〈鉄分とPg菌〉
レッドコンプレックス(特にPg菌)には栄養素として鉄分が不可欠である。Pg菌は、血液中のヘモグ
ロビンからヘミン鉄を手に入れる。しかし、健康な歯肉溝や出血を伴わない歯周ポケットには血液が
ないため、ヘミン鉄を摂取できない。この栄養不足の状況下では、Pg菌は歯周組織に定着していても
増殖することは難しい。増殖できても病原性は低いため、歯周炎は起こらない。
〈歯周組織を感染から守る上皮細胞〉
上皮細胞はバイオフィルム細菌から歯周組織を守る物理的障壁であるとともに、細菌の栄養となる成分
が歯周組織から歯周ポケット内に滲出するのを防いでいる。また、上皮細胞表面の自然免疫レセプター
が細菌を感知し、上皮細胞から免疫物質や抗菌物質が分泌される。
〈プロービング時の出血は上皮細胞が壊されたサイン〉
口腔清掃不良、あるいは宿主抵抗力の低下によって歯周組織に炎症が生じると、歯肉内縁上皮細胞が
剥がれ落ち、潰瘍面ができる。(潰瘍とは、上皮が剥がれてなくなった状態のこと)そのため、潰瘍面
に露出した毛細血管から歯周ポケット内に血液が常時供給されるようになる。
この血液は、プロービング時の出血、あるいはブラッシング時の出血として観察される。
〈ブラッシング時の出血は歯周病発症のサイン〉
血液を供給された歯周ポケット内のPg菌などの歯周病菌は、赤血球のヘモグロビンを分解して、ヘミン
鉄を菌体内に取り込み、さらに血清タンパク質を栄養として大幅に増えバイオフィルムの病原性を一気
に高める。バイオフィルムの病原性が高まると、歯周病菌と歯周組織の拮抗バランスが崩れる。
この時が歯周炎発症の瞬間である。
〈上皮細胞を修復する方法〉
歯周基本治療によって歯周ポケットの出血を止めることができる。歯周病菌の細菌量が減れば、
歯周組織の創傷治癒力がバイオフィルムの病原性を上回る。そして、潰瘍面の閉鎖が始まり、出血が
止まる。スケーリング、ルートプレーニング、生活習慣指導、メインテナンスを行う。
〈感想〉
プロービング時の出血は炎症のサインということが改めてわかったため、検査時に見落としがないよう
に気を付けたい。そして、患者さんの口腔内状態から高リスク部位を見極め、それぞれの性格に合った
TBIができるようになりたい。歯科では専門用語が多く使われるが、患者さんからするとなじみのない
言葉が多いと思われる。今回学んだこともわかりやすく嚙み砕いた言葉で説明ができるように、語彙を
増やしていきたい。
衛生士 國只