(1)アナログのエックス線写真とは何が違う??
デジタルの利点
被爆量…センサーがアナログフィルムより高感度のため、被爆量が数分の1程度に抑えられる
即時性…現像、撮影のミスによるタイムロスが少ない
操作性…現像液、定着液の管理が不要
加工性…撮影した画像はすぐその場で加工可能
〔こんなこともできる〕
コントラスト調整
アナログでは線量や現像条件でのみしか調整できなかったが、デジタルでは撮影後に観察したい部位に
あわせてコントラストを調整することができる。
距離計測
アナログではノギス(長さを精密に測定する道具)での慎重な距離計測が必要だったが、デジタルでは
モニター上で簡単かつ正確に計測できる。
デジタルの欠点
センサー…折り曲げることができないため、痛みを与えやすい
画像…解像度が低く、アナログに比べ画像が劣って見える
→アナログでは痛み回避のためにフィルムを折り曲げることができるため、折り
曲げた跡が像に残ることがある。
(2)デジタルエックス線写真の種類を理解しよう
デジタルエックス線写真の撮影機器には撮影された画像データを読みとってデジタル化しパソコンに
取り込む「IP」と、直接デジタルデータとしてパソコンに取り込む「CCD」の2種類の方式がある。
CCD(Charged coupled device)方式
CCDセンサーを口腔内に挿入し、エックス線で撮影された情報をデジタル化して直接パソコンに
取り込む方式です。
特徴
◆センサーは厚く角ばっており、ケーブルが出ている
◆半永久的に撮影でき、画質の劣化がない
◆撮影した瞬間に画像を表示
◆衝撃に弱いため慎重な管理が必要
◆撮影範囲と写真サイズがアナログより小さいものが多く、規格撮影が難しい
(3)IP/CCDセンサー設定の基準を理解しよう
規格撮影の際には、口腔内のどこに、どのようにセンサーを位置づけるかが重要。それに合った
適正なコーンの位置づけが必要となる。
■CCDによるエックス線写真はIPに比べ撮影範囲が小さいため歯全体が入らない場合がある。
→臼歯部を横に撮影すると像が切れるため、全体を写すために縦に撮影する場合がある。
※CCDでは、アナログやIPでの撮影方法を参考にしつつ、撮影範囲に留意しながら
センサーやコーンの位置づけ等を十分に理解してアレンジする必要がある。
■口腔内でのIP/CCDセンサーの位置づけは、端から4mmの部分に咬合平面に(歯の切端)
がくることが基準となる。
上顎咬合平面は、第一大臼歯より後方は上方に湾曲していることが多いことをふまえたIC/CCD
センサーの位置づけが必要
下顎咬合平面はやや湾曲しているものの、ほぼ平面であることをふまえたIP/CCDセンサーの
位置づけが必要
(4)痛みが生じる理由を理解しよう
①解剖学的な問題
上顎(口蓋の形態)
前歯部口蓋側がS字状に隆起しており(S状隆起)、そこにIP/CCDセンサーが当たって痛みを生じやすい。
臼歯部後方では嘔吐反射も起こる。
下顎(口腔底、舌)
上顎より敏感で痛みを感じやすいうえ、浅い口腔底と舌があるために撮影用器具が軟組織に当たる確率が
高くなる。さらに緊張等で舌に力が入ると口腔底がより浅くなり、器具の接触による痛みや嘔吐反射を招く。
口蓋が浅い
口蓋の陥凹がIP/CCDセンサーの幅より浅いとIP/CCDセンサーの端が当たり痛みが生じてしまう。
骨隆起がある
骨隆起にIP/CCDセンサーが当たり、痛みを与える。
下顎前歯部の幅が狭い
下顎前歯部舌側の幅が狭い場合、無理に挿入するとIP/CCDセンサーが舌下や歯肉を圧迫、痛みを与える。
舌・嘔吐反射
舌が大きいと撮影用器具が軟組織を圧迫してしまい、痛みや嘔吐反射が生じやすい。
②センサーの問題
折り曲げられない(IP、CCD)
IP/CCDセンサーは柔らかく作られていないため、折り曲げられないなど口腔内での柔軟性に乏しい。
センサーが厚い、ケーブルが出ている(CCD)
CCDセンサーは厚みがあり、さらに撮影時にケーブルが他の部位に接触するなどしてセンサーの設定位置が
ずれ、軟組織や粘膜を圧迫して痛みが生じる可能性が高くなる。
(5)患者さんへの接し方で痛みを減らす
①患者さんへの触れ方とセンサーの挿入
IP/CCDセンサーを口腔内に挿入する際、口角を無理に引っ張ってしまっては口腔内が緊張して、必ず痛み
が起きてしまいます。優しく指で口角を圧排しながら、斜めにIP/CCDセンサーを倒し、ゆっくり挿入していくと
比較的違和感が少ないまま挿入できます。
②照射コーンをあらかじめセッティングする
IP/CCDセンサーを挿入してから照射コーンを設定すると口の中にIP/CCDセンサーを入れている時間が
長くなり、患者さんのつらい時間が長くなってしまいます。
あらかじめおおよその位置にコーンを設置しておいてからIP/CCDセンサーを挿入したほうが、すばやく適当
な照射位置にコーンを据えることができ、患者さんの苦痛が少なくなります。
③声かけを多くする
撮影の際、患者さんはエックス線被爆やインジケーター挿入の痛み等の不安でいっぱいです。特に下顎への
挿入は緊張して舌があがり、撮影用器具が当たりやすくなります。そんなときは患者さんに声をかけながら
セッティングしていくと、患者さんの心がはるかに軽くなります。
【感想】
実際に自分が撮影される側になったときに、デンタル撮影がいかに苦痛なものかがよく分かりました。
診療においてデンタル撮影は欠かせないもので、その頻度も多いため、少しでもそれに伴う患者さんの苦痛を
減らすために気をつけられることはないかと思い、今回レポートにしました。(5)“患者さんへの接し方で痛みを
減らす”の項目は、すぐにでも実行できる内容なので、早速取り入れていきたいと思います。また撮影のポイント
をしっかりと理解し、一度で確実な撮影を行うことでも患者さんの負担を軽減できると思うので、(3)の項目を
参考に気をつけていきたいと思います。
衛生士 西内