ドライマウス(口腔乾燥症)の原因と対処法
ドライマウス…日本人の25%(4人に1人)、つまり3千万人の患者さんが いるといわれており、
特に中高年の女性に多いとされている。
唾液の役割
◆抗菌作用…ラクトフェリン、リゾチーム、免疫グロブリン
◆粘膜保護作用…ムチン(硬いものをくるんで傷が付かないようにする)
◆成長因子…EGF・NGF…上皮細胞成長因子、神経細胞成長因子etc.
◆消化作用…アミラーゼ
ドライマウスに起因する病態
◆異常乾燥感 ◆口腔の不快感
…口の中がネバネバする、乾いた食べ物が食べられない、長電話できない、
カラオケが出来ない etc.
◆舌痛症…・潤滑油としての唾液が枯渇し、こすれて痛みが出ている
・唾液の量が減り、自浄作用・抗菌物質が減ることで常在菌である カンジダが増え、カンジダを介した痛みがある →抗真菌剤が有効
◆齲蝕、歯周病…唾液の量が減ることで悪化しやすい
◆粘膜疾患…味覚障害→味蕾が唾液の減少により破壊される
◆口臭
◆上部消化管障害…咽頭、食道、胃に炎症が起きる
◆感染症…自浄作用低下→経口感染により発症するインフルエンザ…罹りやすい
◆摂食・嚥下障害…飲み込みにくい
ドライマウスの原因
☆複合的に様々な原因が重なり合って起こる
◆糖尿病…脱水をきたす(口渇感)
→患者数800万人+予備群800万人=1600万人の人がリスクを持っている
◆シェーグレン症候群…難病の一つで、自己免疫疾患である
→患者数50万人といわれている…認定されると国から補助が出るが ・ 現在7万5千人しか認定されていない
◆腎不全…患者数30万人といわれている→週に2~3回透析を受ける必要がある
→透析を受ける患者さんは、「たくさんの水を抜く」「おしっこが出ない為水分摂取量を制限する」…非常に喉が渇き、ひどく乾燥する→歯周病・齲蝕のリスクが高い
◆更年期障害…女性ホルモンの低下によりドライマウスが起こる
乾燥症候群(ドライシンドローム)
→ドライマウスだけでなく、ドライアイ、ドライスキン etc.
◆ストレス…唾液腺は自律神経の二重支配を受けている→緊張すると ・ 瞬時に喉が渇くetc.
→自殺者は3万人ともいわれ心療内科的対処法が必要となってきている
◆筋力の低下…加齢と共に筋力が衰えると唾液が減る
唾液腺は筋力によって裏打ちされている
→トレーニングやエクササイズといった筋力強化は有効である
◆薬の副作用(日本は服薬大国といわれ、薬の服用量が欧米と比べ ・ 40倍多い)
…あらゆる薬の副作用に口渇がある
種類→◇血圧を下げる薬 ◇睡眠導入剤 ◇抗うつ剤
◇抗ヒスタミン剤(花粉症) ◇尿失禁のお薬 etc.
ドライマウスに悩む患者さんは…処方されている先生に相談する
・同じ効果で違う種類のお薬にしてもらう
・出来るだけ薬に頼らない生活をする
◆老化…「お口が渇くのは年だからしょうがない」は間違い!!
心身共に健康に年を重ねたならば口は渇かない
唾液腺は非常に強い臓器であり、年を重ねても唾液の分泌量は変わら ・ ない
ドライマウスの診断
◆唾液量の検査(最も重篤なものを診断できるような基準にしている)
◇安静時唾液
唾液を15分間排出させ、1.5cc以下ならドライマウス
◇ガムテスト
ガムを噛みながら唾液を10分間排出させ、10cc以下なら ・ ドライマウス
◇サクソンテスト
ガーゼを2分間噛んだ後の重量を量り、2g以下ならドライマウス
(約1.7gのガーゼをビニール袋に入れて測定しておき、総重量 ・ から引く)
◆シルマーテスト…涙の量が検査できる(シルマー試験紙)
シェーグレン症候群か否かを判別できる
歯科医師も診断することができ、38点を請求できる
◆口唇生検…小唾液腺の摘出(口唇の内側を切開して摘出し縫合)
特にシェーグレン症候群が疑われる場合行なう
口腔乾燥症に伴う症状
◆紅斑性(萎縮性)カンジダ症
◆口角炎・平滑舌
→ほとんど味がしないか、味を強く感じる
ドライマウスの原因となる薬剤
◆向精神薬
抗うつ剤(アナフラニール、トリプタノール、ルジオミール)
抗不安薬(睡眠導入剤)(セルシン、デパス、ハルシオン)
抗精神病薬(セレネース、コントミン、ヒルナミン)
抗痙攣(てんかん)薬(テグレトール)
抗パーキンソン薬(パーロデル、ドプス、シンメトリル)
◆降圧剤・抗不整脈薬(カタプレス、リスモダン)
◆抗アレルギー薬(ポララミン、アタラックス、アレジオン)
◆消化性潰瘍治療薬(タケブロン)
◆抗コリン薬(ブスコバン、バップフォー)
◆気管支拡張剤(メブチン、テオドール)
ドライマウスの治療(QOLの向上)
◇保湿スプレー、保湿液
保湿ジェル
保湿装置(歯ぎしり防止装置という形で作成し、濡れガーゼを入れる ・ スペースがあるもの)
◇漢方薬
唾液分泌促進薬
筋機能療法
◇分泌刺激剤
舌の粘膜の再生…2週間に一度置き換わる→2週間きっちり保湿ジェルを使う ・ こと!!
ネバネバ唾液にどう対応するか
・ストレス・心身症…心療内科的アプローチ
・薬剤の副作用…薬剤の変更・カンジダ…抗真菌剤の使用
夜間の乾燥感だけと起床時の不快感の対応
原因…口呼吸・鼻閉塞・睡眠時無呼吸症候群
対応…保湿装置・睡眠中の体勢
質の良い睡眠を得る方法
口呼吸・いびきの原因…鼻閉塞、筋力の低下、脂肪(気道)の増加
夜中のドライマウスの改善に…抱き枕(横向きに寝ること)
ストレスを軽減するためには
「楽しいから笑うのではなく、笑うから楽しくなる」
↓
「笑う門には福来たる」
MRIの検討で表情筋を動かすことで検証された
↓
20世紀における最大の発見のひとつ
心のあり方を人為的に変えられることが分かった(人以外の動物には ・ 出来ない)
口腔筋機能療法
お口のトレーニング(ストレス改善にも効果的)
安静時唾液の分泌が促進されるというデータがある
「イー・ウー」頬のたるみ・口角を上げる
「イー・ウー」と発音するときの口の形を作る
上の前歯が見えるように口角を引き上げる→目元にシワは寄せない!!
ドライマウス改善のための表情筋エクササイズ
注意点・患者さんに無理をさせないように顎が痛い場合などは行わない
・胸を張った状態で行う(集中しすぎると姿勢が悪くなり前傾姿勢 ・ になるため肩関節を一度起こす)
・指導者が呼吸の指示を行う
(集中しすぎると呼吸が浅くなったり止まったりしがちなため、鼻から息を吸って~、吐いて~とゆっくり呼吸の指示を時々する)
ドライマウスの予防
☆ポッピング…舌を動かすことで舌下腺の刺激をし、ドライマウスの改善 ・ に役立てる
口を大きく開けて、スポットに当てて、ずらしてずらして鳴らす
①、口を開けて、舌を上顎に吸い付ける
②、吸い付けながら後ろにズラす
③、ギリギリまで後ろにスライドさせる
④、ポンッと良い音が出るように舌を離す
1・2・3・ポンッという感じで4秒かけて行う。
①~④までを10回連続して行う…途中で音が出なくなっても止めたりせず続けて行うことが大切。(一日一回だけでも大丈夫)
注意点…口を大きく開ける、舌小帯を伸ばすこと、スポットの位置を ・ しっかり教える
☆舌グルグルエクササイズ
…舌で頬粘膜を押していく→小唾液腺を刺激し、ドライマウスの改善に ・ 役立てる
(2重顎の予防にも効果的)
①、舌を歯茎と唇の間に入れる
②、1周終わったら、反対周り
・8カウント(8秒)で1回り程のゆっくりペースで行う
・口は舌が見えないようにしっかり閉じる
・舌は皮膚をグッと押す
(患者さんご本人が少しつらいなと思うくらいの回数を行う…顎の下が ・ ピリピリする位)
口輪筋をしっかり使う
☆空気プクプクエクササイズ
空気で皮膚を押していく…表情筋を動かすことで、唾液腺は表情筋(筋肉)に裏打ちされているので色々な筋肉が動くことで唾液腺が刺激されドライマウスの改善に役立つ
右だけに空気を入れて4秒(膨らませ続ける)
同じ様に、左→上→下と行う
(アップップの時は全体が膨らむが、これはその部位だけに空気を ・ 入れるよう意識する)
(上記のが)簡単に出来るようになったら、
1秒ずつ「プクプクプクプク」4回膨らます(1回1回膨らます戻す ・ 膨らますを繰り返す)
空気が漏れても良いので思いっ切り行う
呼吸止まりがち…休憩しながら行う
口輪筋はギューと閉じて行い、空気で皮膚をギューと押していく
部分的な筋肉を動かして楽しく行うのがコツ
患者さんに3つの内のどれかを選んでもらう
継続して長く続けてもらうことが重要→やりやすいものを選んでもらう
時々やり方はチェックすること
口が渇いたときにどの医療機関を受診しますか
1位、内科 2位、耳鼻科 3位、歯科
ドライマウスカード…「私はドライマウスです」と書かれた説明のカード
ドライマウス研究会から発行されている
【感想・考察】
舌の、特に平滑舌については以前レポートしたこともありましたが、その原因としてのドライマウスについてはおぼろげに知っている程度でしたので、今回のこのDVDを大変興味深く観ることが出来ました。観ていくにつれ、以前のレポートはドライマウスという項目の中のほんの一部だったのだなと痛感しました。
ドライマウスで悩む方は私の担当患者さんの中にもいらっしゃいますが、唾液腺マッサージの方法のみならずドライマウスの原因や起こりやすい病態など、知っているのと知らないのとでは今後、患者さんに接するときの心構えなど変わってくるなと思いました。もし患者さんが聞いてこられたりするようなことがあっても、慌てたり動揺したりすることなく落ち着いて対応出来そうだと思います。
・ 衛生士 河本