「大人のう蝕ケア」について、勉強会で発表して
小児のう蝕は減りつつありますが、依然、歯の喪失原因としてう蝕は大きな存在です。高齢者において
も歯が残るようになった現代では、大人のう蝕予防ケアがセルフケアとプロケアの重要な課題です。
青年期から壮年期では、修復・充填等の歯科処置など口腔内環境が悪化し口腔内の不潔域が出来やすい
ことでう蝕は増加し進行します。また、高齢期に入ると、歯周病による歯肉退縮で根面が露出し、根面
う蝕のリスクが増加します。高齢期では身体機能の低下でブラッシングスキルが不十分になったり、
薬剤の副作用による唾液分泌の減少も、う蝕リスクの増加に直結します。歯の欠損は生活習慣病などを
引き起こし、健康寿命を短縮させます。QOL(生活の質)低下防止のためにも、う蝕予防は重要なテーマ
です。
う蝕予防は、口腔内清掃によるミュータンス菌の排除と糖質の摂取コントロールで、口腔内pHを中性に
維持することがポイントです。さらに、歯質のカルシウム脱灰防止と再」石灰化を促進するエビデンス
が確立しているフッ化物を積極的に応用することがう蝕予防には重要なファクターです。
従来、う蝕予防のフッ化物応用は小児中心でしたが、成人から高齢期にかけても、フッ化物配合歯磨剤
の使用、フッ化物洗口液の使用など、口腔内にフッ化物をいかに長時間、一定量を確保するかが重要
です。フッ化物の応用は大人う蝕にとっても予防の要なのです。
◇根面露出があるケースの歯ブラシの選び方◇
・ブラッシング圧がコントロールしにくい方や身体機能低下によるブラッシングスキル低下の方には
音波電動歯ブラシも候補
・隣接面の根面露出部位は歯ブラシだけでは清掃が難しいので、ワンタフトブラシを併用。根面が露出
するとオーバーカントゥアになり、歯冠下部に歯ブラシの毛先があたりにくく、プラークが蓄積し
やすく、根面う蝕好発部位。
・歯間空隙が広い場合には歯間ブラシを選択、根面の陥凹部等、複雑な根面を清掃できる用具を選択
する。
◇根面う蝕予防◇
根面は象牙質で、エナメル質に比べて脱灰しやすく、再石灰しにくい性質を持っています。
①根面(象牙質)のミネラルの流出(脱灰)がはじまるPH(臨界PH)が歯冠(エナメル質)より高い。
②再石灰化能が低い。
③歯周治療の結果、日常的に清掃性の悪い隣接面歯頸部の根面が露出し、その部位は視診による発見も
難しい。
《まとめ》
check-up rootcareを医院で取り入れるにあたって根面う蝕について理解しておく必要があると思い、
今回レポートにまとめました。口腔内に炎症があると、どうしても歯周病中心のTBIになりがちです
ですが、必要性を見極めながらフッ化物応用についても説明していきたいと思います。
歯科衛生士 関口