義歯は、失った口腔の機能を補う身体の一部であるが、歯を失ったという喪失感もあり、それまで自分の歯で食事が出来ていた感覚とはやはり異なるでしょう。それでも適切なケアや対応によって、患者さんは義歯を受け入れ、長く快適に使用することが出来る。
高齢者は口腔領域の適応能力が低下している為、新しい義歯に対する「慣れ」には時間がかかる。また、今までの経験に基づいた思い込み、こだわり、好ましくない習慣・使用法は、新しい義歯を受け入れづらくさせる。しかし、そういった患者さんの経験を頭から否定するのは禁物で、「こうすればより良くなる」とアドバイスするスタンスが大切となる。「見た目が良い」「浮き上がらない」「しっかりしている」など、新しい義歯の良い点を前面に出して説明し、意欲を呼び起こしていく事も良い。
患者さんには起こりうる不快症状(痛み、発音の困難、唾液量の増加、嘔吐感など)をよく理解して頂き、的確な義歯調整によりステップ・バイ・ステップで「慣れる」「なじむ」を実感して頂く事が大切。
☆義歯に満足いただく為の新しい義歯の装着の指導ポイント
◆高齢の方が理解しやすいように、指導の要点を簡潔にまとめた指導説明書
を用いる。
◆あらかじめ起こりうる症状(特に疼痛をともなう事)をお伝えし、柔らかい口腔内に義歯をフィットさせる為には装着後の調整やメインテナンスが必要であり、「入れて終わり」とならない事をご理解いただく。
☆義歯洗浄
◆原則毎食後に歯ブラシや義歯用ブラシなどで刷掃しながら流水で水洗い
すること。
◆研磨剤による義歯の磨耗を防ぐ為、義歯用でない歯磨剤は使用しない。
◆落下時の破損を防ぐ為、水を張った容器の上で行うと良い。
義歯洗浄剤への浸漬のみでは、洗浄成分がプラークや油分に阻まれて ほとんど効果が得られませんので、ブラシ刷掃をしてから行うのが
基本。 |
☆保管方法
◆ヌメリ・臭い・着色を除去する為に、義歯洗浄剤を併用すること。
◆義歯劣化の原因となる為、60℃以上の熱湯をかけたり、浸したりする
ことは厳禁。
(乾燥も義歯劣化の原因となるので、乾燥させないこと。)
☆夜間の義歯装着について
◆原則として夜間就寝時は義歯を取り外し、湿り気のある状態で保管する。一晩、義歯洗浄剤に漬けておいても良い。これは装着したままだと残存歯周囲の自浄性が阻害され、菌が繁殖したり、床下粘膜の圧迫が解放されず、うっ血状態が持続するなどの悪影響を避ける為。しかし、「すれ違い咬合」や「多数歯欠損」のような場合は、あえて義歯装着を指示することもあるが、就寝前の徹底した義歯および口腔内の清掃指導が重要となる。
(感想)
新製義歯の説明と指導は、私たちも行うことがある為、今回この内容を取り上げてみました。この内容を参考に、患者さん一人一人の状況をよく把握し、的確な指導で、心地良く義歯と付き合って頂けるよう応援していきたいです。
衛生士 千田