「金属アレルギー・治療前に知っておきたいこと」について、勉強会で発表して
局所性の金属アレルギー・・・ネックレスやピアス等が直接触れる部分が局所的に赤くなる
全身性の金属アレルギー・・・原因とは離れた場所(手や足等)に症状が出る。歯科金属アレルギー。
歯科金属アレルギー
口腔内に存在する金銀パラジウム合金等が原因で、口腔内や皮膚に炎症が起きる疾患。
50歳代女性に多い。
しかし、皮膚に症状が出る原因は山のように存在し、歯科金属はそのごく一部にしか過ぎない。
歯科金属を除去しても5割程度の患者さんしか治らないという報告もある。
皮膚科と連携し、アレルギーの原因を把握する。(パッチテスト)
パッチテストで歯科金属に陽性反応が認められた場合、原因とされる歯科金属を除去していく。
しかし、歯周病等で歯茎に炎症がある場合、体内に金属イオンが取り込まれる確率が高まり、
皮膚症状を悪化させる場合がある為、先に歯周治療を行う。
除去時にはラバーダムを用いて患部を分離し、粉末が飛散しないように配慮する。金属片が歯茎に
飛び散ると、一時的に皮膚症状が悪化することもあるが、時間とともに治ることが多い。
置換される主なアレルゲンフリー材料
セラミック、レジン、CAD/CAMにて修復治療。置換後、皮膚症状が改善していくかをチェック
するが、すぐに改善する方の割合は少なく、2年以上かかる方もいる。
インプラント含め、チタンはアレルギーを起こしづらいと言われているが、インプラント埋入直後に
皮膚トラブルが起きた患者さんが何名かおり、パッチテストでは陰性と出たが、その後インプラント
を除去した結果、全員の皮膚症状が改善した報告もある。(ドイツ)
チタンはパッチテストの精度がよくないのが現状とされている。
歯周病と関連する皮膚症状
歯科と関連する皮膚症状として代表的なものが「掌蹠膿疱症」。手の平や足の裏等に小さな水ぶくれが
でき、良くなったり悪くなったりを繰り返す疾患。口腔内の炎症と関係していて、歯周病を治療して
健康な状態をキープできれば治るかもしれないという報告がされている。
メインテナンス時に把握しておきたいチェック項目
1. 修復物の不適合・・・その隙間に唾液等が溜まり、腐食が起こりやすい。腐食が起こると金属イオンが
溶け出してアレルギーを起こしやすくしてしまう。
2. 修復物の粗造面・・・粗造面はイオン化しやすいと言われている。歯科医師が滑沢にするか研磨する。
3. 炭酸飲料の頻回摂取・・・まだ研究段階だが、炭酸飲料は金属の腐食を促進させる可能性があると
言われている。
4. 金属製品を身に着けている部分に変化はないか・・・その皮膚周囲が赤くなっている場合、将来、
歯科金属によるアレルギーを発症しやすくなる可能性がある。そのリスクを伝え、治療が必要
にならないようにメインテナンスを続けて歯を守ることが大切だと伝えよう。
万が一、将来修復が必要になった際は、修復物には金属以外を用いた方が良い事を説明する。
感想
皮膚にトラブルを起こす原因は、洗剤等の日用品や化粧品、植物、食物と様々なものがあり、歯科
金属はそのごく一部だということだが、皮膚科で診断されたのか等、患者さんへの問診を慎重に行い
たい。金属除去となれば、ラバーダム防湿や口腔外バキュームでしっかり対応していきたい。
衛生士 岡本