顎関節症について、勉強会で発表して
近年、増加しているといわれる顎関節症。時々痛みがあったり、音が鳴ったりするけれど、どう対処
したらいいのか分からないということはありませんか。日常の何気ない動作や習慣を見直して、顎の
負担を減らすポイントを知ることは大切です。
「顎関節症」とは?
「顎の関節が痛い、顎の音が鳴る、口が開きにくい」といった症状を中心とした「慢性疾患群の総括
的診断名」つまり、症状によって付けられた名前である為、人によって様々な原因があります。
顎関節症に起因する因子
①かみ合わせ…入れ歯が合わない、抜歯したまま放置など
②関節円板の異常…骨と骨の間のクッションの役割が弱まる。
ポキポキ、コクンコクンという音(クリッキング)の原因に
③異常習癖・筋の過剰活動…かみしめやくいしばり(ブラキシズム)、片側で咀嚼するなどが問題に
④心理学的な因子・ストレス…③の筋の過剰活動を引き起こすことにつながる
⑤外傷(けが)
⑥関節の過伸展性(伸びやすさ)
⑦神経系の異常
⑧全身的因子…リウマチ、多発性関節炎など
口の使い方
痛みが強い場合や口が開かないような場合には堅い食べ物や、片側だけで咀嚼すること、不用意な
あくびを避ける。
カラオケなどで長時間大きく口を開けて歌ったり、吹奏楽の演奏などで口や頬の筋肉を緊張させる
ことも顎の負担となる為、症状が出たら控えるようにする。
姿勢
猫背、長時間のパソコン操作や自動車の運転などで、頭が前に傾いた姿勢になると、首の後ろの筋肉
が緊張を起こし、顎関節症だけでなく、緊張性頭痛の原因にもなります。
睡眠時の姿勢→高い枕や硬い枕で顎が押さえられると顎に負担がかかる為、要注意。
首を曲げる動作→ほおづえをついたり、電話を肩と頬に挟んで話したりすることも顎に負担がかかっ
てしまう。
ストレスとの関連
不安や怒りなどの情動的な問題があると歯ぎしり、食いしばりが増えて顎の筋肉が疲労し痛くなる。
特に睡眠中のかみしめは起きているときの数倍の力がかかる為、目が覚めたときに 口が開かない
こともある。
歯ぎしりや食いしばりはストレス以外にもかみ合わせの問題や、重いものを持ち上げることなどでも
生じます。
こんな思い込み、勘違いをしていませんか?
1.症状があるからといって全てを病気ととらえる必要はありません。
非患者集団の調査でもかなりの人に症状を認めているものの、積極的な治療が必要なのは4~
7%といわれています。他は一時的で自然に症状が消えるもの。また、原因を全て取り除くこと
は通常の生活の中では不可能。あまり気にするのもストレスとなる為、心配しすぎないことも
大切。
2.かみ合わせの問題も顎関節症の原因の一つではありますが、歯並びが悪いからといって必ずしも
顎関節症になるわけではありません。すぐに歯を削るなどして治そうとするのではなく、まずは
保存的な治療を試します。
3.抜歯をしたまま長期間放置したり、虫歯の治療をせずに放置しておいたりすると、想像以上に歯
が移動し、かみ合わせがおかしくなってしまいます。そうすると、片側で噛むなど咀嚼機能や、
顎関節にも影響します。歯科医院での治療を済ませましょう。
4.女性に多いといわれている顎関節症ですが、実は症状の有無には男女差はないという調査結果が
あります。ただし、治療を受けるのは圧倒的に女性が多いという事実は、女性の方が音や痛みが
強く出たり、健康に対する意識が高いといったことにも関係があると考えられます。
治療の具体的な内容は?
①まずは生活の中でのセルフケア指導
顎周りの硬くなっている筋肉のマッサージ、首を回すなどのストレッチ、散歩などの適度な運動で
血行を良くするのも効果的。心身のストレスを避け、よく眠れるようにカフェインを取りすぎない
などの工夫も大切。
②効果無ければ保存的治療
痛み止め、マウスピース、超音波、赤外線など。中には心理的な問題が大きく、抗うつ剤が効く
場合もある。
③どうしても治りが悪く痛みが強い、口が少ししか開かない場合、外科的療法へ
割合としては少ないものの、顎関節症の症状の中には、顎関節強直(キョウチョク)症や顎関節軟骨腫症
など、外科療法を必要とする疾患もある為、症状が長く続く場合は専門の施設へ相談する。
【感想・考察】
最近、顎関節症に悩む患者さんがよく来院されておられるように感じます。そんな折りにこの資料
を見つけたのでレポートにしてみました。私自身も顎関節症の症状がありますが、実際の所あまり
よく分かっておらず、マウスピースくらいしか出来ることはないだろうと今まででは高をくくって
いた部分がありました。ですが今回調べてみて、日常生活で行う事の出来る顎への負担の軽減やセル
フケアの具体的な情報を得ることができ、とても参考になりました。話題や説明の引き出しとして
頭に留めておこうと思いました。
衛生士 河本