1. 口腔マイクロバイオームはどのように形成されるか
口腔内には700種類以上の様々な細菌が集団を(コロニー)を形成しています。口腔マイクロ
バイオームの乱れは、う蝕や歯周病を引き起こします。つまり、う蝕や歯周病になっている人となって
いない人とでは、口腔マイクロバイオームが異なるということです。 今回は、赤ちゃんの口腔内に
細菌叢が形成されていく過程で、どのような要因が影響を及ぼすのかについて説明していきます。
ⅰ)母親と同じような細菌叢が形成される
母親の体に存在する細菌叢を構成するメンバーに対しては、赤ちゃんの体で免疫反応が起こらない
ように調節されています。 そのため、出生後に母親の細菌叢に似た細菌叢が形成されやすくなります。
つまり、母親の口腔の健康状態が赤ちゃんの口腔マイクロバイオームの形成に大きく関わってきます。
ⅱ)出産形態や歯の萌出との関わり
経膣分娩か帝王切開によって、子どもが最初にさらされる微生物の数が決定します。 また、乳児期に
母乳か人工乳か、おしゃぶりを使用しているか、していないかも関わりがあります。しかし、それ以上
に歯の萌出は大きな影響を与えます。 これはまだ研究段階ですが、健康的な細菌バランスに誘導できる
方法が分かれば、歯だけではなく、全身の健康維持に貢献できると期待されています。
ⅲ)遺伝と環境はどちらの影響が大きいか
乳幼児の口腔細菌叢の分析結果は、実子と母、養子と母のペアでの類似度に違いは認められず、遺伝の
影響は非常に小さいです。また、実子と養子の双方で、血縁のない女性と比較して母親との類似性が
高いことから、接触や環境の影響が大きいことが分かっています。 母と子どもの間の類似度は子どもの
年齢とともに増加し、ごく初期に観察された宿主遺伝の影響が時間とともに失われる傾向があります。
また、興味深いことに母親と同居の配信者の口腔細菌叢は母子ペアよりもさらに類似性が高いことも
示されています。 つまり、接触頻度と物品共有環境、およびその状況におかれている年数の長さがより
大きく影響することを示しています。
2. ディスバイオーシス(口腔マイクロバイオームの乱れ)
ディスバイオーシスの要因の1つに喫煙があります。今、人気の電子タバコにもディスバイオーシスを
促進する科学物質が含まれています。電子タバコの使用に伴う歯周病のリスクがあります。
3. ディスバイオーシスを防ぐ方法
口腔内硝酸塩が存在すると、口腔細菌の糖質発酵時に起こる口腔環境の酸性化を抑制できる可能性が
あります。硝酸塩はビーツ、ほうれん草、小松菜、レタスなどのに多く含まれます。これらの摂取が、
歯の健康に影響を与える長期的な影響を評価する必要があります。 まだ、解明されていないことも多い
ですが、この研究を進めていけば、将来は若いうちに口腔マイクロバイオームの検査を受けて頂くこと
で、その患者さんのう蝕と歯周病のリスクを知ることができるようになります。それを元に、患者さん
により適切な口腔疾患予防プランが立案できるようになるかもしれません。
【感想】
研究段階のことも多いですが、口腔マイクロバイオームに対しての理解が深まることで、科学的根拠に
基づいて、患者さんの口腔内へのアプローチをしていくことが出来ると思いました。現段階では、
どんな細菌叢を持った人と暮らすかで、自分の口腔内細菌叢が変化していくことが分かっています。
難しい話にはなるので、患者さんにお伝えするときはしっかり噛み砕いて、豆知識程度の雑談として
お伝えしていきたいです。
衛生士 福田