スタッフレポート

2023年2月

「第8回 頑張っている歯科衛生士への応援メッセージ」に参加して

山本早織さん(歯科衛生士)

『子供の笑顔が原動力~苦悩と葛藤から見つけた私らしくいられる場所~』

三宅ハロー歯科で勤務されています。

小児歯科学会認定歯科衛生士を取得され、医院で主任に昇格。育児と仕事を両立させるために努力

されたそうですが、最初は苦悩も多かったそうです。医院ではキャリアと年齢がちょうど真ん中で、

後輩のアイデアと先輩の意見の調和が難しいと痛感したこともあるそうです。得意な小児歯科診療で

医院に貢献したそうです。 小児歯科では、いかに泣かさずに、歯医者を好きになってもらうかは歯科

衛生士次第とおっしゃっていました。泣いている子供に対しても褒めるところを見つけ、3wayなどの

器具は「シャワー」と呼んだりして、子供に遊び感覚で楽しんでもらえるよう工夫されていました。

金中章江さん(歯科衛生士)

『歯科衛生士人生を振り返って』

MAEDA DENTAL CLINICで勤務されています。

院長から主任を依頼され、細かいところに気づいて動けるマネージャーのような主任を目指し、

スタッフとのコミュニケーションを大事にされているそうです。 歯周炎の患者さんが来院されたとき

は、歯科衛生士の治療方針を決め、どうすれば改善するか考えているそうです。患者さんのセルフケア

を確立させるために、意識改革で来るような声掛けを工夫してされていました。SPT移行時には、治療

開始時と現在の写真を見てもらい、モチベーションの向上をはかっているそうです。

髙原千尋さん(歯科衛生士)

『出会いに感謝し、学びについて考える』

山脇歯科医院で勤務されています。

育児と仕事に追われ、歯科衛生士業務に対してやりがいを感じられていない時期があったそうです。

そこで一度退職し、違った業種で働いたことで、歯科衛生士の仕事の魅力に気づくこともあったそう

です。復職し、自身の行いに対して成果がでるとやりがいが得られることを実感し、楽しんで仕事が

できているそうです。 患者さんとの信頼関係を築くために、話すペースとトーンを合わせ、緊張を和ら

げるようにし、治療時には、痛みを与えないように歯肉の状態や歯根の形態を意識して、スケーラーの

ブレードの太さを検討することや、挿入角度を注意しているそうです。

川崎律子先生

『臨床って楽しい!~しごとに夢中になれるエッセンス~』

東京の長谷川歯科医院で勤務されています。

歯科衛生士になり、26歳の時ご結婚され、退職されたそうです。その後復職し、大学の非常勤講師と

しても働かれていました。日本歯周病学会認定歯科衛生士、日本審美学会ホワイトニングコーディ

ネーター、日本口腔インプラント学会認定インプラント専門歯科衛生士の資格も取得されています。

「長い間一人の患者を見ていくことは、自分がやってきた治療やケアの結果を見ること」とおっしゃ

っており、これが歯科衛生士を長く続けているわけのひとつなのだそうです。

<感想>

小児対応に対して苦手意識があるので、褒めることや、楽しく治療できる工夫を取り入れたいと思い

ました。まだできないことや勉強しなければならないこともたくさんありますが、自分が先輩になった

時に、円滑なコミュニケーションや的確な治療ができるように努力したいです。治療後に悔しさや達成

感を感じることがあるのですが、今回の講演を聞いてそれが仕事のやりがいへと繋がるとわかった

ので、これを大事にして、経験を積んでいきたいです。

                                   衛生士 國只

  2023/02/23   ふくだ歯科

「P.g菌の増殖と上皮バリア」について、勉強会で発表して

1、P.g菌と鉄の関係

P.g菌は強力な歯周障害性を持つ代表的な歯周病菌だが、弱点は多い細菌種である。

・空気中の酸素に曝露される環境では生育できない

・pH6.0以下の酸性状態である環境では生育できない

・鉄分とタンパク質が必須

ヒトの体内には遊離の鉄イオンは存在しておらず、トランスフェリン、フェリチリン、ラクト

フェリン、ヘモグロビンなどの鉄結合性タンパク質と結合した状態で代謝あるいは保存されている。

これは細菌に鉄を奪われないための人体の知恵である。ヒト体内の鉄は細菌に利用されないように

しっかり管理されているにもかかわらず、P.g菌をはじめとする歯周病菌は血液中のヘモグロビンから

へミン鉄(鉄を含むポルフィリン)を摂取することができる。

2.上皮バリアの役割

皮膚は上皮バリアの代表例だが、粘膜を覆う上皮細胞も、私たちが歯周病菌との共生状態を維持する

ための重要なバリアである。歯肉上皮バリアは、バイオフィルムから歯周組織を守る物理的障壁である

とともに、細菌の栄養となる成分が、歯周組織から歯周ポケット内に滲出するのを防いでいる。

歯肉縁上バリアが機能している段階では、P.g菌をはじめとする歯周病菌と歯周組織との拮抗状態は

維持されており、歯周病の発症には至らない。炎症が進行して常にバリアが破られ潰瘍ができた時、

流れ出た出血を栄養としてP.g菌などの歯周病菌は増殖し、バイオフィルムと歯周組織の拮抗バランス

が崩れ、慢性歯周炎が発症する。

3.P.g菌は傷の治癒を阻害する

手や足の傷口は放っておいても治る。これは、潰瘍面周囲の上皮細胞たちが増殖し、潰瘍面を埋める

ように移動(遊走)して潰瘍を閉じる。ところが、歯周ポケット内の潰瘍は自然には治らない。

バイオフィルムの刺激によって慢性の炎症が続いているために、上皮バリアの損傷は止まらず、潰瘍面

の修復には至らない。そして、P.g菌が上皮バリアの閉鎖を阻害する。

細胞の足である接着斑はいくつかのタンパク質で作られている。このタンパク質の1つでも障害を

受ければ細胞は遊走しなくなる。P.g菌は上皮細胞内に潜入し、この接着斑の部分タンパク質を

分解する。そのため、細胞の接着斑は破壊され、細胞は遊走できなくなる。P.g菌に非感染部位では、

細胞が潰瘍面を埋めるように移動・増殖し、1~2日で再び均一な単層を形成する。しかし、P.g菌が

感染すると歯肉上皮細胞の、移動・増殖は阻害され、潰瘍面は埋まらない。これが歯周ポケットで

起きているのである。

4.歯周治療の目標は、歯周ポケットからの出血を止めること

歯周治療の目標は

・歯周ポケットを浅くする

・アタッチメントレベルの増加

・骨レベルの改善

・付着歯肉幅の増加

と言われる。

歯周ポケット内の潰瘍面から血液が供給され続ける限り、バイオフィルムの高病原性は維持し歯周炎は

進行する。歯周ポケット内の出血を止めるには、潰瘍面が細胞で埋められ上皮バリアが修復されること

が必要である。 基本治療で目指すことは、歯周炎発症までの過程を逆に辿り、バイオフィルムの病原性

を歯周炎発症前のものに戻すことだ。つまり、ポケット内の出血の停止である。ポケット内の潰瘍の

閉鎖により、歯周病菌への血液の供給を断ち、かつての低い病原性しか持たないバイオフィルムに戻す

必要がある。歯周ポケットのマイクロビオーム(常在微生物叢)を元の状態に戻し、「歯周病菌と

歯周組織の拮抗による共生関係」を取り戻すことによって、歯周状態も元の状態に戻っていく。

5.メインテナンスの目的

歯周病の症状が治まっていても、歯肉退縮や骨吸収によってプラークコントロールが難しくなって

しまった箇所は残っており、BOP陽性ポケットや、浅くならないポケットなど、再発してもおかしく

ない状態の場合もある。歯周病菌はそんな部位にバイオフィルムを蓄積させて成熟させようとして

いる。新しい部位にバイオフィルムが蓄積する前に壊してしまう必要がある。成熟化しているバイオ

フィルムを定期的に全て除去する。そうすることで高病原性化しつつあったバイオフィルムを低病原性

の状態に戻す必要がある。患者さんのバイオフィルムの病原性が高くなるタイミングには個人差が

ある。メインテナンスの間隔も患者さんごとに異なるはずだ。わずかな蓄積でもバイオフィルムが成熟

し高病原化するのか、そうでないのかを見極めるために、歯周治療が終わってから1ヶ月後、2ヶ月後、

3ヶ月後と徐々に間隔を空けて患者さんの歯周状態を観察するべきである。そのためには、患者さんの

セルフケアの状態を確認することも大きな目的である。症状がないことへの安心感から口腔清掃への

モチベーションが下がっていないか、加齢や疾病によってブラッシング技術や意欲が低下していないか

を確認する。そして、患者さんの生活環境や生活習慣の変化を把握して、歯周状態に良くない因子の

除去に努める必要がある。

6.感想

歯周病を完治させることはできないが、出血を抑えることで、歯周病が発症するためのバイオフィルム

が低病原性のものになり、歯周病を抑えることができるということが分かった。メインテナンスのTBI

を教えてもらい、出血がしやすい原因なども理解できたので、それを用いた上で、問診やメインテ

ナンス時の口腔観察を努めていきたいと思った。患者さんがセルフケアだけではなく定期検診に通って

もらい、さらに自分の口腔内を綺麗に保つモチベーション向上のため、炎症の指摘だけのTBIでは

なく、歯周病についてしっかりと理解してもらえるよう、口腔状態を伝えていきたい。

                        衛生士 小鐵

  2023/02/05   ふくだ歯科
タグ:歯周病