スタッフレポート

創傷治癒に関係する術後の食事について、勉強会で発表して

術後はなぜ食事に注意を払うの?

 歯周外科手術後の最初の週は、術後の創傷治癒を促す環境が大切。それには局所部位が「清潔である事」「適度な水分を保つ事」「免疫機構が正常に働くのを助ける為に不必要な刺激をできるだけ排除する事」が重要。このような環境を確保する為にも、術後の患者さんには飲食に注意を払って貰う必要がある。例えば、①硬い物は避ける。②術後すぐは熱い食べ物を避ける。③小さい形状の食べ物を食べる。④バランスの取れた食事を摂取する。⑤ビタミンCを多く含んだ食品を摂取する。⑥辛い物は避ける、等。

その裏づけは?

 

①“硬い物は避ける”→手術した部位に機械的刺激を極力少なくする為。硬いフランスパンやお煎餅で新たな傷を創ったりする例はよく見かける。(ピーナッツやアーモンド、硬い林檎、柿等も同様)

②“術後すぐは熱い食べ物を避ける”→術後暫くは、局所麻酔が効いている。熱い物を飲食して、口腔粘膜に火傷を負っても気がつかない。不必要な火傷によるダメージを防ぐ為には重要。

③“小さい形状の食べ物を食べる”→大きな物を口の中で噛み砕く為には、口腔周囲筋を十分に使わなければいけない。しかし、歯周形成手術(ぺリオドンタルプラスティクサージェリー)等のデリケートな手術の後では、ちょっとした筋肉の動きで創傷治癒に影響が出る事がある。そこで、小さな形状にして口腔周囲筋の過度な運動を避けて貰いたい。(縫合糸にも影響が出る事がある)

④“バランスの取れた食事を摂取する”→創傷治癒には、体に元来ある治癒の為の代謝機構、免疫機構等が正常に機能する事が不可欠。しかし、この機能に影響を与える物がある。年齢、性差、器質的疾患の有無、代謝障害、薬物の種類、生活習慣、精神的傾向等。妊娠時や月経時、或いは更年期等、女性ホルモンの変動が顕著な場合も影響を及ぼす。そこでバランスの取れた食事や栄養のある食事が大切になる。これらの食事は、体の生理学的な働きを助け、正常な創傷治癒に繋がる。

⑤“辛い食べ物は避ける”→香辛料には抗酸化物質(活性酸素を消す働きをする物質で、多くの疾患の治療に使われてきた)や、疲労回復、創傷治癒、の促進、血管新生の調節、抗がん作用等の効能がわかっているが、別の角度から香辛料を見ると、レッドペッパーの摂取により体温の上昇がみられたという報告がある。熱の生成が創傷治癒にどう影響するかまだはっきりとはわかっていない。ただ、「炎症で起きる熱の生成」と「辛い食べ物を食べて起きる熱の生成」は様相が異なるという事は考えられる。沢山の報告がなされているが、いずれも研究段階のもので、創傷治癒時の患者さんに勧められる段階にはまだ達していない。できるだけ局所の刺激を少なくしたいので、辛い食べ物は好ましくないといえる。

⑥“ビタミンCを多く含んだ食品を摂取する”→結合組織を構成しているコラーゲン繊維は、300以上のアミノ酸の配列でできている。組織が治癒するには、アミノ酸が正しく決められた順番に並んだ状態でなければならないが、それにはビタミンCが必要。抗酸化物質であるビタミンCを多く含んだ食品を摂る事で組織のダメージを防いでくれる。

 

<感想> 術後の患者さんに聞かれる事がある為、今回の内容をお伝え出来ればと思った。辛い物に関しては、個人によって異なったり、まだ研究段階という事なので、今後も情報収集(他の件でも)していきたい。                           ・                                                       衛生士 千田

  2014/02/17   ふくだ歯科
タグ:創傷治癒