【OHIとは…】
Oral Hygiene Instructionの略称。
プラークを除去することの意義、方法を患者さんに示し、口腔清掃指導を行うこと。
プラークの存在とその病原性を患者さんに説明することで、モチベーションを高めるとともに、
個々の患者さんに適したブラッシング法、歯間部清掃補助用具などの指導を行う。
【歯周治療の主役は患者】
初めに、歯周治療について理解してもらうことから始める。歯周病は自覚症状が少なく、罹患している
ことに気づきにくいため、「他人事」と捉えている方も少なくはない。そのような方に「あなたの口
の中は歯周病です。このまま放置していたら歯が抜けてしまいます。歯磨きでお口の中を改善しま
しょう」と伝えても、なかなか伝わらない。しかし、歯周病に罹患していることは伝えておかなければ
ならない。 まずは、歯周病に罹患していることを「自分事」として捉えてもらう。そのためには、まず
相手のことを知り、相手に合わせて話すことから始める。そうすると、患者さんは「自分のことを理解
してくれる方であれば、協力しよう」と考えてくれるかもしれない。私たちの伝え方により「自分事」
として捉えてもらい、興味・関心を持ってもらうことから始める必要がある。
① 性別・年齢・職業など個々の患者さんに伝わりやすい言葉(話し方、言葉遣い)を選ぶ
② 患者さんの反応はどうか、表現や言葉を観察することが大切
③ 相手に伝わったのかを確認する、このひと手間が次に繋がる
【プラークコントロール不良の3つの原因】
1. 患者さんの問題
1) 磨いていない
・どの時間帯で磨いているかを聞く
・生活習慣を変えることは容易ではないので、少しずつ回数が増やしていく
・ブラッシング時間を延ばす
2) 磨いているが、磨けていない
(ブラッシングが適当)
・ブラッシングの重要性から説明する
・「適当」から「その方に合ったブラッシング」を実践することで歯周環境がさらに良 くなることも
伝える
(テクニックの問題)
・性別や年齢、全身疾患なども考慮する
・リウマチやパーキンソン病、脳出血疾患などの手指の運動にかかわる疾患に罹患し ている、
進行している場合はプラークコントロールの低下がみられやすい
・ペングリップで把持した場合、利き手側の3~4番は歯ブラシを動かしにくいため、 磨き残しが
見られやすい
(ブラッシングの順番)
・ブラッシングの順番が定まっていないと、磨き残しが見られやすい
・同じ部位に炎症が起こりやすい方も、磨く順番を変えるだけで炎症が軽減すること もある
(ブラッシングの時間)
・就寝前はできるだけ時間をかけてブラッシングしてもらう
(ブラッシング時に歯肉に痛みがある)
・なぜ痛いのか、原因を見つける
(例)ブラッシングによる擦過で歯肉が傷ついている
↳毛先のやわらかいブラシを処方し、その場でいたくないかを確認する
次回来院されたときにも、「歯ブラシが使えたか」「痛みはなかったか」を確認
(ブラッシング時の出血が怖い)
・歯肉に強い炎症が起きている方に多い
・「出血=怪我」と思っているからブラッシングができない
・なぜ歯肉に炎症が起きているのか、なぜ歯肉から出血しているのか説明に繋げる
2. 歯ブラシの問題
1) 使用している歯ブラシが合っていない
・ヘッドの大きさ ・毛の硬さ ・毛先の形状
2) 適切な磨き方を知らない
3) 毛先が広がった歯ブラシを使用している
3. 口腔内の要因
1) 歯の問題
・歯石 ・不適合修復 ・補綴装置 ・歯列不正 など
2) 口腔領域の問題
・口呼吸 ・鼻炎 ・ドライマウス など
3) 生活習慣の問題
・生活習慣の変化 ・食生活の乱れ ・患者さん自身の問題 など
【「気づく」「認める」「褒める」】
・今まで、プラークコントロールが不良だった患者さんが努力してブラッシングを行い、改 善して
きたら、必ず「気づく」「認める」「褒める」を行う
・モチベーションが上がり、さらにプラークコントロールが良くなる
・すぐにプラークコントロールが良くならない患者さんがいることも理解して、その方に合 わせて
働きかけ続けることも大切
【伝わるOHIと伝わらないOHI】
(伝わるOHI)
①明確な目標設定
・「次の来院までに、この歯肉の腫れを引かせてみましょう」と伝え、それに合うブラッ シング指導
を行う
・引き続いて炎症が起きていれば、改めてOHIを行う
・目標があれば、患者さんがどこに向かえばいいのか明確になり、頑張ってもらえる
・行動変容を促しやすくなる
②患者さんのために実践
・生活背景やブラッシングスキルを把握し、それに合うオーダーメイドのOHIを行う
・無理強いはしない
・その日のプラークコントロールに囚われず、歯肉の状態を確認し、発赤・腫脹を見て判 断する
(来院直前のみ徹底して磨いていることがあるため)
・自分ができる歯科衛生士であることを証明するためのOHIではない
③シンプルな説明
・患者さんが興味・関心を持つまでは、ワンポイントアドバイス程度に留めておく
・シンプルな説明に努め、短時間の方が患者さんの記憶に残りやすい
・OHIを行う前に伝えたいことを一度自分の頭の中で整理しておく
(伝わらないOHI)
①目標を設定せず、だらだらと行う
②目的のないOHI、歯科衛生士の成績、自己満足のためのOHI(患者さんのためではない)
③説明が長い
【感想】
患者さんにTBIをするときにバリエーションが少なく、同じような説明を繰り返すことがよくあった。
炎症箇所ごとのTBIではなく、その患者さんのためのオーダーメイドなTBIを心掛けていきたいと思う。
TBIの時に、「褒める」ことは必ずしていたが、「気づく」や「認める」機会は少なかったと実感
できた。どのように指摘したら患者さんのモチベーションを下げずにアプローチができるかを意識して
TBIを行っていきたい。
衛生士 小鐵