スタッフレポート

「なぜ、根面う蝕こそメインテナンスが大事なの?」について、勉強会で発表して

Part 1 押さえておきたい 根面う蝕の基礎知識

 症例で見る根面う蝕の特徴     

  根面う蝕は歯周病に併発している頻度が高く、一般的には高齢者 に多い疾患。    

 症例1 活動性(急性)の環状根面う蝕        

  う蝕は歯頚線に沿って進行し、ときには歯を取り巻いて環状う蝕 を形成する。抗う蝕性の違いで

  エナメル質を侵す頻度は少ないが、 直下の象牙質が侵されて遊離エナメル質となり、崩壊している

  こ ともある。    

 症例2 浅在性根面う蝕        

  う蝕の進行も歯冠部のう蝕と異なり、深達性となるよりも、むし ろ浅在性で複数面(広範囲)に

  広がる症例が多い。    

 症例3 部位により進行速度に差がある  

  比較的ゆっくりと進行するが、全身の健康状態等で急性化した場合、その速度は速い。

 高齢者の場合、歯髄腔も生理的に狭窄し、歯髄組織全体が退行変性に 陥っている傾向にあるので、

 病巣が歯髄腔に接近しても痛みを感じない ため、患者さんは気づいていないことが多い。また、

 両隣接面に発生して 進行すると、前歯小臼歯では破折する危険性が高くなる。    

 根面う蝕の臨床的特徴      

  進行形式       

  ・歯頚線に沿って進行       

  ・環状う蝕       

  ・浅在性       

  ・比較的ゆっくりと進行       

  ・健康状態によって急性化

 

Part 2 初期根面う蝕は修復せず、“管理”する    

 *“管理”=進行を抑制し経過観察すること      

  欠損の小さな根面う蝕に対しては修復処置ではなく、患者教育やフッ化 物塗布により進行抑制を

  図り経過観察をする“管理”という治療を行う。           

  ステージが進行して実質欠損が大きくなった根面う蝕に対しては、修復処置を行い、管理して

  いれば成績向上が期待できる。     

  う蝕が進行しすぎて通常の治療を行うと抜歯に至りそうなケースでは環境改善を図って進行を

  遅らせることを目的とし、非侵襲的に修復して経過をみる。

  (筆者:予想以上に良好な結果が得られている。)   

 *サホライド塗布の根面う蝕への効果     

  フッ化ジアンミン銀(サホライド)塗布は、銀によるタンパク固定とフッ化物による不溶性塩の

  生成により、象牙細管が閉塞されう蝕の進行 や象牙質知覚過敏が抑制される。さらに、齲蝕原生菌

  の付着やその増殖 (プラーク形成)も抑えられる。        

 *対処が難しくなる前に予防を   

  高齢者における根面う蝕リスクの判定とリスクの程度に応じた予防・管理法    

  リスク判定が高い場合の判定基準     

  ・過去1年間に2カ所以上のう蝕発生   

  ・根面う蝕の既往     

  ・多数の歯根面露出           

  ・比較的進行した歯周病     

  ・不良補綴(修復)物、義歯の装着    

  ・心身の活力低下     

  ・不良な口腔衛生状態          

  ・不十分なフッ化物使用     

  ・不十分な唾液流出量          

  ・不規則な受診     

 リスク判定が高い場合の予防・管理法     

  ・患者教育・指導            

  ・ブラッシング指導     

  ・食事指導・カウンセリング       

  ・フッ化物局所塗布     

  ・フッ化物配合歯磨剤の使用       

  ・フッ化物洗口     

  ・プロフェッショナルケア        

  ・補綴物の再製     

  ・1~2ヵ月に1回のリコール

 

【感想】

 根面う蝕は進行度合いによって、処置の仕方も変わってくる、“リスク”と“管理”を充実させるには

 患者さんをよく知ることが大切。      

                           衛生士 赤木

  2020/05/06   ふくだ歯科
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