スタッフレポート

2018年7月

「口腔がんから患者さんを守れ!」について、勉強会で発表して

口腔がんは早期発見されれば治療もしやすく、その後の傷害も少なく済み、生存率も高くなります。

 

日本は“がん大国”

日本人の死亡原因1位は「がん」です。こうした背景もあり、がんの早期発見早期治療に関しては急速

に研究が進められているため、日本の医療レベルは世界最先端と言ってもよいと思います。

しかし、口腔がんについて言えば、日本は必ずしも先進国とは言えないのが現状です。

 

口腔がんって?

口腔がんには、舌がん、口腔底がん、歯肉がん、頬粘膜がん、口蓋がん、口唇がんなどがあります。

つまり、そのほとんどが口腔粘膜に生じるということです。日本における口腔がんの多くは舌がんで、

次に口腔底がん、歯肉がんの順で多くみられます。上記に挙げたがんに加えて、喉の奥にできる咽頭

がんも含まれることがあります。

 

放置された口腔内の問題もがんの要因に

口腔がんの発症原因はタバコ、だけじゃない

がんになる要因には外的要因と内的要因があります。外的要因としては、発がん性物質(タバコなど)、

放射線、紫外線、ウイルス(HPV:ヒトパピローマウイルスなど)、細菌(ピロリ菌など)、慢性刺激が、

内的要因としては遺伝的素因が挙げられます。

口腔がんの原因について見ると、まず挙げられるのがタバコです。しかし、実は口腔がんの発症原因

には、それ以上に重大なものがあります。それが慢性刺激です。通常、口腔がんが短期間で急に発症

することはあまりありません。たいていの場合、最低10年の期間を経てがん化すると言われています。

つまり舌や歯肉、頬粘膜などに外部からの刺激が慢性的に加えられると、数年後、数十年後にがん化

するということです。

“口腔がん=喫煙者、高齢者のがん”はもう古い!

これまで、日本における口腔がん罹患患者の平均年齢が割と高齢だったことから、「口腔がん=高齢者

のがん」といわれてきましたが、最近では10代、20代の事例も頻発し始めています。

30歳以下の若い口腔がん、特に舌がんの患者さんのほとんどに認められた口腔内所見が、臼歯の舌側

傾斜や鋭利な咬頭でした。彼らが小学生ぐらいの頃、つまり臼歯が萌出した頃から、10年、20年に

わたって毎日その歯が舌を傷つけることで、慢性刺激となり、がんが発生していると推測できます。

慢性刺激となる口腔内の問題を抱えている人は要注意

・歯列不正     ・詰め物や被せ物不適

・義歯不適     ・舌小帯付着異常

・舌や頬の圧痕   ・アマルガム

・咬傷       ・口内炎 ・う蝕        など

・歯周病

年齢や性別、喫煙の有無にかかわりなく、このような問題を抱えている口腔内である場合、口腔がんの

発症につながる可能性があることを意味します。

 

口腔がんから患者さんを守るために歯科医院にできること

口腔がんの発症を予防する

・口腔内の環境を整えて刺激源を除去する

 口腔がんの原因には慢性刺激が挙げられますので、歯科医院で口腔内環境を整えて刺激源を除去する

   ことが重要です。例えば、鋭利な歯や補綴物を研磨したり、歯列不正があれば矯正を行ったり、義歯

   が合っていなければ調整するなど、日頃から行っている歯科治療が口腔がん予防にも大きく貢献して

   いるのです。

・卒煙を支える

・口腔粘膜を診る習慣をつける

異常を見つけたら、専門機関へつなぐ

・安易に経過観察を続けない

 異変に気づいた場合は、口腔外科などしかるべき機関へ紹介し、精査してもらってください。特に、

    2週間経っても口内炎や舌痛などが改善されない場合、がん化している状態かもしれません。

・安易に治療や抜歯を行わない

   口腔内の異常が継続している場合、安易に根管治療や抜歯を行わないようにしましょう。

 

〈まとめ〉

患者さんの口腔内を診る機会が一番多いのは、メインテナンスなどを行う歯科衛生士だと思います。

歯と歯肉だけではなく、舌や舌の裏、頬粘膜など、口腔内全体をチェックする習慣をつけ、口腔がん

の早期発見に努めたいです。

                                                  衛生士  関口

  2018/07/25   ふくだ歯科
タグ:口腔がん

お薬手帳について、勉強会で発表して

●「出すとソン」から「出すとお得」に

 2014年の診療報酬改定で薬局の薬剤服用歴管理指導料が 「手帳あり」41点 「なし」34点に

 設定され、「あり」が20円(3割負担の場合)負担高となった。    

  2016年度診療報酬改定による薬歴管理料の変更で  「手帳あり」38点 「なし」50点

 「手帳なし」の場合に3割負担で40円高くなるように改められた。      

 *初回時は「ある」「なし」に関係なくすべて50点で、次回(6ヶ月以内)来局時 からしか適応

  されないなど、38点になるにはいくつかの条件がある。

 

●阪神大震災の教訓から生まれたお薬手帳

 ・元々 お薬手帳は一部地域の薬局が試行的にはじめた。

 ・1995年 阪神淡路大震災で医師や薬剤師の支援活動に支障が出たケースが多々あり、災害時にも

   安全に服薬を継続できるようにと、一部医療機関や薬局がサービスの一 環としてお薬手帳の配付

        を始めた。  

 ・2011年「薬剤情報提供料」として調剤報酬に盛り込まれた。

 

●180度の方向転換の理由  

   お薬手帳は患者、医療関係者にとって重要な情報源       

     ↓   

   お薬手帳の普及を図るため、「出したほうが得になる」点数設定に変えた。

 2016年度改定では、患者の服用薬を一元的・継続的に一カ所の薬局で管理する「かかりつけ薬剤師」

    制度を新設した。      

 

●「電子お薬手帳」もスタート  

 2016年度の改定で、電子お薬手帳も紙媒体と同様に認められた。

 電子お薬手帳の概要

  主なメリット

  ・災害時などでもクラウド上にデータが残されており、紛失リスクが防げる

  ・携帯性が高く、持参忘れを防げる

  ・紙のお薬手帳に比べ、情報量が圧倒的に多い

  ・双方向のやり取りが可能である

  主なデメリット

  ・閲覧に充電や電波が必要

  ・高齢者など、スマートフォンを使えない患者さんも少なくなく、普及に課題

  ・患者情報のセキュリティ対策への懸念

 

●歯科医院でもお薬手帳の確認を

   歯科医院でも「他にどんな治療を受けているか、どんな薬を飲んでいるか」を 聞き出すことが重要

   です。

   また、お薬手帳も必ず持参してもらい、他の服用薬の 有無をチェックする。

 

最後に、今回お薬手帳の成り立ちや重要性が理解でき良かったと思います。

患者さんはお薬手帳の他にも病気や状態に特化した手帳をお持ちの場合もあるので、確認をしていく

ことも忘れてはいけないと思いました。  

                               衛生士 赤木

  2018/07/16   ふくだ歯科
タグ:お薬手帳

歯科医療安全研修会(H.30.2.18 開催)に参加して

複雑化する有病者歯科治療の現状 ~観血的処置において問題となる薬剤を中心に~

安心・安全な歯科医院とは?

・説明がしっかりとなされ、患者の疑問や質問にも丁寧に答えてくれる

・基本的技術や考え方がしっかりしている

・待たせない、痛がらせない、外れない

・全身状態に気を配りながら治療してもらえる(外来診療環境体制が整っている)

・感染対策がしっかり行われている

・医療安全対策がしっかり行われている    …等々

歯科・口腔外科的治療の特殊性

・歯科、口腔外科的治療の術野は気道や食堂と重なるため非常に危険な領域である。

   これまでにも偶発事故による多くの死亡例が報告されている。

・歯や補綴物の誤飲や誤嚥などの偶発事故も多い。

・非常に細菌数の多い領域であり、高齢者や多数の薬剤を服用している患者さんへの出血を伴う

    処置も多い。

・歯科医療も多様化。 デンタルインプラントなど外科的処置も増えて治療内容も複雑になってきた。

この10~20年間の大きな変化

1.疾病構造の大きな変化―超高齢化

2.心筋梗塞や脳卒中で死亡することが少なくなった

       病状悪化や再発防止の理由から抗凝固薬(ワルファリンカリウムetc.)や 抗血小板薬

    (アスピリンetc.)は休薬しない

3.がん患者の急増

       BP製剤や分子標的薬など歯科医師の頭を悩ませる薬剤の登場 昔ほど病気を放置してコントロール

      不良な状態で受診することは少なくなったと思われるが、病状を薬剤でコントロールしている

      ため、副作用対策や併用禁忌・注意薬などに関する知識も必要になった。

抜歯時、ワルファリンを中断した場合、どのような合併症が起こるか?

    ワルファリンは心房細動患者において脳卒中のリスクを70%減少させることが知られている。従来、

    ワルファリン服用患者においてはワルファリン投与を数日間中断し、血液凝固機能を回復させてから

    抜歯が行われていた。しかし、論文で出された1%程度の患者において抜歯のためのワルファリン

    中断により、血栓塞栓症が発症し得るという事実を、極めて重大に受け止めるべきである。

    そのような事実に基づいて歯科の立場としては、ワルファリン継続下での抜歯を行うべきである。

    しかし、ワルファリンを休薬することに怖さを感じる一方で、ワルファリン継続下での抜歯にも危険

    が伴う。

    一例:歯科医院で歯肉腫瘍切開を受けた患者さんは再受診の際、大量に吐血し、救急搬送された。

              …傷口からずっと出血し続け、それを飲み続けて胃で固まっていたものを吐いたと思われる。

               そのため、確実な止血縫合処置が重要である。

    圧迫ガーゼの当て方             

    ガーゼを丸めてピンポイントに当てる                    

    抜歯窩に当たっていないのは、適切ではない

止血困難症例に遭遇した際の全身的対応

・通常ならアドナ(止血剤)、トランサミン(止血剤)内服処方あるいは点滴投与。

   しかし、抗血栓療法を受けている場合トランサミンの使用はふさわしくない。

・ワルファリンに関しては循環器主治医に対診して、休薬ならびにビタミンK投与の可否を検討して

    頂く。

・新抗凝固薬(ビタミンKに影響を受けない)に関しても、休薬の可否を循環器主治医に打診。

※緊急の場合は2次医療機関へ紹介する。

    処置だけでなく全身状態の管理が重要になる。

骨吸収抑制薬関連顎骨壊死

   BRONJ → ARONJ

   原因薬剤はビスホスホネート系に限るものではなくなったため、名称が変更となった。

   総合的名称としては、MRONJ(薬剤関連性顎骨壊死)となる。

骨粗鬆症とは

    血液中のCa濃度が低下→破骨細胞が活発…骨からCaを取り出すよう働く。

                                                      ↓

    骨吸収が生じる→骨芽細胞が活発になる…Caを骨に蓄えるため

    様々な要因によりこのバランスがうまく保たれなければ骨粗鬆症になります。

骨粗鬆症治療薬(ビスホスホネート製剤)

    作用…服用すると骨にくっつき、骨を壊す破骨細胞が働きすぎるのを弱める。

    効き目…骨形成と骨吸収のバランスを保ち、骨を健康にして骨折を予防する。

ARONJとは

    発生の仕組みなど未だ不解明である。

    顎骨壊死になりやすい要因としては、抜歯・インプラントなどの傷口、虫歯、歯周病etc.

    ビスホスホネート製剤を服用中、抜歯などをきっかけに細菌に感染しやすくなり、感染してしまう

    と粘膜に穴が開き、壊死した顎骨が露出する。露出が起きると強い痛みで食事が難しくなり、歯が

    抜けたり、顎の皮膚に穴が開いて、骨が露出したりする。放置し悪化すると死亡例もあるという。

    口腔状態を清潔に保つことが求められるが、高齢者には限界があり、難しいと考えられる。

高齢者や循環疾患を有する患者さんへの歯科治療の基本

・ストレスを可能な限り少なくする。

・治療前・治療中・治療後の痛みを少なくする。

・データによるとストレスがかかる強さは…

   1.局所麻酔を使わない窩洞形成

   2.埋伏歯抜歯

   3.小手術

   4.局麻下での窩洞形成

   5.局麻のみ

   6.根治

   7.スケーリング      の順となっている

・歯科医師の予測と患者が感じるストレスの程度は一致しない

・重篤な循環器障害を持つ患者では、以前は午前中の診療が良いとされていたが、午後の方が安全

   である。また冬期に心臓疾患による突然死が多い。

 

【感想・考察】

   今回の研修会では薬剤関連や症例などが多く、難しい内容であったと思います。特に、ARONJに

   ついては聞いたことがあってもよく理解出来なかったので、個人的に調べた内容も共にレポートに

   しています。話を聞く中で感じたのは、患者さん本人が、現在受けている治療と歯の治療との関連性

   を知らない可能性もある為、一つ間違うと大きな医療事故に繋がる恐れがあることを知り、患者さん

   の服薬状況をしっかりと問診する必要性を強く感じました。その為にも、より傾聴する姿勢と、患者

   さんとのコミュニケーションの重要性を改めて再確認できました。

                                             衛生士   河本

  2018/07/04   ふくだ歯科
タグ:医療安全