スタッフレポート

スタッフによるレポートを掲載しています。

「なぜ、根面う蝕こそメインテナンスが大事なの?」について、勉強会で発表して

Part 1 押さえておきたい 根面う蝕の基礎知識

 症例で見る根面う蝕の特徴     

  根面う蝕は歯周病に併発している頻度が高く、一般的には高齢者 に多い疾患。    

 症例1 活動性(急性)の環状根面う蝕        

  う蝕は歯頚線に沿って進行し、ときには歯を取り巻いて環状う蝕 を形成する。抗う蝕性の違いで

  エナメル質を侵す頻度は少ないが、 直下の象牙質が侵されて遊離エナメル質となり、崩壊している

  こ ともある。    

 症例2 浅在性根面う蝕        

  う蝕の進行も歯冠部のう蝕と異なり、深達性となるよりも、むし ろ浅在性で複数面(広範囲)に

  広がる症例が多い。    

 症例3 部位により進行速度に差がある  

  比較的ゆっくりと進行するが、全身の健康状態等で急性化した場合、その速度は速い。

 高齢者の場合、歯髄腔も生理的に狭窄し、歯髄組織全体が退行変性に 陥っている傾向にあるので、

 病巣が歯髄腔に接近しても痛みを感じない ため、患者さんは気づいていないことが多い。また、

 両隣接面に発生して 進行すると、前歯小臼歯では破折する危険性が高くなる。    

 根面う蝕の臨床的特徴      

  進行形式       

  ・歯頚線に沿って進行       

  ・環状う蝕       

  ・浅在性       

  ・比較的ゆっくりと進行       

  ・健康状態によって急性化

 

Part 2 初期根面う蝕は修復せず、“管理”する    

 *“管理”=進行を抑制し経過観察すること      

  欠損の小さな根面う蝕に対しては修復処置ではなく、患者教育やフッ化 物塗布により進行抑制を

  図り経過観察をする“管理”という治療を行う。           

  ステージが進行して実質欠損が大きくなった根面う蝕に対しては、修復処置を行い、管理して

  いれば成績向上が期待できる。     

  う蝕が進行しすぎて通常の治療を行うと抜歯に至りそうなケースでは環境改善を図って進行を

  遅らせることを目的とし、非侵襲的に修復して経過をみる。

  (筆者:予想以上に良好な結果が得られている。)   

 *サホライド塗布の根面う蝕への効果     

  フッ化ジアンミン銀(サホライド)塗布は、銀によるタンパク固定とフッ化物による不溶性塩の

  生成により、象牙細管が閉塞されう蝕の進行 や象牙質知覚過敏が抑制される。さらに、齲蝕原生菌

  の付着やその増殖 (プラーク形成)も抑えられる。        

 *対処が難しくなる前に予防を   

  高齢者における根面う蝕リスクの判定とリスクの程度に応じた予防・管理法    

  リスク判定が高い場合の判定基準     

  ・過去1年間に2カ所以上のう蝕発生   

  ・根面う蝕の既往     

  ・多数の歯根面露出           

  ・比較的進行した歯周病     

  ・不良補綴(修復)物、義歯の装着    

  ・心身の活力低下     

  ・不良な口腔衛生状態          

  ・不十分なフッ化物使用     

  ・不十分な唾液流出量          

  ・不規則な受診     

 リスク判定が高い場合の予防・管理法     

  ・患者教育・指導            

  ・ブラッシング指導     

  ・食事指導・カウンセリング       

  ・フッ化物局所塗布     

  ・フッ化物配合歯磨剤の使用       

  ・フッ化物洗口     

  ・プロフェッショナルケア        

  ・補綴物の再製     

  ・1~2ヵ月に1回のリコール

 

【感想】

 根面う蝕は進行度合いによって、処置の仕方も変わってくる、“リスク”と“管理”を充実させるには

 患者さんをよく知ることが大切。      

                           衛生士 赤木

  2020/05/06   ふくだ歯科
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「食事記録を歯周治療に活かす!」について、勉強会で発表して

はじめに -食事記録からわかること-

食事記録はただ単に「何を、いつ、どのくらい食べた」という情報だけでなく、患者さんの生活リズム

や家族関係、価値観などといったさまざまな情報が読み取れることがあります。また歯周病が治り

にくい理由や、う蝕の発生、う蝕の進行が止まらない理由がわかることもあります。私たちの身体は、

食べたもの、すなわち吸収したものでできています。ですから患者さんの食事内容が、体の健康を維持

するために必要なものなのか、あるいは健康を害するものなのかによって口腔の健康に違いが出ること

も考えられます。

・タンパク質

 タンパク質は、筋肉・臓器・皮膚・毛髪などの身体を構成し、ホルモン・酵素・抗体などの身体を

 調節する機能を持つ重要な栄養素で、種類がたくさんあります。コラーゲンもタンパク質の一つ

 です。タンパク質の摂取量が少ないと、筋肉の合成が抑制され、同時に筋肉分解が促進されるため、

 全身の筋肉量が低下してしまいます。さらに断食や偏食などによって、極端に摂取量が低下すると、

 筋肉がいっそう分解されて基礎代謝量も低下します。その結果、太りやすくなり、血糖値も上昇

 しやすくなります。

・ミネラル

  鉄・亜鉛・銅・ヨウ素・マンガンなどがミネラルとされています。ミネラルも体内ではほとんど合成

 することができないため、食べ物から摂取する必要があります。鉄や銅が欠乏すると、貧血になる

 ことが広く知られています。亜鉛は味覚に関連するため、不足すると食品の味を感じにくくなり、

 味覚障害を引き起こします。ただし鉄の過剰摂取では肝障害、ヨウ素の過剰摂取では甲状腺機能

 低下症が発症することから、ミネラルは適切な摂取が重要です。

・ビタミン

 ビタミンは、身体の機能を正常に保つために必要な栄養素で、全身の細胞の再生やエネルギー代謝の

 ためにはたらきます。体内でほとんど合成することができないため、食べ物から摂取する必要が

 あります。ビタミンが欠乏すると全身に多様な症状が起こります。ビタミンA欠乏では視力の低下、

 ビタミンD欠乏では骨の形成が低下します。またビタミンB群が欠乏すると、口内炎などの皮膚症状に

 加えて、認知機能の低下をともなった意識障害や神経炎なども起こります。

《歯肉の血管にも悪影響な糖質の摂り方に要注意》

 歯肉は末梢血管が集まっているため、ピンク色をしていると言われていますが、この末梢血管が健康

 であるためには糖質過多にならないようにする必要があると考えられています。例えば、朝食はパン

 とコーヒー、昼食は天ぷらうどんといった食事は、栄養素でいうと炭水化物ばかりですが、

 このような炭水化物(糖質)の多い食事をとると、急激な血糖値の上昇によって血管を痛める血糖値

 スパイクや、血流が悪くなる組織の糖化が起きる可能性があります。ですから糖質の多い食事は注意

 が必要です。

《食回数の考え方》

 う蝕予防として、糖質を含む食事の回数を1日3回に近づけるようにアドバイスされる方が多いと

 思いますが、1日5回以内とおすすめするのもいいです。周知のとおり、食事を摂るたびに口腔内は

 酸性に傾き、歯の表面のカルシウムやリンが溶かされるものの、唾液の作用で時間とともに再石灰化

 が起き、歯質は維持されています。食事回数の増加に伴い脱灰のリスクが上がるため、唾液分泌量が

 少ない、ミュータンス菌が多いなど、う蝕リスクが高い患者さんは、食事の内容だけでなく回数と

 時間へのアプローチも必要になります。しかし血糖値スパイクを予防する観点からは食回数が少ない

 のもよくないと言われています。空腹時に急に満腹状態になると、血糖値スパイクが起こりやすく

 なると考えられているためです。

《糖質とタンパク質に注目した食事に関するアドバイス例》

➀毎食、最低2種類のたんぱく質を多く含む食品を摂りましょう

 ・タンパク質は、肉や骨、血液の材料になるのでとっても大切です。歯ぐきにも血管が集まって

  いますし、歯は骨に支えられているのでタンパク質をたくさん摂りましょう。

➁食べる順番は野菜→肉・魚・豆→糖質を意識しましょう。  

 ・この順番で食べると、血糖値の急上昇を抑えられるので血管にも優しいです。糖質の食べすぎも

  防ぎやすくなります。

➂糖質がメインの単品メニューを避けましょう  

 ・パン、スパゲティ、うどん、そばなどの糖質中心のメニューだけだと血糖値スパイクが起きやすく

  なって血管を痛めてしまいます。他にも身体に必要なたんぱく質などの栄養が足りなくなって

  しまいます。

➃糖質を含む食品を食べる回数を1日5回以内にしましょう  

 ・食べるたびにお口の中が酸性に傾くので、糖質を頻繁に食べるとむし歯になりやすくなります。

  たとえ少量でも頻繁に甘いものを摂ることを控えてください。

➄夕食後の糖質摂取を控えましょう  

 ・夜、寝ている間は歯を守る唾液の分泌量が少なくなってしまうので、歯の再石灰化が起こり

  にくく、むし歯のリスクが上がります。糖質は寝る前は摂らないほうが安心です。

➅砂糖の多いお菓子(特に飲み物)を避けましょう

 ・ジュースや炭酸飲料水には、身体に吸収されやすい糖質がかなり多く含まれています。だいたい

  1本当たりチーズケーキ3個分と同じくらいの糖質量です。それを一気に飲んでしまうと血糖値を

  上げてしまい血管を痛めやすいです。

➆無意識に摂っている糖質に気づきましょう  

 ・たとえばメロンパンの糖質量は約76gでチーズケーキ5個分です。はちみつ大さじ1杯はチーズ

  ケーキ1個に相当します。佃煮やドライフルーツなどにも血糖値を上げる糖質が入っています。

  糖質量を意識してみてください。

※以上の食事内容は腎臓疾患のある方や糖尿病でインスリンを打っている方などの有病者には当て

 はまらない内容を含みます。患者さんの健康状態によっては、タンパク質を増やしたり糖質を減らし

 たりしないほうが良い場合があります。 このような栄養素と歯周病・う蝕との関係については、まだ

 エビデンスがかなり少ないのが現状です。しかし臨床実感では、食事の内容や摂り方に配慮されて

 いる患者さんは歯科治療の予後が安定していますが、食生活が乱れている患者さんは治りにくい傾向

 があると感じています。 患者さんの食生活に関わることで患者さんが将来にわたって、口腔内だけ

 ではなく身体の健康を継続するお手伝いができるようになることが理想です。 また、ただ単に糖質を

 減らすアプローチではなく食事を楽しんでいただけるような指導を目標としています。

 

《感想》

  日々のTBIの中で患者さんの食事内容まで介入するのはなかなか難しいことだと思いましたが、会話

 の中で良いタイミングがあればお話を聞いてみることもいいかなと思いました。口腔は身体の一部で

 あるので患者さん一人ひとりにあったTBIができるようになりたいと思いました。

                                   衛生士 藤元

  2020/04/29   ふくだ歯科
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「抜歯後の注意事項」について、勉強会で発表して

1. 止血について

  ・帰宅後、出血が止まらない場合はガーゼや丸めたティッシュを噛んで圧迫してください。30分程度

    で出血が止まる場合がほとんどです。 しかし、いつまでもガーゼを咬んでいると口の中に唾液が

       溜まり、固まった血が溶けて血が止まりにくくなります。 血が唾液に混じった状態が翌日まで続く

       ことがありますが、気にして頻繁に唾を吐くと、かえって出血の原因となります。唾液に血が

       混じると、多量に出血していると錯覚しやすいですがほとんどの場合心配はありません。 しかし

       長時間、多量の出血がある場合はすぐに医院へ連絡してください。

2. 口腔衛生について

     ・抜歯当日は過度のうがいは避けてください。血が止まった後でも、また出血してくる原因になり

       ます。翌日からは食後にしっかりうがいをしてください。

     ・術部を指や舌で触らないでください。

     ・歯磨きは、術部に触れないようにし、なるべく翌日から行ってください。  

3. 安静について

     ・抜歯当日は、激しい運動や長時間の入浴は避けてください。

       血のめぐりや体温の上昇等によって出血してくることがあります。

4. 食事について

     ・麻酔が切れるまでは、頬を噛んだり火傷の原因にもなるのでできるだけ食事は避けてください。

     ・硬いもの、熱いもの、刺激の強い食物等も避けてください。

     ・体の抵抗力が下がると、痛みや腫れが出やすくなるので、栄養はしっかり取ってください。

     ・腫れや再出血、傷の悪化の原因になるため、抜歯後の飲酒や喫煙は避けてください。

5. 薬の服用について

     ・薬は必ず指示通りに服用してください。

6. その他

     ・抜歯した場所の周囲が翌日腫れることがあります。急激に冷やすことはよくないので、冷やした

       タオルをあてる程度にしてください。

     ・麻酔が切れると痛みが出てくるので必要に応じて鎮痛剤を服用してください。抜歯後4日目くらい

       には鈍痛に変わり我慢できる痛みになり、さらに1週間後にはほとんど痛みはなくなります。

       もし4日くらいを過ぎても強い痛みが続いているときは、抜歯した穴が「ドライソケット」になって

       いる可能性があります。

     《ドライソケット》

         抜歯した部分が血餅(固まり始めた血液)でふさがれずに骨の部分が露出してしまい、激しく

         痛むこと。通常は抜歯後数日でなくなる痛みが治まらず、1週間以上も痛みが続きます。触れると

         痛いなどの症状が出ます。 これは何らかの原因で抜歯した穴が血液で覆われず、かさぶたが

         出来なかったためで骨の上に歯肉が作られず骨が露出したままの状態です。物が入ると直接

         触れるために強い痛みを生じます。ドライソケットは抜歯窩治癒不全とも呼ばれ、抜歯後の

         発生率は2~4%で、下顎の親知らずでは約20%とも言われています。

〈まとめ〉   

   抜歯後の注意はいつも患者さんに伝えていますが、実際に自分が親知らずを抜歯すると、歯科衛生士

   としてある程度知識があっても、出血が続いたり腫れることなど不安に思うことが多かったので、

   患者さんはもっと不安かもしれないと感じました。患者さんから質問された時に不安を取り除ける

   ように説明できるようにしておこうと思います。

                             衛生士 星島

  2020/04/15   ふくだ歯科
タグ:抜歯

「加齢にともなうリスクをカバーする」について、勉強会で発表して

◎年齢とともに口腔に現れる4つのリスク

1.歯肉の退縮  

 加齢とともに歯槽骨が痩せ、歯肉退縮が現れます。また、歯周病に罹患している場合、歯肉退縮は

 加速します。さらに、歯肉退縮により象牙質が露出すると、根面う蝕のリスクも高まります。

 オーバーブラッシングにより露出した象牙質には摩耗がみられることも多いです。

2.唾液分泌量の低下  

 加齢や薬の副作用、咬合力の低下などが原因で唾液分泌量が減少し、口腔内の自浄作用と緩衝作用が

 低下します。口腔内が乾燥するドライマウスはう蝕や歯周病の進行、細菌の繁殖による口臭の原因に

 もなります。

3.口腔機能や味覚の低下  

 口腔機能低下のはじまりは「オーラルフレイル」と呼ばれ、老化のはじまりを示すサインとして注目

 されるようになってきました。症状としては、滑舌の低下やむせ、食べこぼし、噛めない食品の増加

 などが挙げられます。オーラルフレイルの後につづく口腔機能低下症には口腔不潔、咬合力低下、

 咀嚼機能低下、舌口唇運動機能低下、口腔乾燥、低舌圧、嚥下機能低下が挙げられます。

 また、偏った食生活による亜鉛不足も味覚障害の原因の一つです。

4.治療跡の増加  

 修復物の天然歯質の境目はプラーク付着因子となり、補綴物が多ければ、う蝕や歯周病の発症リスク

 も高まります。高齢者は、長く生きている分、う蝕や歯周病にかかった経験が多いので、補綴修復物

 が入っている確率が高くなります。

 

◎リスクをカバーするセルフケアのアドバイス

1.できるだけシンプルな口腔ケア  

 *セルフケアグッズの選び方   

  ①安全に使えるか   

  歯肉を傷つけたり歯肉退縮を助長したりしてしまう清掃器具ではないか、患者さんの磨き癖を含め

  て確認します。クレフトやフェストゥーンなどの歯肉の形態変化を見逃さないようにしましょう。

  ➁単純に使えるか   

  高齢者のセルフケアでは特に重要な項目です。加齢とともに根気が無くなるのが一般的ですので、

  清掃器具の種類を増やしすぎないように工夫しましょう。  

  ③短時間でできるか   

  歯を摩耗させないために大切な項目です。“お風呂に入りながら”“テレビを見ながら”などの「ながら

  磨き」はオーバーブラッシングの原因になるかもしれません。歯を摩耗させないために力が加わり

  すぎて磨きすぎにならないように注意しましょう。

2.唾液の分泌量の低下を補い、酸蝕を予防  

 食後の口腔内は歯からカルシウムが溶け出し、酸性に傾きます。酸性状態が続くと、う蝕や酸蝕の

 リスクも高まるため、唾液をたくさん分泌させ、臨界pH以上に戻すことが予防につながります。

3.機能低下を補い、舌苔を清掃  

 ご家族に口臭を指摘される患者さんは少なくありません。そして、その原因の6割が舌苔だと言われ

 ています。舌苔は口臭の原因の他に味覚低下の原因になります。舌クリーナーで掻き取るか口腔ケア

 タブレットを舐めてもらいましょう。

4.オーラルフレイルの予防  

 唾液分泌量が低下している患者さんには、唾液腺マッサージをしていただくといいでしょう。まず、

 患者さんの背後から術者が実際に唾液腺をマッサージし、唾液の分泌を実感してもらいます。その

 あとご自分でマッサージをしてもらいます。食前に耳下腺、顎下腺、舌下腺を5〜10回マッサージ

 し、唾液分泌を促します。 また、口腔機能維持向上の目的で「あいうべ体操」を1日30回を目安に

 行うよう指導します。舌の筋肉を鍛え、正しい位置に引き上げることで、口呼吸を防止します。

 お風呂の時間に行い、声を出すと喉周辺の筋肉も鍛えられるので、誤嚥防止の効果もあると考えられ

 ます。はじめは舌や頬に痛みを感じることもありますが、加齢によるたるみが改善するなど、女性に

 とっては嬉しい美容効果が期待できることをお伝えすると、モチベーションが高まるようです。

 

感想

 年齢とともに口腔内のリスクは高まるのだと改めて感じました。高齢者の口腔内の特徴をふまえ、

 患者さんに効率的にセルフケアを行ってもらうためにはどのようにサポートをしないといけないか

 考えていきたいです。

                          衛生士 松本

  2020/03/29   ふくだ歯科
タグ:加齢

「口腔機能発達支援」について、勉強会で発表して

離乳期に注目!歯科医院でかかわりやすいチャンス5

日ごろ生活を送るうえで口腔機能が意識されることはありませんが、離乳食期に感じるさまざまな

困りごとこそ、保護者が初めて口腔機能を意識する機会だといえます。

① 噛まない、丸のみする

この主訴で来院する乳幼児の口腔内を診ると、必ず上下の乳前歯以上の歯が萌出しています。保護者は

「前歯が上下生えているのに噛んでくれない。どうしよう。」という気持ちで来院されるようです。

「噛まない」という場合には、一見、「食材を硬くしたら噛む」とか「軟らかいから噛まない」と思い

がちです。実は、食感の異なる材料や海藻類、小魚や食物繊維が多く含まれるものは、口の中に入ると

自然と噛む回数が増えます。ご飯には、しらすでもひじきでも昆布でも、食感の異なる物を混ぜるだけ

で咀嚼回数は変わります。

② 仕上げ磨きが苦手

仕上げ磨きを嫌がるという場合、単に息苦しさが理由であることもあります。乳幼児期の呼吸回数は

成人の約2倍で、嚥下回数も成人よりはるかに多いのです。 子どもは、歯ブラシを近づけると自然と

息を吸い、歯ブラシが口の中に入ると息を止めたり、鼻呼吸をします。そして、口から出すと嚥下し、

息を吐きます。これを利用し、歯ブラシを口に入れてる間、数を数えてみましょう(年齢+2秒が目安

です)。こうすることで、術者が子どもたちの呼吸をコントロールしてあげることになるのです。

このように、歯ブラシの出し入れと呼吸指導を繋げることで、仕上げ磨きを、スキンシップやう蝕予防

はもちろんのこと、機能の発達にも繋げることができます。歯科医院にう蝕の治療に来て何もできない

子に対して、歯ブラシによるブラッシングからスタートすることは非常に重要です。カウントしながら

の仕上げ磨きは、呼吸指導に繋がるだけでなく、タービンやコントラでの治療や予防処置にも繋がり

ます。

③ 口の中に溜め込み、飲み込まない

手全体で物をつかんでいた赤ちゃんは、下の乳前歯が萌出すると、手指が動くようになります。さらに

上の乳前歯が生え揃う時期になると徐々に手指を使って食べ物を口に近づけようとしますが、思うよう

に口の中に入れられず、遊び食べとなり、やがて上手に手づかみ食べができるようになります。

手づかみができるようになると、「食べやすいように」と“一口サイズ”のおにぎりを用意する保護者が

非常に多いです。ただし、この“一口サイズ”は保護者が考えた大きさです。もしそれが口より小さい、

または口と同じサイズだった場合、子どもは詰め込んでしまいます。その結果、多くの乳幼児が次々と

口の中に溜め込んで、飲み込めなくなったり、溜め込みすぎて、えずいてしまうのです。 この場合は、

まず保護者がコンビニおにぎりと同じ大きさくらいのおにぎりを食べるところを見せた後(模倣)、

子どもにかじらせます。この時子どもがかじった量、これがまぎれもなくその子の“一口サイズ”なの

です。一口量は親が決めるのではなく子どもが自ら決めるのです。そのため、かじれるように、口より

大きなおにぎりを作ってもらうのがポイントです。

④ 上顎乳前歯が萌出しているのに、上唇が山型のまま 歯がなく乳児嚥下しかできない新生児や乳児の

多くは山型の上唇をしていますが、舌や口唇機能が発達するにともなって、次第に上唇が平たく口角が

上がるような口元になっていきます。上顎乳前歯が萌出しているにもかかわらず、いまだに「山型の

上唇」のままの乳幼児は、口腔機能の発達不足が疑われます。 山型の上唇をした子では、食事の際、

上唇を使わずに(捕食せずに)食べていたケースが少なくありません。その場合、上唇を使ってまず捕食

をし噛みちぎり、口唇を閉じて咀嚼・嚥下することが重要です。上顎Bが萌出していれば、すでに

手づかみ食べを始めている前後の時期ですが、スプーン食べに戻って、口唇を閉じる動きを練習し直す

のも一つの方法でしょう。

⑤ 保護者がストロー飲みをさせたがる

口腔機能の発達上は、ストロー飲みは必要ありません。舌まで届くストローで飲むことで、舌を前に

出して飲む乳児嚥下が持続され、大切な成人嚥下機能を学習する機会を奪ってしまいます。 また、離乳

食期における最も重要なことは、D(第一乳臼歯)の萌出までに内舌筋を鍛え、嚥下圧を鍛えることで、

これは口蓋形成にも繋がると考えます。内舌筋や嚥下圧は、捕食したりコップから飲もうとする際に

培われます。コップ飲みの際に口唇を丸く包む動きをすると、自然と舌も丸くなりますが、この舌を

丸める動きや食塊形成としてはたらく舌の形を変える動きが内舌筋の動きです。内舌筋の働きによって

舌のボリュームが増し、舌圧(嚥下圧)に関与するのです。 保育環境などの事情からストロー飲みの必要

性がある際には、上顎Aが萌出したら、家庭では少しずつコップ飲みの練習を始めるとよいでしょう。

まずはスプーンで啜って飲む練習から始め、おちょこ、小さいコップなどで徐々に飲む練習を進めて、

内舌筋を鍛えましょう。

 

〈感想・まとめ〉

口腔機能の発達についての知識が少なく、これまで指導したことはありませんでしたが、レポートした

内容で悩まれている保護者の方は多いと思います。むし歯から口腔内を守るだけでなく、さらに広い

範囲でサポートしていけるよう、勉強していきたいです。

                               衛生士 関口

  2020/03/08   ふくだ歯科
タグ:口腔機能

「患者さんにピッタリな指導展開が即わかる!」について、勉強会で発表して

●患者さんの心理的抵抗を起させないようにするため「患者さんにしてはいけないこと」が3点ある。

 患者さんに心理的抵抗を起こす時と、その対策

 1. 望まないことを要求する  

   ・本人が望んでいることに協力する  

   ・「あなたの望みに添いたいと思う」と表明する   

  2. 急激で大きな変化を要求する  

   ・ゆっくり小さな変化から  

   ・優先順位をつけて、一つずつクリアしていく

 3. 選択肢を奪う  

   ・「自分で選んだ」と感じさせる  

   ・選択肢を増やす

 

●モチベーションで患者さんにすべきことは2つ!

 モチベーション:肯定的・具体的な願いを引き出す     

  「歯周病」は否定的なイメージを持っている患者さんが多い。「進行すれば歯が抜けてしまう」

  というような、脅迫的なイメージでは患者さんの意識は長続 きしない。

              ↓     

  「具体的にどうなったらいいか?」と患者さんの望みを、「おいしくご飯が食べ たい」など、

  明るく、目の前に情景が浮かぶような肯定的で具体的な望みと して聞き出す。そして、「ちゃんと

  治療すれば、○○になることができます」 というよに患者さんが言った言葉をそのまま用いる。

   このステップは患者さんの心理的抵抗を取り除き、協力を得る第1のステッ プになる。    

 エデュケーション:願いを叶えるために必要な知識を持ってもらう      

  「健康になりたい」という意識を持ってもらったら、次に必要なことはそれを達成する知識です。

  ➀病気の原因は、細菌でありプラーク(歯垢)        

   患者さんの中には、「食べかす」と「プラーク」を混同している方がいるの で注意が必要。            

  ②プラークコントロールの具体的な目標値        

   原因を取り除く方法は歯磨きで、その目標は磨き残しが20%以下であると説明する。

   【プラークコントロールの目標値はどう設定したらよい?           

    著者の医院では20%以下としていますが必ずしも20%以下にしなけ れば健康を維持できない

    というわけではない。具体的な目標がな いと患者さんが行動できないのでそれぞれの歯科医院

    の状況に合わ せて目標を決めておくとよい。もちろん、医院で一律ではなく、患 者さんの

    リスクに応じて細かく目標値を設定できればなおよい。】     

 上記の2点は、モチベーションの最後にもう一度確認する。確認の方法は、こちらから繰り返し言う

 のではなく、「歯周病の原因はなんでしたか」「健康を維持できる磨き残しは何%以下でしたか?」

 と尋ねる。また、この先の治療においても、来院のたびにこの2点を何度も確認する。

 

感想   

「健康を維持できる磨き残しは何%以下でしたか?」という質問は、歯磨きは「する」 前提で質問

しているそうです。質問の形式をとることで患者さんの無意識の領域に はたらきかけ、行動変容を

引き起こす、心理的に効果的な方法だそうです。 しかし、来院のたびに2点の最低限の知識を確認する

のは、意識を定着させるのに は有効だと思うが、しっかりと患者さんを理解していないと、逆効果に

なることが あるように思う。

                            衛生士 赤木

  2020/02/24   ふくだ歯科

「認知症の発症と歯周病」について、勉強会で発表して

日本人と歯周病

    外国人から日本人の口臭は臭いと思われている。口臭の主な原因は歯周病、歯周病が認知症に悪化

    する研究結果が出ている。 日本は口内ケア後進国。日本に住む外国人100人にアンケートし、日本人

    の口臭にガッカリした人は68人、口臭のせいで日本人とキスしたくない人は43人いた。口臭の原因は

    歯周病の可能性がある。

 

歯周病とは

    歯周病の原因は歯と歯茎の間に生息している細菌。症状は口臭と歯茎の腫れだが自覚症状が現れ

    にくい。歯周病の人は、60代が90%、30~50代は約80%、20代は70%。歯周病は世界で最も患者

    が多い感染症としてギネス認定されている。

 

アルツハイマー病と歯周病①

    アメリカのルイビル大学の研究チームが慢性歯周病の原因細菌がアルツハイマー病患者の脳で確認

    した。また同じチームがマウスに歯周病の原因細菌を感染させた実験を行ったところ、6週間後に

    脳内で歯周病の原因細菌を確認され、アミロイドβも著しく増加していた。アミロイドβとはアルツ

    ハイマー病を引き起こす物質である。 アミロイドβは脳内に蓄積すると、脳の炎症に関わる細胞が

    活性化されて脳内に炎症反応が生じ、結果として正常な神経細胞が破壊されて脳の萎縮が起こると

    されている。

 

アルツハイマー病と歯周病②

    アメリカの製薬会社コルテキシムの研究チームは慢性歯周病の原因細菌が作り出す毒素が96%の

    アルツハイマー病患者の脳で確認した。ジンジバリス菌がタウというタンパク質を分解し、沈殿を

    させていくという。タウタンパク質は中枢神経細胞(脳と脊髄)に多量に存在し、脳の神経ネット

    ワークを構築する神経軸索の機能に必須なタンパク質。タウタンパク質に異常が生じると細胞内で

    不溶性の凝集を作り、軸索輸送がうまくいかず、神経細胞の死を招くという。

    軸索輸送…神経細胞の長い突起である軸索の内部で行われている、活発な生体分子の輸送。軸索の

                      構造や機能の維持に

    必須の役割を持つ。

 

脳への通過と蓄積

    すべての物質は脳内に入る際に、血液脳関門と呼ばれる “関所”を通過しなくてはならない。これは、

     脳へ血液中の有害な物質が入らないようにして、大事な神経細胞を防御する機構である。このように

     脳に行く血管には防ぐ組織があるが、リンパ管は素通りしてしまうためリンパ管で行っていると

     見られているという。また、正常な人でも慢性歯周病の原因細菌によってつくられる毒素がアルツ

     ハイマー病患者の10分の1程度あるという 。 認知症は発症する20~30年前から脳内にアルツ

     ハイマー病の原因物質の蓄積が始まるという。アルツハイマー型認知症の高い発症率を示す年齢層

     は、70歳代である。そのため、認知症の発症予防のためには、遅くとも50歳代で歯周病がコント

     ロールされていなければならない。

 

認知症リスクのその他の要因

    高齢者において、残っている歯が少ないほど、記憶や学習能力に関わる海馬、意志や思考の機能を

    司る前頭葉とよばれる脳の一部の容積が小さくなることが分かっている。つまり、歯を失い物が噛め

    なくなると、脳への刺激が減少して脳の働きに影響が生じ、その結果として、アルツハイマー型

    認知症のリスクが増すということだ。 歯の数が少ないと認知症を発症しやすいというデータもある。

    2003年に愛知県の65歳以上の健常者を対象に、4年間にわたって認知症が発症するまでの日数を

    調べたものによると、歯がなくて入れ歯も使っていない人は歯が20本以上ある人と比べ1.9倍、

    あまり噛めない人はなんでも噛める人と比べ1.5倍、かかりつけの歯科医師がいない人はいる人に

    比べ1.4倍認知症になりやすいという結果が出ている。

 

歯周病による認知症以外の病気リスク

    その他にも歯周病は心筋梗塞・脳梗塞のリスクが2.8倍ある。歯周ポケットから歯周病菌や毒素が

    血管に行き、血管内で炎症を起こし、悪玉コレステロールが発生して血管が詰まる原因になる。肺に

    入ると誤嚥性肺炎、妊婦は早産などが2倍から3倍になるという。 細菌のコントロールはもちろん、

    機能面の改善も含めて、口のなかを良い状態に整えれば、認知症の発症を遅らせたり、予防にも

    つながる可能性がある。しっかり噛むこと、そして歯磨きなどの口の中のケアはとても大切である。

 

【感想・考察】

    歯周病が様々な病気に影響することは知っていたものの、今回のレポートで認知症との関係性に驚か

    されました。特に、歯周病による脳への影響や認知症のメカニズムを詳しく調べることができ、大変

    勉強になりました。だいぶ知られてきているとはいえ、中には「歯が悪くなったら入れ歯にして

    しまえばいい」などと安易に考えている人もおられます。その『歯』が悪くなる前の早めの予防が

    QOLの向上に不可欠なのだと感じました。

                            衛生士 河本

  2020/02/09   ふくだ歯科
タグ:認知症

「中高年女性は口臭に注意」について、勉強会で発表して

日本人の9割の人が自分の口臭を気にしたことがある中で女性は男性よりも2倍臭いという結果出て

いる。 それは女性ホルモンのせいである。 女性には人生3タイミングで口臭の危機がやってくる

① 思春期

② 妊娠・出産

③ 更年期

女性ホルモンがP.intermediaの発育素であることため、女性の思春期や妊娠時にP,intermediaが歯周局所

で爆発的に増加することが影響されている。

今、さらに口臭を悪化させているのは、スマートフォンである。 その原因は姿勢にある。上方向や真正

面を見ているときは歯や舌は動かせるが、スマートフォンなどで下を見ているときは、歯はがっちりと

かみ合い、舌も動かしにくい。そのため口腔機能が低下し、唾液の流れが止まるのである。

『質と流れを良く、清流のようにきれいな唾液を』

口腔機能を向上させるためには乾燥させた昆布がいいと言われている。 1×2cmに切った昆布を口の中

に入れておくと唾液分泌が促進する。 その理由はまず、口腔内に入ったとき異物とみられるため、

生理的に排除するために唾液が出てくる。 その他にも昆布にはメリットがある。

① グルタミン酸(うまみ刺激)

     唾液の分泌量を増やすには、レモンなどの酸味が有効だが、乾いて荒れた口腔内には刺激が強す

     ぎる。その点、うまみは口当たりがマイルドなだけでなく、5つの基本味の中で最も分泌量を増加

     させ、かつ持続時間も長かったのがうまみ(グルタミン酸)刺激であった。その効果は20分以上で、

     酸味刺激よりも長続きした。

② 葉緑素(クロロフィル)

     植物細胞に含まれる光合成色素のことで、これには殺菌効果がある。

③ アルギン酸

     保湿に効果がある

昆布は価格が安いほうが硬くて溶けにくく長持ちする。

その他にもガムが効果的で、特に味がなくなったあとがポイントである。

普段→お口の中でコロコロ転がしておく。

会話するとき→上の奥歯の頬側に張り付けておく。

コロコロさせると舌が動き唾液腺を刺激するため唾液が出る。

口臭白書2019

(口臭測定スコアの基準値をオーバーした割合)

男性:8.3%

女性:17.9% (男性の2倍以上)

その中でも年齢層別にみると

中高齢男性:9.3% に対し

若年女性:11.5%

中高齢女性:24.1%(4人に1人) という結果が出ている。

歯科医院に3か月に一回通っている人は15.9%に対し1年以上通っていない人は65.9%である。

セルフケア意識は高まっているが、口臭測定の基準をオーバーした人は少なくない。

この結果からセルフケアを頑張っても口臭には必ずしも影響はしていないと考えられる。セルフケアにも限界があるため、歯科医院に通うことの大切さを伝えていきたい。

 

《感想》

最近の口臭悪化の新しい原因に、とても身近なスマートフォンが問題にあげられていることを初めて

知りました。私たちは患者さんの磨き方の癖や現状を伝え、自分自身の課題を把握していただくのが

理想だと感じました。

                        衛生士 藤元

  2020/01/26   ふくだ歯科
タグ:口臭

「そのお薬、歯科治療に影響があります」について、勉強会で発表して

1. 飲んでいる薬が歯科治療にも関係することをつねに伝えよう

    患者さんの中には「自分が飲んでいる薬は歯科治療に関係ない」と思って問診票に書いていない方も

    います。また治療の途中から服薬を始めたという方、逆に病気が改善して服薬をやめたということも

    あるかもしれません。薬を服用しているにもかかわらず、そのことを知らないまま治療をすると、

    治療に支障をきたしたり患者さんの体に重大な影響を及ぼしたりすることがあります。患者さんとの

    会話や言動から体調の変化に気づいたら声を掛け、薬の服用の有無を確認しましょう。いちばん大事

    なのは、飲んでいるお薬が歯科治療にも関係することを日頃から患者さんに伝えておくことです。

 

2. 注意したい薬

   ① 抗血栓薬・・・血液を固まりにくくし、血栓で血管がつまるのを防ぐ薬。出血が止まらなくなる点に

                           注意。

          こんな人が飲んでいるかも                                                       

           ・狭心症や心筋梗塞の予防をしている

           ・脳梗塞を起こしたことがある

           ・冠動脈ステント治療を受けたことがある

     特にこの前には注意

           ・抜歯

           ・インプラント埋入

           ・歯周外科処置

           ・縁下でのスケーリング                     

    ② ビスフォスフォネート製剤‥・骨を増やして骨折の予防に使う薬。長期間服用している人は顎骨

                                                         壊死のリスクも。

          こんな人が飲んでいるかも 

          ・骨粗鬆症の予防をしている

          ・骨ページェット病の治療をしている

          ・骨折したことがある

          ・ステロイド治療をしている

        特にこの前には注意

          ・抜歯        

          ・骨隆起の切除術 ・インプラント埋入  

          ・骨縁下ポケットのSRP

          ・歯根端切除術

          ・歯周外科処置  

    ③ 抗てんかん薬・・・脳の興奮を抑えて、てんかんの発作を防ぐ薬。副作用で歯肉の増殖を招く。

          こんな人が飲んでいるかも

          ・てんかんの治療をしている

         *覚えておこう*

            ・歯肉増殖の予防と治療 フェニトインの長期服用による歯肉増殖は、炎症症状に乏しいのが特徴

             です。しかし、口腔の清掃状態が悪いと、歯肉は赤味を増し、炎症症状が生じてきますので

             よく注意してください。歯肉増殖は必ず歯のあるところに発症します。不適合の歯冠修復物や

             う蝕、歯石の沈着など、歯肉に刺激が加わらないように治療することが大切で、場合によって

             は、歯肉切除術を行う場合もあります。

     ④ カルシウム拮抗薬・・・血管の壁の収縮を抑えて血管を広げ、血圧を下げる薬。副作用で歯肉の増殖

                                            を招く。

            こんな人が飲んでいるかも

            ・高血圧の治療をしている

            ・虚血性心疾患の予防をしている

           *覚えておこう*

              ・Ca拮抗薬の中でもジヒドロピリジン系に注意

                降圧薬の中でもCa拮抗薬を選択する症例は多く、ニフェジピンやアムロジピンなどのジヒド

                ロピリジン系Ca拮抗薬は、その代表的な薬剤です。この両薬剤の副作用として、血管の拡張

                に起因する頭痛や、顔面紅潮、浮腫のほか、歯肉増殖があります。

 

〈まとめ〉

患者さんの方からこんな薬を飲むようになったなどと積極的に伝えてくださる方は多くはありません

が、診療中の会話の中では「最近入院した」とか「薬が増えて大変」などいろいろな情報を得られることが

あります。安全に歯科治療を受けていただくためにも、定期的な問診票の確認や、会話の中での情報を

元に患者さんの服薬状況を把握できるようにしていきたいと思いました。

                        衛生士  星島

  2020/01/08   ふくだ歯科
タグ:薬の影響

「バイオフィルムを管理する予防歯科」について、勉強会で発表して

う蝕の最新病因論

⒈ う蝕原性菌

     ミュータンスレンサ球菌は間違いなく最強のう蝕源性菌であるが、21世紀になって、ミュータンス

     レンサ球菌以外の酸産生菌も、う蝕発症に関わっていることが明らかになった。

     <20世紀の常識>

     う蝕原性菌

     ・ミュータンスレンサ球菌

     ・ラクトバチラス

      う蝕誘発性糖質

     ・砂糖(ショ糖)

     <21世紀の常識>

      う蝕原性菌

      ・ミュータンスレンサ球菌

      ・ラクトバチラス

      ・ビフィズス菌

      ・Scardovia wiggsiae 種

      ・Actinomyces 種

      ・Veillonella 種

       う蝕誘発性糖質

       ・発酵性糖質  

           ショ糖、ブドウ糖、果糖、調理デンプン

        砂糖(ショ糖)はミュータンスレンサ球菌が不溶性グルカンを作るために必要であるため、う蝕

        予防の食事指導は「甘い物を避けなさい」であったのである。しかし、新たにう蝕原性菌に加え

        られた細菌種は不溶性グルカンは作らず、歯面に付着したバイオフィルムの中で酸を産生する

        ため、ショ糖が制限されても影響は少ない。

 

⒉ う蝕原性バイオフィルムのMicrobial shift

     う蝕原性菌はショ糖だけではなく、他の発酵性糖質(ブドウ糖、果糖、調理デンプン)を摂取して

     乳酸などの有機酸を産生し、歯を溶かす。ショ糖が制限されても、その他の糖質摂取によって、

     バイオフィルムのpHは酸性に傾く。そして酸性環境を好む菌種が増殖しMicrobial shift が起こり、

     う蝕原性の高いバイオフィルムへと変化してしまうのである。

   「甘い物を避けなさい」の食事指導は変わらなければいけない。調理デンプンもMicrobial shift の要因

     となるため、麺類や粉物にも注意が必要。

 

⒊ う蝕の治療

    21世紀になって、う蝕という疾患は「脱灰と石灰化のバランスが偏っている状態であり、う蝕=

    う窩ではない」という考えが浸透した。脱灰因子と防御因子(脱灰を防ぎ石灰化を促進する因子)の

    間のバランス崩壊が、う蝕の発生原因である。 このバランス崩壊はバイオフィルムの周囲環境(特に

    栄養環境)の変化によるMicrobial shift が原因である。

    疾患の治療は病因除去である。う蝕の原因はMicrobial shift であるため、高病原化したバイオ

    フィルムを低病原性に戻すことがう蝕の治療である。つまり、脱灰因子を減らし、防御因子を増やす

    ことであり、削って詰めることではない。 改善すべき脱灰因子は、食事内容・回数(バイオフィルム

    栄養環境)とう蝕原性菌量(バイオフィルムの量)である。また、含嗽剤や唾液分泌刺激などにより

    バイオフィルムのpHを中和に向かわせる工夫も必要である。防御因子の強化には、フッ化物による

    歯質強化、クロルヘキシジンによる殺菌、フィッシャーシーラント処置、生活習慣指導、あるいは

    早期治療などの対応が有効である。

    Microbial shift

    バイオフィルムを取り巻く栄養、温度、嫌気度、pHなどの環境変化によって、細菌達にとって好ま

    しい生育環境がもたらされることにより起こる常在菌。Microbial shiftによりバイオフィルムと歯・

    歯周組織の間の均衡が崩れ、う蝕や歯周病が発症・進行する。

 

感想

    う蝕の予防には脱灰と石灰化のバランスが大切なことが分かりました。防御因子の強化ではフッ素

    塗布をよく行っていますが、患者さんの中にはフッ素を塗っていれば大丈夫と思っている方もいる

    かもしれないのでフッ素の効果に加えて普段の生活習慣、食事習慣についても少し触れていけたら

    と思いました。

                                     衛生士 松本

  2019/12/31   ふくだ歯科
タグ:虫歯予防