スタッフレポート

2024年10月

全身疾患(高血圧・心房細動・虚血性心疾患)について、勉強会で発表して

●初めに

「安全」は医療において最重要項目です。現在では、高齢化や医療技術の進歩により 以前であれば

外来受診が難しかった方でも、歩いての外来受診ができるようになりました。以前よりも歯科医療での

「安全」の確保が難しくなっているということです。 患者さんのもつ疾患、薬剤を含むその治療方法を

理解し、医学的エビデンスに基づいたリスクマネジメントをしっかりと行わなければなりません。

① 高血圧

●疾患の全体像

高血圧とは、慢性的に血圧が上昇している病態のことです。高血圧は有病率が全年齢層で

25パーセント強、高年齢者(65歳以上)で45パーセント以上となっています。

高血圧が続き、進行していくと、最悪死に至る可能性が高くなります。

ただ、自覚症状がないことが多いため、サイレントキラーと呼ばれています。

死を含むリスクを低下させるために、血圧を下げる薬(降圧薬)が処方されます。

●診療時に配慮すべきこと

診療開始前の血圧が低くても、治療中に急激に血圧が上昇することがあります。このような変化は

高齢者に多く認められます。痛みや恐怖感などのストレスが原因になることが多いので、ストレスを

減らす工夫が必要です。DHによる患者さんの気持ちに寄り添ったやさしい声かけは患者さんの

ストレスを減らすのに有効です。

治療前に血圧が著しく高い場合は、治療を中断し、医師に相談しましょう。

ただし、痛みがあり緊急の対応が必要な場合は、最小限の治療は行います。

血圧上昇時には、ゆっくり深呼吸をしていただくと、ある程度の血圧降下が期待できます。

また、降圧利尿薬を服用している患者さんには、プライドを傷つけないように、紙などに書いて伝える

ようにしましょう。 もし、悪心、嘔吐、痙攣、意識障害を伴う場合は119番連絡をしましょう。

② 心房細動(不整脈)

●疾患の全体像

心拍数と心拍のリズムが正常範囲から外れたものを不整脈といいます。 有病率は全年齢層で

10パーセント弱、高齢者(65歳以上)で15パーセント強です。

加齢とともに不整脈は増加します。高齢者における代表的な不整脈が心房細動です。

心房細動では、脈がバラバラ(絶対的な不整脈)になり、脈拍数は多くの場合、上昇します。

最大の問題点は、血栓により脳梗塞を起こすリスクが高いことです。

また、心臓の機能が著しく低下し、心不全となる場合もあります。

●診療時に配慮すべきこと

経口抗凝固薬を服用してもらった状態で行う歯科処置は、薬の影響で歯石除去による出血が止まり

にくいため、止血が問題となります。最初は狭い範囲での歯石除去を行ってみて、出血・止血状況を

確認しましょう。狭い範囲であれば圧迫止血で対応できる場合が多いです。

抗凝固薬を休薬すると、脳梗塞などのリスクが上昇するため、医師と相談したうえで休薬する場合は、

患者さんにリスクを説明して同意を得る必要があります。

③ 虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞)

●疾患の全体像

心臓の筋肉に酸素を供給している心臓の外側にある冠状動脈が、狭窄して閉塞したりすることで、心筋

が低酸素状態(心筋虚血)となり、心機能が低下した病態を虚血性心疾患(冠動脈疾患)といいます。

全年齢層で5パーセント強、高齢者(65歳以上)で11パーセント強となっています。

狭心症と心筋梗塞に分類され、狭心症における心筋虚血は一過性で、心筋の壊死はなく、心機能低下も

比較的小さいです。一方、心筋梗塞は心筋が壊死するため、心機能の低下はより強く、とくに壊死の

範囲が広い場合は重篤な結果となり、突然死になる場合もあります。

●診療時に配慮すべきこと

恐怖心や不安などの情動により起こるストレスは狭心痛を引き起こしうることが知られています。

DHの優しい声かけや接し方をするなどの配慮が必要です。

★感想

医療の進歩とともに、医療の環境が複雑になってきています。進歩することは良いことですが、私たち

がそれに追いついていないと意味がありません。口も体の一部なので、口腔内のみではなく、全身疾患

についても新しい知識を収集し、深めていきたいと思いました。 また、ストレスが患者さんの病態を

変化させる因子になることが多いので、患者さんに寄り添った声掛けがかなり大事になることが

わかりました。患者さんによって、してほしい声掛けが違うと思うので、患者さんとの信頼関係の構築

がとても大切だと感じました。

                      衛生士 福田

  2024/10/27   ふくだ歯科