「令和のカリオロジーアップデート講座」を読んで
う蝕原因菌に関するQ&A
Q1 う蝕原因菌はミュータンス連鎖球菌だけ?
→× う蝕原因菌の種類は非常に多い
昭和の常識 う蝕原因菌はミュータンス連鎖球菌とラクトバチラスだけとされていました。
令和の常識 ミュータンス連鎖球菌とラクトバチラスが最強のう蝕原因菌だが、この2つの菌種
ほど強い酸を出さない菌種もう蝕原因菌のリストに加えられました。
Q2 歯肉縁上と歯肉縁下のプラーク細菌の種類は同じ?
→× 歯肉縁上にはう蝕原因菌が、歯肉縁下には歯周病原性菌が住む。
昭和の常識 プラーク細菌叢の解析は細菌培養法でしたが、実際には培養できない細菌種の方が
はるかに多い状況でした。特に歯肉縁下には空気中では培養できない嫌気性菌 (酸素
を嫌う菌) が多く生息していたため、歯肉縁上と縁下の細菌叢の違いについてよく
わかっていませんでした。
令和の常識 プラーク細菌のDNA (デオキシリボ核酸)やRNA (リボ核酸)の塩基配列をすばやく判別
する画期的な細菌検査法の登場により、プラーク細菌叢の解析が一気に進みました。
その結果、歯肉縁上と縁下では性質の異なる細菌種が生息していることがわかり
ました。
Q3 う蝕の原因は砂糖だけ?
→× う蝕の原因は砂糖だけでなく発酵性糖質。
昭和の常識 う蝕の原因は砂糖と考えられていました。
令和の常識 う蝕原因菌は発酵性糖質(ショ糖、ブドウ糖、果糖、調理でんぷん)を摂取して酸を
産生します。
Q4 う蝕原因菌の母子伝播は絶対に避けるべき?
→× それほど神経質にならなくてもよい。
昭和の常識 う蝕原因菌は感染の窓と呼ばれる生後19か月~31か月の期間に両親から伝播すると
言われていました。
令和の常識 う蝕を発症させるすべての細菌種の伝播を防ぐのは難しい。食事指導やフッ化物の
使用、適切なブラッシングで発症が予防できるため、それほど神経質になる必要はない
という考えが広がっています。
Q5 口腔細菌叢はつねに一定?
→× 種は変わらないが、菌量が増える細菌種と減る細菌種がいる。
昭和の常識 口腔細菌叢は長い時間の流れの中で絶えずゆっくりと変化し続けると考えられていま
した。
令和の常識 菌量の比は頻繫に変化します。
Q6 落としやすいプラークと落としにくいプラークに違いはある?
→〇 プラークの粘着性はう蝕原性に関係あり。
昭和の常識 すぐ落ちるプラークとなかなか落ちないプラークの違いまでは分かりませんでした。
令和の常識 バイオフィルムのマトリックス(基質)として、微生物を包み込み、歯面に固く付着
し、酸を内包します。なかなか落ちないプラークは歯面に強固に付着できるマトリック
スで出来ているという違いがあることが分かりました。
Q7 ブラッシングは食後30分後が歯に優しい?
→× ブラッシングは食後すぐがいい。
昭和の常識 ブラッシングは1日3回、食後3分以内に、3分間磨くでした。
令和の常識 平成では、食後すぐに歯を磨くと食事中に表層脱灰されたエナメル質を傷付けるため、
唾液による再石灰化で表層脱灰が修復される時間を置いた方がいいとされてましたが、
これは酸蝕症に関する話でした。う蝕予防の目的は、酸を産生する細菌のエサとなる
発酵性糖質を取り除いて、酸を出させないようにすることのためブラッシングはすぐに
するほうがいいとされています。
Q8 ブラッシング後に口はすすがなくてもいい?
→〇 フッ化物入りの歯磨剤を使った後はすすがない。
昭和の常識 よくうがいして歯磨剤は口腔内に残さないのが当たり前でした。
令和の常識 日本歯科医師会は歯磨剤に含まれたフッ化物の効果を最大限に発揮させるため、少量の
水で1回だけのすすぎをすすめています。
感想
学生時代に学んだことも医療は日々進化していくため、古い情報を患者さんに誤って伝えないよう更新
していく情報をこれからも取り入れ伝えていこうと思いました。
衛生士 岡崎