スタッフレポート

「口腔粘膜異常~口腔粘膜診査における4つのPoint~」について、勉強会で発表して

 

 異常を察知するための診査項目は4

①口腔の構造・病変の部位

②病変の色

③表面形態・症状

④発症状況

     

歯科医師に報告するときには、患者さんに対して不安を与えない会話や

態度が大切。

 

 

Point, 口腔の構造と病変の部位を知る

口腔診査の前に、まずは口腔のつくり(構造)と各部位の名前を知る。

WHOによる口腔内の解剖学的分類…歯・歯肉、口唇、頬粘膜、

                 口蓋、舌、口底

口腔内の正常組織像を理解しておくことも大切。

 

◆上皮は基底層から角化層へと2~3週間かけて変化し、最後は垢として  

 消える。

→「3週間経っても治らない病変は、悪性腫瘍や難治性口腔粘膜疾患

を疑え」

◆上皮下の組織「粘膜固有層」には小唾液腺や味蕾などの付属器官が存在

 する

◆上皮の各細胞層、粘膜固有層、小唾液腺に病変が発症すると、口腔粘膜

 の色調や表面性状、形態に変化が見られる。

 

 

Point, 口腔粘膜病変・変化のいろ(色調)をみる

  口腔粘膜の病変・変化を診たとき、最初に飛び込んでくるのが

  「いろ(色調)」の変化。

→これらは表面の形(症状)と対応することが多い。

 

いろに関係する病変

赤…萎縮、紅斑、局所の炎症症状などと関連。

白…角化亢進、炎症にともなう落屑、カンジダ症(真菌感染症)など

  と関連。

黒…内因性色素(メラニン、ヘモグロビンなど血清色素)、外因性

  色素(歯科用金属など)と関連。

黄色…皮膚の皮脂腺が口腔粘膜に生じた変化のフォーダイス斑と

   関連。

茶色・グレー…上記色調の混合などと関連。

 

 

Point, 口腔粘膜病変の形、表面形態(症状)の変化をみる

表面の形が平坦か、隆起しているか、陥没しているかについて診る

①平坦な場合:色素斑、紅斑、萎縮、舌苔、偽膜、剥離

②隆起している場合:角化亢進、腫瘤、腫瘍、腫脹、水泡、肥大、

          結節、丘疹、ポリープ、膿胞

③陥没している場合:びらん、潰瘍、アフタ

 

黒色斑…メラニン色素の集まり。

紅斑…血管の集まり(透けて赤く見える)。

萎縮…組織体積の縮小状態。

角化亢進…角化層の増加。通常は白斑。

水泡…浸出液の集まり。

腫瘤・腫瘍・腫脹…組織の限局した増大。境界が明瞭。

びらん…上皮の一部欠損。

潰瘍…上皮の全層欠損。

 

口腔粘膜病変の症状は、お互いに変化しやすく、最終的には潰瘍に収束す

る傾向にある。

→もっとも典型的な病変を知る必要がある …そのためには、詳細

 な問診や粘膜の変化の精査が必要。

 

 

Point, 発症状況をみる

発症状況には  ①口腔粘膜に限局した固有の病変

        ②皮膚疾患や他部位の粘膜(眼、外陰部、咽頭、食道

         など)の病変と関連した病変

        ③内臓疾患など全身疾患の部分症状

などの種類があげられる。

                

経過、自覚症状、既往症、服薬状況などの情報を得ること

によっても発症状況の判断が可能。

 

赤い舌…シェーグレン症候群の口腔乾燥症からくる舌乳頭の萎縮による

    赤い平らな舌。全身疾患の部分症状。

黒い舌…舌の黒色の変化(黒色斑)。生検による病理組織学的所見は

    メラニン色素沈着症となった。

角化からくる白斑…白色を示す舌の病変。最終診断は口腔に限局する

         扁平苔癬となった。

(扁平苔癬は他部位の粘膜にも発症する)

頬粘膜の黄色い隆起…皮膚の皮脂腺が異所性に口腔粘膜に生じたフォー

         ダイス斑と関連した黄色変化。治療の必要はない。

口底の隆起…下顎左側の骨様硬を示す隆起。診断は下顎隆起となった。

      為害作用がある場合切除される。

歯肉の白斑…上顎右頬側歯肉の白斑。白板症と診断され、数年後に

      悪性化(扁平上皮癌)に移行。

 

 

【感想・考察】

   日々の診療の中で、口腔粘膜の異常を訴える方は少なくありません。

大半は擦過傷であったりアフタであったりと時間の経過とともに自然

治癒していく場合が多いですが、口腔の変化や病変は時として全身疾患の部分症状としてみられることもあります。

患者さんご本人以上に口腔内をよく目にする機会のある私たちDHが、いち早くその変化に気付いていくことが大切だと感じました。

先月のミーティングで「メインテナンスでの口腔がん診査」について

とりあげられていましたので、それと合わせて今回のレポートの内容を頭におき、診療にのぞんでいきたいと思います。

                      衛生士 西内寛恵

 

  2012/05/06   ふくだ歯科
タグ:口腔粘膜