良好なプラークコントロールがう蝕や歯周病の予防と治療に最重要であることは周知の事実です。
プラークコントロールは、機械的プラークコントロールと化学的プラークコントロールに大別
されます。化学的プラークコントロールのなかでも、歯肉縁上に対しては洗口剤が用いられます。
1.洗口剤について ・国内で販売されている主な洗口剤は以下のとおりである。
製品名 発売元 有効成分 区分
*グルコン酸クロルヘキシジン(CHG)
コンクールF :ウエルテック グルコン酸クロルヘキシジン、グリチルリチン酸モノアンモニウム
医薬部外品
バトラーCHX洗口液 :サンスター グルコン酸クロルヘキシジン、グリチルリチン酸モノアンモニウム
医薬部外品
*塩化セチルピリジウム(CPC)
モンダミン ナイトクリア: アース製薬 セチルピリジニウム塩化物水和物、グリチルリチン酸ジ
カリウム 医薬部外品
モンダミン プレミアムケア :アース製薬 セチルピリジニウム塩化物水和物、グリチルリチン酸ジ
カリウム、トラネキサム酸 医薬部外品
ガム・ナイトケアリンス [ナイトハーブタイプ] :サンスター 塩化セチルピリジニウム、トラネキ
サム酸 医薬部外品
Systema SP-T メディカルガーグループ: ライオン歯科材 セチルピリジニウム塩化物水和物、グリチル
リチン酸ジカリウム、ℓ-メントール、チョウジ油 指定医薬部外品
クリアクリーン デンタルリンス ソフトミント: 花王 塩化セチルピリジニウム 医薬部外品
*塩化ベンゼトニウム(BTC)
ベンゼトニウム塩化物 うがい液0.2%「KYS」: 昭和薬品化工 ベンゼトニウム塩化物 医療用医薬品
*ポビドンヨード(PI)
イソジンガーグル液7% :塩野義製薬 ポビドンヨード 医療用医薬品、 第3類医薬品
*エッセンシャルオイル(EO)
薬用リステリン®︎オリジナル :ジョンソン・エンド・ジョンソン 1、8-シネオール、チモール、サリチ
ル酸メチル、ℓ-メントール 医薬部外品
アセス®︎液 :佐藤製薬 カミツレチンキ、ラタニアチンキ、ミルラチンキ 第3類医薬品
アセス®︎メディクリーン :佐藤製薬 カミツレチンキ、ラタニアチンキ、ミルラチンキ 第3類医薬品
・洗口剤の種類は主に歯面やバイオフィルム表面に付着して作用する薬剤(イオン系抗菌剤)とバイオ
フィルム深部へ浸透して作用する薬剤(非イオン系抗菌剤)に分けられる。
・洗口剤の効果は継続的な使用で初めて効果として現れる場合が多いことから、長期間にわたる
プラークコントロールのプログラムを作成し、その中で計画的に使用していくことが必要である。
2.歯面やバイオフィルム表面に付着して作用する薬剤(イオン系抗菌剤)
・水溶液中で強いイオン性を有し陽イオンを生じる薬品は、表面が負に帯電しているバイオフィルムや
細菌、さらに歯面や粘膜面に付着することで殺菌作用を発揮する。
・また、歯面等に吸着することでプラークの再形成を抑制する効果が期待される。
・グルコン酸クロルヘキシジン(CHG)、塩化セチルピリジウム(CPC)、塩化ベンゼトニウム(BTC)
などが該当する。
3.バイオフィルム深部へ浸透して作用する薬剤(非イオン系抗菌剤)
・非イオン性を示し、歯面やバイオフィルム表面への吸着は弱い。
・バイオフィルム内に浸透し、短時間に殺菌性を示す。
・ポビドンヨード(Pl)、エッセンシャルオイル(EO)、トリクロサン(TC)などが該当する。
4.グルコン酸クロルヘキシジン(CHG)
・グラム陽性菌や陰性菌を含め広い抗菌性を有する。
・歯面に吸着してプラークの再付着を抑制することが知られており、海外では洗口剤として広く応用
されている。
・グルコン酸クロルヘキシジンの歯周治療への応用に関しては多くの研究があるが、その濃度は0.12~
0.2%である。
・本邦ではグルコン酸クロルヘキシジンによるアナフィラキシーショック例が報告されたことから、
洗口液のグルコン酸クロルへキシジンは原液濃度で0.05%までに規制されている。実際にはこれを
希釈して使用するため、0.01%程度の濃度で応用されることが多い。
5.塩化セチルピリジウム(CPC)
・低濃度でも菌体に静電気的に結合することで効果があり、毒性や刺激は少ない。
・グルコン酸クロルヘキシジン同様に歯面に吸着してプラークの再形成を抑制し、歯肉炎の予防に効果
があることが報告されている。
6.エッセンシャルオイル(EO)
・殺菌作用の他に、抗炎症作用を示す。
・エッセンシャルオイルを主成分とした洗口剤にリステリン®があり、リステリン®︎のバイオフィルム
内浸透速度を調べた研究では、グルコン酸クロルヘキシジンよりも4.89倍早かったことが報告されて
いる。
まとめ
洗口剤にはプラークの形成を抑制する作用や、歯肉の炎症を抑制する作用があることはわかっています
が、あくまでも機械的なプラークコントロールの補助として考えるべきであることを留意して
おきましょう。 もっとも大事なのは機械的なブラッシングによってプラークを除去することです。
そのうえで、洗口剤を併用することでさらなる良好な口腔衛生状態を得ることができ、患者さんに
よってはそのおかげで歯肉炎を予防することができます。 また、グルコン酸クロルへキンジンに関して
は、日本で扱えるものは海外で効果があるとされているものよりも濃度がかなり低いため、同様の効果
は得られにくいことも忘れてはいけません。 以上の点を患者さんにも十分理解してもらってから、
適切な場面で適切な洗口剤を選択することで洗口剤の効果を最大限に引き出せるよう、エビデンスに
基づいた説明を行いましょう。
感想
患者さんから洗口剤について聞かれる事はよくあります。ふくだ歯科ではコンクールFを取り扱って
いるのでオススメする事が多いですが、患者さんに「市販の〇〇を使っているんだけど効果は無いのか
しら?」と質問される事もあり、はっきり回答出来なかった事もありました。 こちらから市販のものを
勧めることはあまり無いですが、患者さんが市販のものを使っている場合でもそれを否定せずにTBIや
アドバイスできるように効果や成分など理解しておきたいと思いました。
衛生士 星島