スタッフレポート

2017年7月

「その消毒・滅菌法 あなたは根拠がいえますか?」について、勉強会で発表して

1. あらゆる器具はオートクレーブに入れなければならない?

        それぞれの器具の性状や用途に応じた“許容範囲”の消毒・滅菌と“高度な滅菌”に分類することは、

        器具の劣化や破損を最小限にできるとともに、業務を効率化し、除菌の信頼性を維持するうえ

        でも役立つ。

        除菌のレベル

        体腔内に貫通する(直接体内に接触あるいは貫通する)器具  ⇒ 滅菌   

                外科用器具、 根管治療用器具

        体腔内に貫通しないが生体の表層に接触する器具       ⇒ 消毒  

             基本的に皮膚や粘膜あるいは歯の表層にのみ使用する器具  

        *歯周ポケット内は上皮で覆われているために体腔外とみなす。

2. 加熱すれば滅菌できる?

        生息するのに不都合な環境になると“死んだふり”状態になる菌がある。この“死んだふり”状態の

        細菌を「芽胞」と呼ぶ。芽胞になると毒性を秘めたままで高熱や水にも耐性を示すようになる

        から厄介である。これが目覚めると毒性を放つため、器具に付着した芽胞が至適温度に達した

        のに気づかないまま、臨床で、特に創面に使用すると、生死に関わる重篤な感染症を引き起こす

        ことがある。

        オートクレーブでは真空下で高温になるため、細菌のタンパク質が凝固することにより芽胞や

        プリオンなども死滅させることができる。しかし、オートクレーブ庫内を定期的に清掃して

        いない場合には、残留したある種の細菌は、乾燥時に芽胞を形成して生き残るので、乾燥期

        にも真空化できるオートクレーブが芽胞対策には必須。

3. B型肝炎、C型肝炎などの感染者に使用した器具は特別扱いすべき?

        誰がウイルスを保有しているか不明だから、分別して特別扱いすることは意味がない。 すべての

        使用済み器具はできるだけ速やかに医療用高温洗浄器で洗浄し、体腔内で使用する器具であれば

        その後に滅菌バックで包填して高圧蒸気滅菌を行う。

         B型肝炎ウイルスもC型肝炎ウイルスもエンベロープ(外殻)あるが、石けんを使用することで

         エンベロープは破壊できる。十分な洗浄が一番効果的。  

4. 薬液消毒には本当に消毒効果がある?

        除菌剤に求められる条件として

   さまざまな細菌に効果的であること

        人間や動物に毒性がないこと

        環境に及ぼす影響が少ないこと

        浸透性があり、有機質によって不活化されない

            ↑    

           上記すべての条件を満たす除菌剤は存在しないため、条件のうちいくつかを 満たすことで

           妥協するしかないというのが実態。

5. 消毒・滅菌が終了した器具は紫外線ボックスに入れなければならない?

        そもそも紫外線が当たらなければ効果なし。

        消毒・滅菌後に紫外線ボックスにいれておくという方法は、気休めと、患者さんへのパスフォー

        マンスにはなるものの、紫外線による消毒・滅菌効果を期待するものではない。

                       消毒・滅菌業務の無用なストレスを減らす3原則

                                「直接器具に触れない」

                                「過剰な消毒・滅菌の繰り返しを避ける」

                             「本当に効果がある消毒・滅菌だけを行う」

【感想】

  消毒・滅菌は、菌のレベルや器具の種類によって使い分けるのは常套です。使用する前段階で、

       正しい使い方を知っていないと効果はありません。慣習にとらわれず、疑問に思った時は、資料

       の再確認、情報交換などしていく必要があると思いました。

                             衛生士 赤木

  2017/07/26   ふくだ歯科

医療安全について、勉強会で発表して

医療安全とは、リスクマネジメント(危機管理)のことです。リスクマネジメントの目的は、「医療事故

防止の活動を通して、医療の質を保証する」ことにあります。医療機関に内在するリスクを管理し、

「患者の安全を確保する」ためのもので、質のよい医療サービスを提供するうえで欠かせません。

医療安全ができるかぎり確保するためには、リスク要因の背景因子を十分に理解し、対策を講じておく

必要があります。また、基本的な臨床知識を応用し、問題解決できる能力を日頃から養っておくことも

大切です。

医療安全とは、患者さんを守るためだけのものではなく、 歯科医療従事者、ひいては歯科医院を守る

ためのものでもあります。

医療事故とは、医療の全過程において発生する傷害(人身事故)のことを指します。

過失の有無に関わらず、医療に関する場所で起きたすべての事故を含みます。

インシデント

「医療上で患者に起こった、もしくは起こりそうになった好ましくない事象のすべて」のこと。

誤った医療行為が行われたが事前に発見されて事故には至らなかった「ヒヤリ・ハット」、

事故は発生したが患者や医療従事者に傷害を及ぼさなかった「ニアミス」もインシデントの一部

として定義せれています。

アクシデント

トラブルが発生し、患者さんに何らかの傷害(有害事象)が生じた場合のこと。

医療過誤

医療従事者に過失のある医療事故のこと。

医療安全には「医療事故や紛争(クレームや訴訟)を発生させないための予防策」「医療事故や紛争が

発生した場合の対応策」が含まれます。具体的には、技術を向上させる、医療機器を安全に管理する、

院内感染対策を行うといった医療技術(テクニカルスキル)だけでなく、ヒヤリハットの報告や、患者

さんへの誤解のない説明、違いを察知する観察力といった非医療技術(ノンテクニカルスキル)もあり

ます。

2009年7月の英国会議「患者安全」報告書によると、「ノンテクニカルスキルの訓練により、医療

エラーを50%減らせる」と明記されています。ノンテクニカルスキルには「考える力」「伝える力」

「決める力」「動かす力」の4つの体系があり、これらは「ノンテクニカルスキルの向上に必要な

要素」のすべてに影響します。

〈まとめ〉

「歯石をとったら歯がしみた」「説明を受けていない」などの不満もインシデント事例にあげられ

ます。慣れてきたり、忙しかったりすると診療の効率を優先しやすいですが、事前に予測される状況

について丁寧に説明し理解していただくことが大切だと思いました。医療安全について正しい知識を

もち、日々の業務を見直していきたいです。

                              衛生士 関口

  2017/07/05   ふくだ歯科
タグ:医療安全