「80%の人は一生のうちにHysを経験する」―Hotz氏
・「冷たいものや風で一瞬しみるが我慢できる」
・「繊維質のものを奥で噛むとピリッとくるから鬱陶しい」(高齢者における咬合面のHys)
・ハブラシでピリッとくるからハミガキ怖い」(くさび状)
・一度しみたら治まるまで5分かひどくて20分かかって食事が出来ない」(酸蝕症)
・ホワイトニング後
・生活歯の支台歯、セラミックインレー形成後
【診断】
原因→動水力学説…象牙細管開口により、歯髄と外界が交差してしみる
→細管内組織液を介して伝達される
知覚過敏は一過性、余韻はない…10~30秒
…30秒以上でも痛みが治まらない→歯髄の病変(歯髄充血・一部性漿液性歯髄炎)
【治療戦略】
① 蓋 象牙細管口の封鎖→レジン・グラスアイオノマー
② 凝固 タンパク質を凝固させ、細管内組織液が動かないようにする
→グルタールアルデヒド・ハイドロキシエチルメルタクリレート(HEMA)
③ 鈍麻 閾値を上げる(感覚を鈍麻する)→パラホルムアルデヒド
★Hysの原因除去(不正咬合・酸性飲料・ホワイトニング)→鈍麻→凝固→蓋(結晶)→蓋(レジン)
【具体例】
◇咬み合わせがしみる=Tooth wear(ブラキシズム)
→ブラッシング指導…フッ素歯磨剤
再石灰化促進するCPP-ACPペースト(MIペースト)
◇削ってからしみるようになった→象牙細管レベルの露髄を減らす
何故しみるか?=象牙質とレジンのギャップにより、歯髄刺激が発生しやすくなる
…象牙質削除→細管レベルの露髄→組織液滲出→接着阻害→ギャップ→しみる
対策は?=浸潤麻酔下でレジンコーティング(裏装)→imp.
…歯髄内圧がかかっていない=組織液の滲出が麻酔によってブロックされる
◇最終修復処置後、しみる
対策は?=咬合調整→窩洞、マージン部にHys処→経過観察→ダメなら再修復→それでもダメなら抜髄
再修復の場合…・裏装は不要
・ボンドに対する光照射を十分にする
・レジンを積層充填
◇ホワイトニング後、しみる
対策は?=ホワイトニングを中止し、Hys処
◇抜髄したいぐらい悩ましく痛い
対策は?=合わせ技「知覚鈍麻+封鎖+フッ化物による再石灰化」
ビトレマー充填用…これが一番綺麗に仕上がる
ペリオドン(パラホルムアルデヒド)+フジⅡLC
クリンプロXTバーニッシュ
=混ぜて塗布して光照射(長めに)
患者さんには、そこもよく磨くよう指導する→治まったら除去する
◇レーザー
①歯髄鎮静
②象牙細管の封鎖
③象牙細管内のタンパク質の変性、凝固
【感想・考察】
知覚過敏は、テレビのCMなどでもよく聞くために広く認知されているとは思っていましたが、「80%の人がその
症状を経験する」ということは、考えている以上にその悩みを抱えている方は多くいらっしゃるのではないかなと
思いました。それで、もしかしたら患者さんの中には、その症状があってもかなりひどくなってからようやく主訴と
して挙げられる方もいらっしゃるのかも知れません。だから、患者さんとの会話や口腔内の状態をよく観察し、
私達の側からリスクとして気付いていく事が大切なのだと思います。
当医院では、MSコートやサホライド、ボンディング法、フッ素の応用などを用いていますが、方法だけでなく、
材料なども様々あり、患者さんの主訴や状態によって選択していく必要があることを改めて感じさせられました。
また、「どの状態でこの治療だ」とか、「この段階で最後の手段である抜髄だ」ということは、私達には判断する
ことは難しく、決定する上で、先生への報告や相談などを密に行っていく事も必要だと思いました。
衛生士 河本