛みについてどうしても 、聞かなければ

 ならないときだけ、その言葉を使うような配慮が必要。

触れる   

 触覚からの情報が、嫌なイメージを抱きやすいものである場合、安心できるイメージ につながる

 よう、やさしく触れる部分を作る必要がある。特に、言語力が低下した 状態の人に対しては、触覚

 からの情報は私たちよりも強力。   

 肩に触れる時、慣れていないので軽くポンポンと触れがちだが、安心をもたらす 触れ方としては、

 腕一本分の重みをかけて、相手の肩にしっかりと触れるようにする と効果的。

 

ユマニチュードをどう使う? 歯科医院の4大“困った”場面

場面1・予約したと勘違いして来院し、怒り出してしまう  

 *予約がないことを伝えるとき、姿勢を低くしながらゆっくり近づき、笑顔で相手の 目をみながら、

  ポジティブな言葉から会話をスタートする。  

 *一緒に過ごす時間を十分確保したいから協力してほしいというニュアンスを込めて、アポイントの

  あいている日をいくつか提案し、都合を聞いてみる。

場面2・ブラッシング指導で機嫌を損ねてしまう  

 *認知症が進んでいる場合は、しっかりと目を合わせて笑顔を見せ、会えて喜んでいる ことを表現

  する。  

 *できていないことを言語化され続けると、イライラするので、“できていること”を 強調する。

場面3・何度も同じ話や訴えを繰り返し、口を開けてくれない  

 *同じ訴えを繰り返すときには、なんらかの不安を抱えていることが多いので、最初の アプローチで

  安心してもらうことが大切。誘導の際、肩に手を添えるなど。    

 *治療用の器具を持つ前に、マスクを下げて笑顔を見せ、ポジティブな言葉をかける。

  デンタルチェアを倒した状態で声をかけるときには、少しまわりこんで、正面から 声をかけるなど

  の配慮をする。 

場面4・診療途中で「もう帰ります」とチェアから降りようとする  

 *話しかける、時折肩に手を触れるなどして、疑問や不安を解くことが必要。   

  限られた視覚情報をリクライニングを起こし、回復させ不安を軽減させる。  

 *記憶障害、見当識障害などによって、自分の状況が理解できなくなっている可能性が あるので、

  できるだけ、顔をのぞき込み、笑顔をみせ、現在の状況を伝え、ポジティ ブな言葉を添える。

 

 おわりに   

 認知症の人が混乱してしまった時、ユマニチュードでも、対応は難しく、相手が強く 嫌がる時、3分

 以上がんばってアプローチしても受け入れてもらえない時には、いっ たん退くというルール(3分

 ルール)がある。時間をあけることが、相手の意思を尊重することになる。“いったんあきらめる”

 ことも大切な技術だそうです。 認知症の患者さんに限らず、ユマニチュードの技法を活用していける

 ようにしていけたらと思いました。                         

                            衛生士 赤木

  2019/07/31   ふくだ歯科
タグ:認知症