スタッフレポート

スタッフによるレポートを掲載しています。

「P.g菌の増殖と上皮バリア」について、勉強会で発表して

1、P.g菌と鉄の関係

P.g菌は強力な歯周障害性を持つ代表的な歯周病菌だが、弱点は多い細菌種である。

・空気中の酸素に曝露される環境では生育できない

・pH6.0以下の酸性状態である環境では生育できない

・鉄分とタンパク質が必須

ヒトの体内には遊離の鉄イオンは存在しておらず、トランスフェリン、フェリチリン、ラクト

フェリン、ヘモグロビンなどの鉄結合性タンパク質と結合した状態で代謝あるいは保存されている。

これは細菌に鉄を奪われないための人体の知恵である。ヒト体内の鉄は細菌に利用されないように

しっかり管理されているにもかかわらず、P.g菌をはじめとする歯周病菌は血液中のヘモグロビンから

へミン鉄(鉄を含むポルフィリン)を摂取することができる。

2.上皮バリアの役割

皮膚は上皮バリアの代表例だが、粘膜を覆う上皮細胞も、私たちが歯周病菌との共生状態を維持する

ための重要なバリアである。歯肉上皮バリアは、バイオフィルムから歯周組織を守る物理的障壁である

とともに、細菌の栄養となる成分が、歯周組織から歯周ポケット内に滲出するのを防いでいる。

歯肉縁上バリアが機能している段階では、P.g菌をはじめとする歯周病菌と歯周組織との拮抗状態は

維持されており、歯周病の発症には至らない。炎症が進行して常にバリアが破られ潰瘍ができた時、

流れ出た出血を栄養としてP.g菌などの歯周病菌は増殖し、バイオフィルムと歯周組織の拮抗バランス

が崩れ、慢性歯周炎が発症する。

3.P.g菌は傷の治癒を阻害する

手や足の傷口は放っておいても治る。これは、潰瘍面周囲の上皮細胞たちが増殖し、潰瘍面を埋める

ように移動(遊走)して潰瘍を閉じる。ところが、歯周ポケット内の潰瘍は自然には治らない。

バイオフィルムの刺激によって慢性の炎症が続いているために、上皮バリアの損傷は止まらず、潰瘍面

の修復には至らない。そして、P.g菌が上皮バリアの閉鎖を阻害する。

細胞の足である接着斑はいくつかのタンパク質で作られている。このタンパク質の1つでも障害を

受ければ細胞は遊走しなくなる。P.g菌は上皮細胞内に潜入し、この接着斑の部分タンパク質を

分解する。そのため、細胞の接着斑は破壊され、細胞は遊走できなくなる。P.g菌に非感染部位では、

細胞が潰瘍面を埋めるように移動・増殖し、1~2日で再び均一な単層を形成する。しかし、P.g菌が

感染すると歯肉上皮細胞の、移動・増殖は阻害され、潰瘍面は埋まらない。これが歯周ポケットで

起きているのである。

4.歯周治療の目標は、歯周ポケットからの出血を止めること

歯周治療の目標は

・歯周ポケットを浅くする

・アタッチメントレベルの増加

・骨レベルの改善

・付着歯肉幅の増加

と言われる。

歯周ポケット内の潰瘍面から血液が供給され続ける限り、バイオフィルムの高病原性は維持し歯周炎は

進行する。歯周ポケット内の出血を止めるには、潰瘍面が細胞で埋められ上皮バリアが修復されること

が必要である。 基本治療で目指すことは、歯周炎発症までの過程を逆に辿り、バイオフィルムの病原性

を歯周炎発症前のものに戻すことだ。つまり、ポケット内の出血の停止である。ポケット内の潰瘍の

閉鎖により、歯周病菌への血液の供給を断ち、かつての低い病原性しか持たないバイオフィルムに戻す

必要がある。歯周ポケットのマイクロビオーム(常在微生物叢)を元の状態に戻し、「歯周病菌と

歯周組織の拮抗による共生関係」を取り戻すことによって、歯周状態も元の状態に戻っていく。

5.メインテナンスの目的

歯周病の症状が治まっていても、歯肉退縮や骨吸収によってプラークコントロールが難しくなって

しまった箇所は残っており、BOP陽性ポケットや、浅くならないポケットなど、再発してもおかしく

ない状態の場合もある。歯周病菌はそんな部位にバイオフィルムを蓄積させて成熟させようとして

いる。新しい部位にバイオフィルムが蓄積する前に壊してしまう必要がある。成熟化しているバイオ

フィルムを定期的に全て除去する。そうすることで高病原性化しつつあったバイオフィルムを低病原性

の状態に戻す必要がある。患者さんのバイオフィルムの病原性が高くなるタイミングには個人差が

ある。メインテナンスの間隔も患者さんごとに異なるはずだ。わずかな蓄積でもバイオフィルムが成熟

し高病原化するのか、そうでないのかを見極めるために、歯周治療が終わってから1ヶ月後、2ヶ月後、

3ヶ月後と徐々に間隔を空けて患者さんの歯周状態を観察するべきである。そのためには、患者さんの

セルフケアの状態を確認することも大きな目的である。症状がないことへの安心感から口腔清掃への

モチベーションが下がっていないか、加齢や疾病によってブラッシング技術や意欲が低下していないか

を確認する。そして、患者さんの生活環境や生活習慣の変化を把握して、歯周状態に良くない因子の

除去に努める必要がある。

6.感想

歯周病を完治させることはできないが、出血を抑えることで、歯周病が発症するためのバイオフィルム

が低病原性のものになり、歯周病を抑えることができるということが分かった。メインテナンスのTBI

を教えてもらい、出血がしやすい原因なども理解できたので、それを用いた上で、問診やメインテ

ナンス時の口腔観察を努めていきたいと思った。患者さんがセルフケアだけではなく定期検診に通って

もらい、さらに自分の口腔内を綺麗に保つモチベーション向上のため、炎症の指摘だけのTBIでは

なく、歯周病についてしっかりと理解してもらえるよう、口腔状態を伝えていきたい。

                        衛生士 小鐵

  2023/02/05   ふくだ歯科
タグ:歯周病

「歯周病の予測」について、勉強会で発表して

Ⅰ.歯周病の危険因子について

 歯周病の原因は

 ①歯周病菌、歯石やプラーク、外傷性咬合といった病的因子 

 ②免疫や組織抵抗力といった遺伝、ストレス、口腔解剖学的形態といった宿主的因子 

 ③生活習慣、教育や文化、経済や医療、保健といった環境的因子

 の3つがあります。

 これらは、歯周病の発症・進行に関係があると考えられる因子で、リスクファクター(危険因子)

 と呼ばれています。しかし、リスクファクターがあるから必ず、歯周病になるというわけでは

 ありません。ただ、発症や進行の可能性は増加します。

Ⅱ.病原性の高い歯周病について

 患者さんのバイオフィルムに、病原性の高い歯周病菌がいるか、いないかは、とても重要です。

 レッドコンプレックスは病原性が高く、大きな危険因子です。なかでも、Ⅱ型のP.gingivalisは、

 高病原性の細菌です。これに感染すると、非感染者と比べて44.44倍も歯周炎が発症する危険性が

 高くなります。歯周病のリスク因子として有名な喫煙や糖尿病と比べ、かなり高い値です。 対策方法

 として、細菌検査や臨床症状からリスク判断ができます。もし、細菌検査が可能であれば、十分な

 ブラッシングや定期的プロフェッショナルケアなどの歯周病予防対策を早めにスタートすることが

 できます。もし、細菌検査ができないのであれば、治療効果の推移と合わせて、歯周病の病原性を

 推測することができます。歯周治療方針を決めるうえで、とても大切なことです。

Ⅲ.歯周病の発症・進行への影響について

 世の中には、歯周病になりやすい体質の人と、そうでない人がいます。これは、遺伝的要因によって

 異なってきますが、そのメカニズムははっきりとは分かっていません。ストレスや不健康、妬みや

 恨みなどの悪い感情は免疫力や抵抗力を弱めます。生活習慣も重要です。 生活環境は、毎日患者さん

 と共にあり、歯周病の発症・進行に大きな影響を与えます。患者さんのことをよく知り、生活作り

 から、一生涯に渡って続く、歯周病のメンテナンスが始まります。良い生活習慣を保てないことは、

 歯周病の危険因子といえます。 望ましい健康生活とは、健康的に食べて、動いて、寝ることです。

 お酒は控えめで、タバコとストレスは百害あって一利なしです。口腔の健康習慣は、歯肉縁・歯間部

 の清掃と定期的歯科受診です。よく噛むこと、硬いものを食べること、カルシウムを取ることも

 歯周病予防に効果的と言われていますが、科学的根拠はありません。

Ⅳ.代表的な危険因子について

 歯周病は中年以降が圧倒的に多く、年齢と共に発症リスクがUPします。また、女性より男性の方が、

 飲酒や喫煙などの生活習慣や性格の面から考えて、高リスクであることが多いです。 危険因子の代表

 は、肥満、喫煙、飲酒です。BMIが22前後の人と比べて、25以上の人のリスクは約3倍、BMI30以上

 では約9倍となります。また、糖尿病が発症するとリスクは3~11倍となります。受動喫煙もリスクが

 あり、非喫煙者よりも喫煙者は5倍、受動喫煙者は3倍です。毎日、大瓶ビール1本程度を飲み続ける

 と、リスクは約3倍となります。また、飲酒する人の中で、顔が赤くなるか、赤くならないかでも

 リスクが異なります。赤くなる人は、33ml以上のアルコールを毎日飲むと、4.28倍リスクが高く

 なります。飲酒で顔が赤くなる人には、飲酒を控えるように伝える必要があります。

Ⅴ.歯科衛生士のミッションについて

 患者さんは、いろんな危険因子に囲まれて毎日を過ごしています。歯周病の発症を患者さんの人生を

 通して予防することが理想です。どんな重要な歯周炎でも必ず始まりがあります。その時を

 見逃さない目をもって、早期発見・早期治療をする。日常から支えていくことが歯科衛生士の使命に

 なります。

Ⅵ.感想

 患者さんの体のタイプや生活環境から、患者さんの口腔内も出来上がっているので、問診でいろんな

 情報収集をすることが、とても大切であると感じました。また、口腔内所見からはもちろんですが、

 普段の何気ない会話から、患者さんの変化が分かることもあります。なので、定期メンテナンスに

 通ってくださっている患者さんの変化に早く気づいて、歯周病の進行を遅らせていくことができる

 のは、歯科衛生士の腕の見せ所であると思いました。 自分もそういった目で日頃、過ごしていける

 よう今後も頑張ります。

                     衛生士 福田

  2022/12/04   ふくだ歯科
タグ:歯周病

「不安と負担を軽くする妊娠期の歯科診療ガイド」について、発表して

《妊娠期の歯科受診が必要な3つの理由》

①妊娠中は口腔内のリスクが高まるから

②早産や妊娠合併症のリスクと関連するから

 最近では妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病などの合併症にも関連することが報告

③妊婦の口腔や全身の健康は胎児に影響するから

 母親の口腔内環境を良好に保つことがう蝕細菌の母子伝播予防になる

《妊娠期にみられる全身・口腔内の変化を知ろう》

妊娠期は女性ホルモンが急激に上昇し、ダイナミックな変化が全身や口腔内に出現する特別な時期

です。妊娠期につわり症状が現れた場合には、生活・食習慣が乱れがちとなることに加え、嘔気に

よってブラッシングが十分にできず、口腔内環境が悪化しやすくなります。また食事(間食)回数が

増え、唾液緩衝能が低下することも重なり、う蝕の発症リスクが高まります。

・全身の変化

 つわり 頻尿 便秘 痔 持病の悪化 貧血 腰・背部痛 皮膚の変化 動悸 眠気 精神の不安定

 免疫力の低下

・口腔内の変化

 歯肉炎・歯周炎 妊娠性エプーリス 智歯周囲炎 う蝕 酸蝕症 地図状舌 口内炎 口臭 

 歯の原因不明痛

《不安と負担の軽減につながる診療のポイント》

①妊婦が歯科へ抱く不安に応える

Q1:妊娠中に歯科治療を受けても問題はないのでしょうか。出産後まで待ったほうがいいので

     しょうか?

A1:治療に最も適しているのは安定期(妊娠5~7カ月)です。出産後はむしろ来院が難しくなるため、

   妊娠期に治療をしておくことがお勧めです。

Q2:妊娠中のエックス線撮影は問題ないのでしょうか。

A2:通常の撮影におけるエックス線量では問題ありません。歯科のエックス線量は、一年間の自然

          放射線の約1/100程度であり、顎顔面に対しての撮影法となるため胎児に直接エックス線が

          当たることはなく、危険度は非常に低いといえます。

Q3:妊娠中に歯科の薬の服用をしても問題ないのでしょうか。

A3;母体や胎児に影響を与えるなどの薬剤が必要となる場合は安全に使用できるものを適切量使用

         するので問題ありません。

Q4:治療を行うために麻酔が必要と言われたのですが、問題ないのでしょうか。

A4:通常使用量であれば問題ありません。むしろ痛みを我慢するほうが母子にとってストレスに

          なることもありますので、適切に使用しましょう。

②医療面接で緊張を和らげる

 コロナ禍において感染対策を実践しているという安心を与えることも大切

③負担をかけないチェアーポジション

 上体を45度程度傾けた半座位とする。緊急時のポジションは左側を下とする側臥位をとり、大動脈

    の圧迫を解放する。

《つわり時のブラッシングのコツ》

・無理せず体調の良い時間に行う

 起床時や一日の疲れがたまった夜などに辛くなることが多いです。

・ぶくぶくうがいをしておく

 無理に歯磨きをせず、水や洗口剤で口腔内をできるだけ清潔にしておきましょう。

・ながら磨きのすすめ

 テレビを見ながら、お風呂でリラックスをしながら、など体調の良いときを利用しましょう。

・小さめのヘッドのブラシで

 奥歯を磨くときに喉に近い粘膜を刺激しないよう、歯ブラシのヘッド部分がなるべく薄くコンパクト

    なものを使用しましょう。

・奥から前にかきだすように

 喉に近い部分に不意に歯ブラシが当たらないように慎重に行いましょう。

・顔を下に向けて

 歯磨き中に喉に唾液がたまらないように、下を向いて歯磨きをしましょう。

・臭いや刺激が少ない歯磨き剤で

 臭いに対して過敏になることが多いので、できるだけ臭いや刺激の少ないものに代えるかつらい

    ときは無理に歯磨き剤を使用しなくてもいいでしょう。

◎ガムを噛むことができるならキシリトールなど砂糖不使用のガムを噛みましょう。

    虫歯予防効果や唾液の分泌促進によって、むし歯菌の母子伝播予防にも役立ちます。

△嘔吐直後の歯磨きは控えて

    嘔吐直後に研磨剤が含まれる歯磨き剤を使うと、残った胃液で歯の磨耗を促進してしまう危険性が

    生じます。まずは水やうがい薬で口の中の汚れを十分に洗い流し、唾液による緩衝作用が回復する

    約30分間は歯磨きを控えましょう。

    妊娠期は規則正しい食生活、食習慣の改善、禁煙、アルコールを控えるなど生活習慣を変えることが

    できるビッグチャンスです。また妊娠期の口腔衛生管理は理想的な歯科疾患予防になりさまざまな

    妊娠トラブルのリスク低減につながるかもしれません。さらに生まれてくる子どもに対しても、う蝕

    ゼロや口腔機能の発達を導き、口呼吸や不正咬合をも予防する理想的なスタートにできるのです

《感想》

私は当院でも取り扱いのあるチェックアップスタンダードを使用すると臭いや刺激が少ないため比較的

楽に歯磨きができました。このような経験や学んだ知識を患者さんにもお伝えし、ストレスの少ない

妊娠期を過ごすお手伝いができたらと思いました。

                                衛生士 藤元

  2022/11/20   ふくだ歯科
タグ:妊娠

「歯周病と糖尿病」について、勉強会で発表して

糖尿病はこんな病気

糖尿病とは、インスリンという血糖値を下げるホルモンの効果が十分ではないことにより、血糖値が

上昇した状況がずっと続く(慢性高血糖)場合を指す。放置し続けて糖尿病を発症すると、いろいろな

合併症が起きてしまう。歯周病もその一つ。現在の医療ではいちど糖尿病を発症するとほぼ完治は

できないため、予備軍のうちに注意して進行させないことが大切。

歯周病は糖尿病によって悪化しやすくなる

歯周病も動脈硬化などと同様、糖尿病になると進行が早まり、また歯周病の治療が終了してメインテ

ナンスに入っても再発をきたしやすくなると考えられている。糖尿病のコントロールの指標である

ヘモグロビンA1c(HbA1c)がおおむね7%を超えるとそのリスクが高くなると考えられている。リスク

回避という観点からいうとHbA1cを7%以下にコントロールしておくことが肝要。

糖尿病と肥満の関係

肥満になるとインスリンのはたらきが鈍ってくることがわかっている。肥満の方では「インスリン

抵抗性」が生じる。そうなると、一定の血糖を保つうえで通常より多くのインスリンが分泌される。

この状態が長く続くと、すい臓に負担がかかりすぎ、やがて分泌量は減っていき、「インスリン分泌

不全」の状態になる。結果として、インスリンの分泌が枯渇して、糖尿病が悪化してしまう。

肥満は歯周病と同じ慢性的な炎症を起こす

肥満症の特徴は脂肪細胞が増えること。そこには多数の脂肪細胞が観察される。従来脂肪細胞は余分な

エネルギーを中性脂肪の形で蓄えているだけの、倉庫のような細胞だと考えられていた。ところが、

成熟した脂肪細胞には多数の免疫細胞が集積していることがわかってきた。つまり、脂肪組織では感染

によらない炎症が起きている。

従来、歯周病による炎症は口の中にとどまっていると考えられていた。しかし、近年歯周病による

炎症は他の臓器や組織に広がるとかんがえられるようになった。全身に日常的な炎症を惹き起こすと

いう意味では、肥満も歯周病も実は「似た者同士」ということになる。

ポッチャリ体型なら歯周治療による糖尿病の改善があり得る

歯周病によって口の中で起きた炎症は、体のほかの部位に広がる。ほどほどに脂肪組織が成熟している

ポチャリ体型の方では、脂肪組織にも炎症が波及する。重度の歯周病の方ではCRP値が上昇するケース

がある。歯周治療で初診時に高かったCRP値が下がる患者さんに限って、糖尿病のHbA1cも改善する

ことがわかってきた。つまり、歯周病による炎症が体に波及している場合、歯周治療でその炎症を

抑えることが糖尿病の改善につながる。

 (CRP値:肝臓から産生される炎症マーカー)

 

【感想】

糖尿病の自覚がなくても、ややポッチャリ体型の重度歯周病患者さんでは、隠れ糖尿病に罹っている

可能性があるそうです。患者さんの生活習慣や栄養状態を観察していく必要もあると思う。

                          衛生士 赤木

  2022/10/23   ふくだ歯科

岡山県歯科医師会医療安全研修会に参加して

新型コロナウイルス感染症に対して歯科医療ができること 

 

・新型コロナウイルス(SARS-Cov-2)

目、鼻、喉、口腔などの粘膜にある受容体(ACE-2)を介入して侵入し増幅すると言われている。

歯周病などの口腔細菌は喉や口腔粘膜(舌)を保護している粘膜の糖たんぱく質を溶かす分解酵素を

出すためウイルスが受容体に吸着し侵入するのを手助けする

・口腔症状

最も一般的な口腔症状は味覚症害で有病率は45%。 口腔粘膜病変は白および紅斑性プラーク、不規則な

潰瘍、小さな水疱、点状出血、剥離性歯肉炎など。舌、口蓋、唇,歯肉、頬粘膜が影響を受ける。

軽度の症例では口腔粘膜病変は最初の呼吸器症状の前、または同時に発症する 味覚障害が多い理由

としては、舌背の糸状乳頭に新型コロナウイルスの受容体ACE-2が存在するため。歯周ポケットは

ウイルスにとって好ましい生息場所であり新型コロナウイルスの貯蔵庫として機能する可能性がある

ため貯蔵庫を破壊することが重要。

・新型コロナウイルス対策で見落としていた口腔バイオフィルムに由来する3つの重症化要因

① 唾液感染と歯肉出血(BOP)に由来する低酸素症

② 口腔バイオフィルムに由来する黄色ブドウ球菌のスーパー抗原(サイトカインストームの原因)

③ 口腔バイオフィルムに由来する炎症関連物質ガレクチン-3(Gal-3)の産生:(サイトカイン

ストーム、動脈硬化、糖尿病の原因)

口腔粘膜病変は(たぶん)貧血性低酸素症で起きると言われている

貧血性低酸素症:血液の酸素量が低下した状態のこと。

→パルスオキシメーターで計測できるためPCR検査を待つ必要はなく早期発見につながるため

今注目されている。

・感染症の3要因

病原体:歯科診療所でのPCR検査を実現(現在は診断までに75分)

環境:診療所での個人防護具、口腔外バキュームの使用、予約診療で待合の密を防ぐ

宿主:歯周治療による肺炎リスクの低下

殺菌剤CPC配合の製剤が新型コロナウイルスを99.9%不活化すると報告

塩化ベンザルコニウム(BKC 0.05%以上)

塩化ベンゼトニウム(BTC 0.05%以上)は新型コロナウイルスに対して有効と判断。

ガム・デンタルリンス(CPC+BKC)、ポピドンヨード、リステリン(クールミント) はドイツの実験で

新型コロナウイルスに対して極めて有効と報告された。

・糖尿病と並んで歯周病も新型コロナウイルスによる肺炎のリスクを上げている

新型コロナウイルスは口腔で増殖するので出血している歯周組織から血液中に侵入する可能性がある

歯周組織から細菌や内毒素(LPS)が血液中に拡散することにはすでに強いエビデンスがある

・新型コロナウイルスは免疫細胞が狂乱状態に陥って過剰に反応してしまうこと

(サイトカインストーム)

そのために普通ならば感染細胞だけ倒す免疫系が健全細胞まで倒してしまう

→血管の病変に繋がり肺炎を起こす

・重症化予防 サイトカインストーム(免疫暴走)を防ぐ

新型コロナウイルス感染症はサイトカインストーム、すなわち免疫暴走により重症化する。本来なら

免疫細胞がウイルスと闘うために作るサイトカインですが、制御不可能となって自分の細胞まで攻撃

してしまう現象のこと。このサイトカインストームを引き起こす物質の多くは歯周病菌に由来すると

考えられている。歯周病菌は炎症性サイトカインの産生を増強し、肺炎やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)

などの重症化に影響することがある。

 

感想

専門的な口腔清掃を行うことの大切さは理解していましたが、必要な歯科治療を行い咀嚼ができる

ようにするということも感染予防に重要ということがわかりました。歯科受診を控えている方も

少なくないように感じますがコロナ対策の一つに口腔ケアがとても重要ということをお伝えして

いきたいのと、自分自身もセルフケアをより徹底していきたいと思います。

                               衛生士 藤元   

  2022/08/12   ふくだ歯科

「患者さんのやる気を引き出すセルフケア指導」について、勉強会で発表して

歯周病は、プロフェッショナルケアだけではコントロールし得ないものであり、歯周治療には患者さん

によるプラークコントロールが欠かせません。 プラークコントロールの成否は、患者さんの行動変容に

よって左右されます。したがって、口腔衛生指導(OHI)は術者が一方的に指導するのではなく、患者

さんの想いを聞いたり、患者さん自身に気づきをもたらしたりするというアプローチが欠かせません。

1. なぜ歯周治療に"患者さんの主体性"が必要なのか?

 ・プラークコントロールは術者だけでは達成できない 歯周病は、歯肉縁上のコントロールと歯肉縁下

  のコントロールの両方で初めて完成します。したがって、術者が主に縁下のコントロールを担当

  する代わりに、患者さんには縁上のコントロールを担当してもらう必要があります。

 ・患者さんに"お願いして"行動を変えてもらっても長続きしない

  生活習慣病は習慣の蓄積です。改善するためにはその習慣を変える必要があります。セルフケアで

  担うべき部分を「術者がやってあげる」というアプローチは最低のラインになります。そこで、

  患者さんの行動を変えるための介入が必要ですが、「〜してください」という、患者さんに"お願い

  する"指導だと、もしかすると目標設定が低くなって、妥協的になり、患者さんが良くなろうとする

  のを邪魔してしまうかもしれません。患者さんがセルフケアを行う目的が「自身のため」にならな

  ければ、「自分の健康を守る」という長期的なゆるぎない価値観は根付きません。そのためには、

  患者さんが問題を自分事化し(=主体性をもち)、受動的な姿勢からより能動的な姿勢になるように

  サポートすることが必要なのです。

 ・患者さんができることを奪えば、自立を損なう

  セルフケアで目指すのも患者さんの自立です。私たちはあくまでも患者さんを支える立場です。

  緑上のプラークコントロールは、患者さんができること、患者さんが活躍するステージという意味

  合いもあるのです。

2. "患者さんの主体性"を生み出すエッセンス

 ⑴お互いの「つもり」を共有する 歯科疾患を診ていくうえで、SPTの重要性について、歯科医療者の

  イメージと患者さんのイメージを一致させていくことが必要です。今現在、患者さんが歯科に対し

  てどのような価値観を持っているか、SPTの重要性を理解しているか確認することは、患者さんの

  主体性を育む最初の入口であるとともに、価値観の向上を要するのかどうかのスクリーニングにも

  なります。

 ⑵患者さんのいちばんの専門家は患者さん自身である

  プラークコントロールにおける基本は、"やってあげる"を過剰に増やさず、"患者さん自身ができる

  ことを増やす"です。患者さんが自分で考え行動することが、自分自身の問題として捉えられる

  もっとも効率のよい道程です。しかし、一般的には歯周組織検査を終えると、患者さん自身が考え

  る間を与えず、即座に術者が説明を始めたり、その解決方法やアドバイスを与えたりしてしまい

  がちです。一見患者さんのために良かれと思っての行為は、患者さん自身の口腔衛生習慣の結果

  が、口腔内の状態にどのように反映されているかを自分で結びつけるチャンスを奪ってしまうの

  です。まずは、患者さん自身による自己評価の機会を設け、チェアサイドにてセルフケアの取り

  組みに関して想起してもらい、患者さんがその評価を表明するための機会を準備することが何より

  も重要です。 患者さん自身による患者さんの評価も主体性を育むためには大切で、そのためには

  自身の取り組み(セルフケア)を点数化してもらうといいでしょう。実際に患者さんにやってもらう

  と、満点ではないことも多々あります。満点をつけないということは、減点となる理由について

  患者さんに思い当たることがあるということです。それに対して、術者が根掘り葉掘り聞いたり、

  解決策を言ったり、指摘してしまいがちですが、それでは患者さんの主体性を育む機会を摘み取っ

  てしまうでしょう。むしろ術者は今できていることに対して評価するとともに、減点されている

  部分をどう満点につなげるか患者さん自身に問題を抽出してもらい、解決法を模索してもらうよう

  導くことが重要です。また、"大きな行動変容"を促すためには"小さな成功体験"を積み重ねること

  が大切です。染め出しにおいても、"染め出された赤い部分を減らす"という発想ではなく、"染め

  出されない白い部分を増やす"という見方で考えれば、言葉がけ1つとってもおのずと変わります。

 ⑶患者さんの言葉を重視する

  日常の臨床のなかで患者さんのプラークコントロールの改善が難しかったり、できていたはずの

  セルフケアが急に悪化したりするのは、なぜでしょうか。この「なぜ?」を解決するには分析が

  必要で、そのためには患者さんが問題に対しどのように向き合っているのか、あるいは何を難しい

  と捉えているのかを理解する"声"の拾い上げが重要です。患者情報はSOAPIE形式で記録を行うと

  有効です。その際、主観的な情報(S)として患者さん自身の考え方(価値観)や発言を拾い、歯周治療

  に対する患者さんの認識(温度)を確認します。それにより、モチベーションと(ブラッシングの)

  テクニックのどちらに比重をおいて介入すべきかをその都度判断します。

Subjective:主観的情報

問題に対する患者自身の発言

Objective:客観的情報

術者が測定する患者の情報

Assessment:評価

Sの分析評価(何がその発言につながっているのか)、

Oの分析評価(何がその測定内容につながっているのか)

Planning:計画

問題解決のための介入を優先機序などから計画立案

Intervention:介入

実際の介入・治療内容

Evaluation:期待される結果

今後の見立て、期待されること、次回以降のチェック事項など

 

 

〈まとめ〉

歯周治療にはプロフェッショナルケアとセルフケアの両方が大切というのは理解していましたが、

どうしても日々のTBIなどではこちらから色々説明してしまう事が多く、患者さん自身に気づきを

もたらせるような説明は出来ていなかったかもしれないなと思いました。染め出しの例にもありました

が、今後は患者さんにも意見を聞いて、自分で改善点に気づいてもらえるようなTBIもしていきたいな

と思いました。

                          衛生士 星島

  2022/08/07   ふくだ歯科
タグ:TBI

TCH(上下歯列接触癖)について、勉強会で発表して

TCHとは、安静時(非機能時)にあっても上下の歯が接触し続ける癖を指す。ふだん上下の歯を接触

させている方が楽だという人がいるが、本来、安静にしている時は、 上下の歯の間には1~3㎜程度の

空隙(安静空隙)がある。長い時間接触させ続けることで、顎の関節や筋肉、歯や粘膜などに問題が

生じることがあり歯科ではこのことをTCHと呼んでいます。

 

*口腔内の問題につながる癖がある

歯の接触は噛んでいる時や飲み込むとき、発音するときなどに起こるだけで、時間にすると 1日17.5分

しかありません。しかし、緊張する場面であったりゲーム操作など少しうつむいて作業する場合では

自然と歯を接触させる状態になります。歯を接触させる状態が繰り返し続くと、その状態に脳が慣れ、

「触れていることが普通」になります。 短時間の接触ならば問題になりませんが、本来は1日20分程度

しか接触しないはずの歯を何時間も接触させていれば、顎や関節も徐々に疲労していきます。その疲労

状態が続けば痛みになり、顎の関節や口に中の異常として感じられます。

*くいしばりと噛みしめとの関係

ブラキシズムには歯ぎしりやくいしばりなど、寝ている間にしてしまうもの(睡眠時ブラキシズム)

と、起きている時にするもの(覚醒時ブラキシズム)があります。TCHもこの、起きている時にする

ブラキシズムのひとつと考えられています。TCHの症状は、日中に活動しているうちに強くなり、夕方

から夜にかけてピークになると考えられています。

*TCHの確認のしかた

頬の内側や舌のふちの部分に歯の痕が見られるような方では、なんらかの影響で長期にわたり、弱い

ながら力がかかり続けている可能性があります。こういった圧痕ができる原因には歯並びや噛む力の

弱さいろいろ考えられますが、頬の粘膜が歯にかけている圧力の強さ、 歯のくいしばり、歯ぎしりなど

との関係が考えられています。 また、強いTCHを持っている方は、「唇をとじてください」と言われる

と、一緒に上下の歯も接触させてしまいます。

*TCHを続けると何が起きる可能性があるか

TCHをそのままにしておくと、歯や歯茎などに力がかかり続けているため、歯周病の悪化や繰り返す

知覚過敏、原因が明らかではないのに歯が痛くなる、歯の根の治療中の痛みがとれないといったことを

引き起こす可能性があります。また、舌や頬の粘膜を絶えず歯に押し付けていることで、間違ってかん

でしまったり、口内炎ができやすくなるほか、咀嚼筋が疲労して口の開け閉めや舌の動きが悪くなり、

発音が不明瞭になったりする可能性があります。さらに、歯や詰め物に持続的な圧迫や揺さぶる力が

かかり続けることで、詰め物が外れやすくなったり、神経を抜いて弱くなっている歯にひびが入った

り、インプラントのネジの緩みなどにもつながる可能性があります。入れ歯の方では、入れ歯を絶えず

粘膜に押し付けているために、入れ歯の下の粘膜の血行が阻害され、傷ができやすくなります。

*TCHをとめるには

TCHは気づくことが大事です。癖は人から指摘されるまで気づかないということがよくあります。TCH

も自分では気づけないので、家の中で「歯を離す」とか「リラックス」「力を抜く」などのメモを見え

るところに貼ってください。それを見たとき上下の歯が触っていたら、鼻から息を吸いながら一度肩を

大きく上げて、一気に口から息を吐いて力を抜きましょう。これを繰り返すことで癖が自然と抜けて

いきます。

 

感想

ブラキシズムには種類があり、睡眠時ブラキシズムなどはマウスピースを入れることで予防ができる

が、TCHのような覚醒時ブラキシズムはまず自分がなっていることに気づくことが大切だとわかり

ました。今後患者さんでTCHの疑いがある方にはTCHについて知ってもらい日常での予防法についても

伝えていけたらと思いました。

                            衛生士 岡崎

  2022/07/03   ふくだ歯科
タグ:TCH

「金属アレルギー・治療前に知っておきたいこと」について、勉強会で発表して

局所性の金属アレルギー・・・ネックレスやピアス等が直接触れる部分が局所的に赤くなる  

全身性の金属アレルギー・・・原因とは離れた場所(手や足等)に症状が出る。歯科金属アレルギー。

歯科金属アレルギー  

 口腔内に存在する金銀パラジウム合金等が原因で、口腔内や皮膚に炎症が起きる疾患。  

 50歳代女性に多い。  

 しかし、皮膚に症状が出る原因は山のように存在し、歯科金属はそのごく一部にしか過ぎない。

 歯科金属を除去しても5割程度の患者さんしか治らないという報告もある。

皮膚科と連携し、アレルギーの原因を把握する。(パッチテスト)  

 パッチテストで歯科金属に陽性反応が認められた場合、原因とされる歯科金属を除去していく。

 しかし、歯周病等で歯茎に炎症がある場合、体内に金属イオンが取り込まれる確率が高まり、

 皮膚症状を悪化させる場合がある為、先に歯周治療を行う。  

 除去時にはラバーダムを用いて患部を分離し、粉末が飛散しないように配慮する。金属片が歯茎に

 飛び散ると、一時的に皮膚症状が悪化することもあるが、時間とともに治ることが多い。

置換される主なアレルゲンフリー材料  

 セラミック、レジン、CAD/CAMにて修復治療。置換後、皮膚症状が改善していくかをチェック

 するが、すぐに改善する方の割合は少なく、2年以上かかる方もいる。  

 インプラント含め、チタンはアレルギーを起こしづらいと言われているが、インプラント埋入直後に

 皮膚トラブルが起きた患者さんが何名かおり、パッチテストでは陰性と出たが、その後インプラント

 を除去した結果、全員の皮膚症状が改善した報告もある。(ドイツ)  

 チタンはパッチテストの精度がよくないのが現状とされている。

歯周病と関連する皮膚症状  

 歯科と関連する皮膚症状として代表的なものが「掌蹠膿疱症」。手の平や足の裏等に小さな水ぶくれが

 でき、良くなったり悪くなったりを繰り返す疾患。口腔内の炎症と関係していて、歯周病を治療して

 健康な状態をキープできれば治るかもしれないという報告がされている。

メインテナンス時に把握しておきたいチェック項目

1. 修復物の不適合・・・その隙間に唾液等が溜まり、腐食が起こりやすい。腐食が起こると金属イオンが

  溶け出してアレルギーを起こしやすくしてしまう。

2. 修復物の粗造面・・・粗造面はイオン化しやすいと言われている。歯科医師が滑沢にするか研磨する。

3. 炭酸飲料の頻回摂取・・・まだ研究段階だが、炭酸飲料は金属の腐食を促進させる可能性があると

  言われている。

4. 金属製品を身に着けている部分に変化はないか・・・その皮膚周囲が赤くなっている場合、将来、

  歯科金属によるアレルギーを発症しやすくなる可能性がある。そのリスクを伝え、治療が必要

  にならないようにメインテナンスを続けて歯を守ることが大切だと伝えよう。

  万が一、将来修復が必要になった際は、修復物には金属以外を用いた方が良い事を説明する。

感想  

 皮膚にトラブルを起こす原因は、洗剤等の日用品や化粧品、植物、食物と様々なものがあり、歯科

 金属はそのごく一部だということだが、皮膚科で診断されたのか等、患者さんへの問診を慎重に行い

 たい。金属除去となれば、ラバーダム防湿や口腔外バキュームでしっかり対応していきたい。

                       衛生士 岡本

  2022/05/05   ふくだ歯科

「コロナ禍で歯周病のリスクが高まっているのはなぜか?」について勉強会で発表して

<歯肉炎>

歯肉が腫れ、ブラッシング時などに出血しやすい状態 

<歯周炎>

さらに歯肉が腫れ、退縮し、骨吸収を起こした状態

→プラーク中の細菌が歯肉に炎症を起こし歯槽骨を溶かす

歯周病の初期はほとんど自覚症状がなく、自覚するころには重度になっていることがあるので注意。

歯周病菌は一度定着すると0にすることはできないので、早期に発見し、予防することが大事。

他人の唾液から感染することが多いため、直箸や回し飲みなどには気を付ける。

歯周病菌は、18歳から住み着きやすくなり、30代以降から増える。

●コロナ禍で歯周病のリスク

・受診を控える 

・マスクでの口呼吸

→マスクをすると息苦しいため、空気を多く吸える口呼吸になりやすい

口呼吸により口腔内が乾燥すると、唾液による抗菌作用などが減り、菌が増殖しやすい環境になる。

これが歯周病や口臭へとつながる。さらに、プラークが固くなり、取れにくくなることもある。

●口呼吸をしないための対策として

①口を閉じる意識づけをする

②トレーニングや体操をして、口腔周囲の筋肉の力を鍛える

③人と距離を取れる時はマスクを外す

などがあげられる。

●インフルエンザの感染リスクについて

歯科衛生士によるクリーニングをした対照群の罹患率…約1%

セルフケアや介護士によるクリーニングをしたグループの罹患率…9.8%

専門的な口腔ケアをすることでインフルエンザの感染リスクを減らすことができる可能性がある。

●歯周病によりコロナでの死亡率があがる?

歯周病の人が新型コロナウイルスに感染した場合、歯周病ではない人と比べ

死亡率…8.81倍

人工呼吸器を使用…4.57倍

集中治療室に入院…3.54倍

合併症発症…3.67倍

→歯周病菌がコロナの重症化と関係しているのか、歯周病の人に基礎疾患が多いことが影響している

のか明らかになっていないが、歯周病の人はコロナの重症化リスクが高い。

歯周病菌は全身の健康に関係しており、周術期のケアで入院日数が短縮されることもある。

●歯周病のセルフチェック項目の例

・物がつまりやすい

・浮いた感じがする

・歯並びが変わった

・歯が揺れている

●歯周病に効果的な磨き方 

・歯間部に毛先を入れ、磨くのではなく揺らす

・斜め45度で当てる

・個人の口腔内に合った指導をDHから受ける

<感想>

私自身、マスクをしている時、無意識に口呼吸になっているときがあるので、口内を健康に保つために

も鼻呼吸を意識したいです。歯周病により歯肉が退縮した患者さんは、それを見て「歯が長くなった」

と感じることもあるそうで、患者さんによりさまざまな表現の仕方があるのだと感じました。

患者さんにコロナウイルスと口腔の関係などを質問された際に、間違った回答をしないよう勉強して

いきたいです。

                             衛生士 國只

  2022/04/10   ふくだ歯科
タグ:歯周病

パニック障害について、勉強会で発表して

パニック障害とパニック発作   

パニック障害は「不安障害」と呼ばれるカテゴリーに分類される      

       主症状は「不安」の強い形である「パニック発作」   

パニック発作は「不安発作」や「恐慌発作」などと呼ばれる      

       典型例では発作は、突然に始まり、数分間で消失する

       パニック発作にみられる症状

        ・動悸 ・胸痛 ・息苦しさ ・窒息感→過呼吸(過換気)

        ・非現実感  ・死の恐怖

           ・自制心の喪失への恐怖/発狂する恐怖  など

    パニック障害は上記のような発作が1か月の間 に数回起きるもので、診断 に至るにはさらに

       いくつかの条件がある ケースによって発作の頻度 程度は異なる

      パニック障害の診断の条件

       ・パニック発作が1か月の間に数回起きる

       ・発作の出現に特徴がある(発作の出現が予想できない)

       ・うつ病や他の精神疾患、さらには心臓疾患や内分泌代謝疾患 など(パニック発作が

        付随して生じることがある疾患)を 罹患していない

治療

 「発作のコントロール」が主となる

  ① 発作を起きにくくする

   状況に関係なく起こる発作は薬物療法が用いられることが多い

  ② 発作出現時の対処

   安心できる静かな場所に身を置く

   周囲は見守りつつ「もう少ししたら治まるからね」など、回数や頻度に注意し声をかけ治まるの

   を待つ 「どうしたの?」「大丈夫?」など焦らせるような声かけはNG

   過呼吸時の対処

   ・ペーパーバック法

     過呼吸により二酸化炭素が過剰に体内から出ると、血液 中のイオン(電解質)バランスを

     崩す要因となる。この 二酸化炭素の流出を回収するために、何らかの袋(ペー パーバック

     など)を用い、呼気をそのまま体内にもどす こと

   ・ゆっくり少量小刻みに水を飲ませる(筆者)          

 歯科医療現場でできること

 ① 理解を示して安心感を与える

  「よく来てくれましたね」

  「こちらでできることはやってみます」

 ② 対処方法を考えて提示、実践する

  「身動きが取れない状況」が苦手。いつでも中断できる ことを提示し、一回の処置を短めに

  工夫する

 ③ 発作時には慌てないで対処する

  スタッフが慌てると患者さんはさらに焦る

感想  

「パニック障害」という言葉を日常でもよく耳にするようになりました。実際には発作を起こしている

場に遭遇したことはありません。そして、パニック発作が出やすい人は見た目ではわからないので、

医療現場では患者さんがどのような不安を持っているかなど理解を深めていく必要があるとおもい

ました。

                     衛生士 赤木

  2022/03/21   ふくだ歯科