全身疾患と歯科治療について、勉強会で発表して
〈糖尿病〉
膵臓のβ細胞から分泌されるインスリンが減少したり、インスリン抵抗性が上昇(=インスリンが効き
にくくなる)したりすると、高い血糖値が持続するようになる。このような病態を糖尿病という。
糖尿病は、慢性腎臓病、虚血性心疾患、脳血管障害など重篤な合併症を引き起こしうるため、血糖値を
下げる治療が必要となる。治療には経口血糖降下薬が使われるが、血糖コントロールが困難な場合は
インスリンも使用される。注意すべき点は、低血糖と腎臓、脳、心臓などの合併症です。低血糖は、
インスリンやスルホニル尿素薬、速効性型インスリン分泌促進薬を使用・服用している患者さんに発生
する可能性がある。低血糖になると動悸、発汗、めまいなどといった交感神経症状が始まり、さらり
血糖値が低下すると、意識レベルが低下し、最終的には昏睡から死に至ることもある。
診療時に配慮すべきこと
→インスリン、スルホニル尿素薬、速効型インスリン分泌促進薬を使用・服用している患者さんでは
低血糖の既往を伺い、あれば頻度、症状、対応を確認。そのうえで低血糖の予防を行う。いつも通り
食事し、決められた量の血糖降下薬を使用・服用し来院するよう本人や家族に指導。空腹時の治療は
低血糖を起こしやすくなるので避ける。低血糖になると交感神経症状(動悸、発汗、めまいなど)が
現れるので自覚したら申告してもらうよう伝える。もし、交感神経症状の申告があったり、申告がなく
ても低血糖を疑う症状が認められたら、ただちに血糖測定を行う。低血糖が確認されたら、ブドウ糖を
含む飲み物などを飲んでもらう。意識が減弱し、経口摂取が困難になった場合は119番に連絡する。
〈慢性腎臓病(CKD)・透析〉
様々な原因により、腎臓が本来の機能を慢性的に果たせなくなった病態を慢性腎臓病( CKD)という。
主な原因は糖尿病と高血圧です。慢性腎臓病になると脳卒中、心筋梗塞、心不全、そして死亡リスクが
上昇する。時間とともに進行し、最終的には腎臓がほぼ機能しなくなる。これを末期腎不全といい、
代替療法として透析や腎移植が必要となる。透析は尿毒症の原因となる有機物質や水分を人工的に除去
する方法。
診療時に配慮すべきこと
→原因が糖尿病であれば、糖尿病へのリスクマネジメントが必要である。透析中の患者さんでは、
①歯科診療は透析の翌日にする②高血圧・低血圧に注意する③血圧測定のカフはバスキュラーアクセス
(人工的に作られた血液の出入り口)のない腕に巻く④感染症に対するスタンダードプリコーションを
行う⑤出血傾向を示す場合があるため止血に注意する⑥体位変換は段階的に行う
鎮痛剤としてのNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)は腎機能を低下させるため、投与はできるだけ
避ける。
〈脳血管障害(脳卒中)〉
脳血管の異常を原因とする、脳あるいは脊髄への障害を脳血管障害(脳卒中)という。脳血管障害は
大きく虚血によるものと出血によるもの(脳内出血とくも膜下出血)に分けられる。高齢者における
脳血管障害のリスク因子には、高血圧、ストレス、脂質異常症、喫煙、肥満、運動不足、脳血管障害の
家族歴、糖尿病などがある。脳血管障害では運動機能障害など、様々な合併症が発生する。嚥下障害も
その一つです。
診療時に配慮すべきこと
→脳血管障害においても血圧コントロールは重要である。歯石除去などの歯科処置も、できるだけ
短時間で、痛みや精神的ストレスを与えないよう配慮する。嚥下障害が残存していれば、誤嚥性肺炎の
予防として口腔ケアなどの介入を行う。脳血管障害を持つ患者さんには、高血圧、糖尿病、心房細動
などを併存していることが多いため、それぞれの疾患に対するリスク管理が必要である。
感想
疾患によって特徴や配慮すべきことがそれぞれあるので、知識を増やしていけたらと思いました。
患者さんには問診票を書いてもらっていますが、何の疾患があってどんな薬を服用しているかの確認を
怠らないようにしたいと思いました。
衛生士 檜垣