「新しい経口抗凝固薬を知って対応しょう!」について、勉強会で発表して
Ⅰ.医科から見た新しい経口抗凝固薬
1. 唯一の経口抗凝固薬だったワルファリン
・内服薬としての抗凝固薬は、長い間ワルファリンしかなかった。
・ワルファリンはビタミンKに拮抗し、凝固因子の産生を阻害し抗凝固作用を発揮。
・作用発現は遅く、内服を中止しても作用が消失するまで数日の時間を要す。
・食事や他の薬剤との相互作用が多く、Ptにより維持量のばらつきが大きいため、
定期的に採血し効果判定しなければならない。←使いがたい薬
2. 新しい経口抗凝固薬の登場
・直接トロンビン阻害(プラザキサ)や第Ⅹa因子阻害(イグザレルト、リクシアナ)は安定した抗凝固
作用を発揮する。←ほとんど用量調節せずに、速やかに抗凝固法を行うことが可能になった。
《経口抗凝固薬》 ☆新薬
[商品名・一般名・特徴]
★ワーファリン ワルファリンカリウム
抗生剤内服で作用増強する可能性あり
☆プラザキサ ダビガトラン エテキシラート メタンスルホン酸塩
相互作用が少ない
☆イグザレルト リバーロキサバン
相互作用が少ない
☆リクシアナ エドキサバン トシル酸塩水和物
入院中の患者に限り使用(内服中に歯科を受診することはまれ)
☆ELIQUIS アピキサバン
国内未発売(承認申請済)
3. 医科における抜歯時の対応
・抜歯を含む歯科治療や小手術では抗凝固薬は中止せずに、継続し、局所の
止血処置で対応するのが原則。
・出血がかなり多いと予想され、出血が負担になると思われる場合→休薬指示
(これらの指示は処方医に決めてもらう)
Ⅱ.歯科による抗凝固薬服用患者さんへの対応
・問診により抗凝固薬が使用される可能性のある併存疾患を有していないか聞き取る。
・おくすり手帳や持参薬から抗凝固薬服用の有無を確認する。
《歯科臨床で遭遇することの多い抗凝固療法患者》
心疾患 : 弁膜症、心臓外科手術後、心房細動、 ペースメーカー埋め込み術後、心不全
脳血管障害 : 心原生脳梗塞症
その他 : 肺塞栓、深部静脈血栓症、人工血管置換術後
《処置前にしておく対応》
○主治医(医科)への対診・情報交換
・観血処置時の抗菌剤予防投与の必要性があるか
・抗凝固薬中止なしで観血処置可能であることの確認
・後出血時の対応についての情報交換
・ワルファリン服用の場合は最近のPT-INR値
・平常時の血圧
・血管収縮薬使用の可否
○患者さんへの説明
・むやみに薬剤を中止しないように指導する
・基本的に抗凝固薬の中止をしなくても、外科処置が行えることを説明
・服用している抗凝固薬を中止した場合、生命に危険を及ぼす合併症を生じる 可能性があること
の説明
・服用を継続して観血処置を行う場合、後出血の危険性があるが適切に対処する ことの説明
《感想》
循環器内科や心臓血管外科に通っている患者さんは抗凝固薬を内服していることが多い。有病者で
あるか、どのような薬を内服しているかなど、患者さん自身が歯科と 関係ないと判断し、ご自分から
申告されない場合もあるので、問診では、些細な ことでも見逃さないようにしなければならないと
思う。 衛生士 赤木
PT-INR :PTの国際標準比。従来から使用されているPTなど血液凝固能検査は各試薬に より同じ
検体でも血液凝固時間にばらつきがみられていた。そのばらつきを補 正し、世界中のどの
施設とでも比較できるように導入された。日本のワルファ リンの推奨治療域は、医師の
ガイドラインではPT-IRN 1.6~2.8となっている。