スタッフレポート

「小児の歯科保健指導に役立つ・生かす15の食育知識」について、勉強会で発表して

①食育は知育・徳育・体育の基礎

食育は、知育・徳育・体育のいずれにもつながるものであり、それらの基礎をなすというとらえ方が正しい。

 

②幼児期の食育 7つの目標

(1)食事のときにお腹がすくリズムになっている子ども

(2)食べたいもの、好きなものが徐々に増えている子ども

(3)上手に噛むことができる子ども

(4)親や周りの大人と一緒に食べたいと思える子ども

(5)食事づくり、準備にかかわる子ども

(6)食べ物を話題にする子ども

(7)年齢相応の食具が使え、食事のマナーが身についている子ども

 

③学童期・思春期の食育 5つの目標

■学童期~食の体験を深め、食の世界を広げよう~

(1)1日3回の食事や間食のリズムがもてる子ども

(2)食事のバランスや適量がわかる子ども

(3)家族や仲間と一緒に食事づくりや準備を楽しむ子ども

(4)自然と食べ物とのかかわり、地域と食べ物のかかわりに関心をもつ子ども

(5)自分の食生活を振り返り、評価し、改善できる子ども

■思春期~自分らしい食生活を実現し、健やかな食文化の担い手になろう~

(1)食べたい食事のイメージを描き、それを実現できる子ども

(2)一緒に食べる人を気遣い、楽しく食べることができる子ども

(3)食料の生産・流通から食卓までのプロセスがわかる子ども

(4)自分の身体の成長や体調の変化を知り、自分の身体を大切にする子ども

(5)食にかかわる活動を計画したり、積極的に参加したりすることができる子ども

 

④一番大切なのは楽しく食べる子どもを育てること

もっとも大切なことは、子どもたちが「がんばって食べる」ことで前述のような子ども像を実現させるということでなく、「楽しく食べる」ことで実現させるということ。

 

⑤食は五感すべてを同時に使う唯一の行為

食は5大栄養素(たんぱく質・脂質・糖質・ビタミン・ミネラル)という物質的なものだけでなく、五感に働きかける情報を与えてくれる。食からもたらされた五感情報を受け取った脳に、「心」「知識・スキル」「体の機能」のプログラムがつくられる。

 

⑥楽しく食べるために知っておきたい食欲の仕組み

子どもの食欲を決める最大の因子は、血液中ブドウ糖の濃度(血糖値)である。脳にある満腹中枢と摂食中枢が常にこの血糖値を測っていて、血糖値が下がってくると摂食中枢が感知して食欲をわかせる。食事をとって血糖値が上がると、満腹中枢が感知して食欲を抑制する。これが食欲の仕組みである。

 

⑦食事時に空腹になる血糖値のリズムをつくろう

 

⑧夕食を楽しく食べるためのおやつのとり方

子どもの血糖値を上げるのに必要なブドウ糖(デンプン)はほんの数グラムである。帰宅後(午後3時以降)の夕食前におやつを食べてしまうと、血糖値が上がり脳は食欲をなくしてしまう。

 

⑨「10分早起き・簡単お手伝い」で朝食が楽しくなる

朝、人は血糖値が低くなっているが、脳が目覚めていないと摂食中枢が働かないため食欲を感じない。起きてから朝食までの間に、脳が覚める働きかけが必要になる。そこで、10分だけ早起きをして子どもに食事づくりの手伝いをしてもらう。食事づくりは五感すべてを使うため、多くの刺激が脳に入り、脳は早く目覚める。こうすることで、朝食を食欲がある状態でおいしく食べることができる。

 

⑩早寝・早起き・楽しい朝ごはんで脳のエネルギーを

糖質は最大のエネルギー減でありながら、蓄えがきかないという特徴をもっている。そのため朝食をとらないと体を動かす元気がでず、思考力や集中力もなくなる。

 

⑪楽しく食べられる食事の時間は30

食欲が維持できるのは、食事を始めてからおよそ30分間である。「ゆっくり食べ」と「早食い」のどちらのケースでも、指導・改善は食べ始めの早い時間帯に具体的に行うのが効果的。適量の食事をよく噛んで、30分くらいで楽しくいただき満足する食習慣をつくっていく。

 

⑫食のプラス情報で食べ物が好きになる

子どもたちに好きな食べ物を増やしていくには、第1においしい食事を用意すること。色よく形よく、おいしく香りよく調理して、より上質の五感情報を子どもたちに与える食事をする。

第2に食事の雰囲気が大切である。子どもたちは食事をしながら、その場の雰囲気も目や耳から得て、五感情報に結びつけ一緒に記憶している。さらに、大人がおいしそうに食べることや、言葉かけ(おいしそう!など)もプラスの情報として重要である。

 

⑬楽しく食べて意欲的になる脳の仕組み

楽しく食べている子どもの脳では、脳内物質のβ-エンドロフィン(気持ちを楽しくしてくれる物質)とドーパミン(前向きな気持ちにしてくれる物質)が分泌される。食事を楽しく食べれば、その後、意欲的な時間を過ごすことができる。

 

⑭食のプロセスに関わることで食が好きになる

脳にある扁桃体という器官で、その食べ物が安心かどうかを判断基準として好き嫌いが判断されている。しかし、「子ども自身が生産から口に入るまでの食のプロセスに関わること」で扁桃体に安心情報が送られ、食べ物を受け入れることができるのである。

 

⑮口中調味を知って味の世界を広げる

日本では、ごはん、おかず、汁物を交互に食べる「三角食べ」が奨励されている「三角食べ」では、口の中で自分の好きな味をつくり出すことができ、これを「口中調味」という。ご飯にどんなおかずをどれくらい合わせるかによって、味の楽しみを無限に広げることができる。これも、食の楽しみの1つと言える。

 

《まとめ・感想》

朝食の欠食、栄養素摂取の偏り、肥満あるいは痩せの増加、上手に咀嚼できない子どもの増加など、子どもの食をめぐっては様々な問題があり、将来の健康への影響が心配されています。そこで、口腔の専門家である歯科衛生士には、口腔内だけでなく、口腔を通して子どもの健康な身体、心の成長に関わることが期待されています。今回のレポートをきっかけに、子どもの食育の基本的な考え方を学び、歯科衛生士としてできることから取り組んでいけたらなと思います。

                                                         衛生士 関口 

  2013/12/01   ふくだ歯科
タグ:小児