「歯を白く」
参照 讀賣新聞2010.1/19~1/21
【黄ばむ要因は何か】
そもそも歯の色は、半透明のエナメル質から内部の象牙質の薄い黄色が透けて見えており、その為、自然な歯は真っ白でなく、やや黄色がかっている。
要因
◆加齢により ①エナメル質が薄くなる
②象牙質がより黄色く変化する
③エナメル質の内部に、唾液中のカルシウムやリンなど
が堆積し、象牙質が透けやすい構造になる
…といった変化でより黄色く見える
◆幼少時にテトラサイクリン系抗菌薬の服用をした
(出生直後~6、8歳まで。30歳代~40代前半の人に多い)
◆事故などの外傷による神経の壊死
◆虫歯の治療による神経の除去(抜髄)
◆飲食物、またタバコのヤニの付着によるもの
…コーヒー、紅茶、ウーロン茶、赤ワイン、カレーなど
→歯の表面に付いた直後の汚れは落ちやすいので、着色の付きやすいものを食べたら、きちんと歯磨きをする習慣を身に付けることで対処できる。
…好物を敬遠しなくても大丈夫。
《DATA》
花王ヒューマンヘルスケア研究センターが18~49歳の男女177人を
分析し、黄ばみの有無や主な黄ばみの原因を調べたところ、「白い歯」と
判定された人はたった20%だった。
【歯の着色を落とす為のセルフケア】
硬めのハブラシで、ヤニとり効果をうたう歯磨剤(粒子の粗いもの)を
使い、強い力でゴシゴシ磨くと、歯の表面に細かなキズを付けて
しまい、いったんは汚れが落ちても、再び付着しやすくなる為、
黄ばみやすい歯を作っていることになる。
□歯ブラシ→「軟らかめ」か「普通」の硬さのものを選ぶ。
柄が適度にたわみ、力がかかりにくい工夫をされている
商品もあり、使いやすい。
□唾液も大切→唾液腺を刺激するようなマッサージを患者さん自身にも時々やってもらうこともできる。 …両手の親指で、顎の付け根あたりの首の上部を押す
《DATA》
唾液分泌を抑えてしまう飲み薬
・消化管運動抑制薬…ブスコパン、チアトン
・尿もれ・頻尿治療薬…バップフォー、デトルシトール、ベシケア
・抗パーキンソン薬…アーテン、アキネトン
・抗ヒスタミン薬…レスタミンコーワ、ポララミン
・抗うつ薬…トリプタノール、トフラニール など
【酸蝕症】
炭酸飲料や果物などが含む酸で歯が溶け、冷たいものを食べた時などに
歯がしみる知覚過敏症が起こる
↓
歯のエナメル質が変化して透明度が増したり、エナメル質が溶けて、
その下の黄色い象牙質がむき出しになったりし、歯の色が黄ばんでいく。
※一度溶けた歯を元には戻せない
…強酸性飲食物でもその取り方を工夫すれば、症状の進行を緩やかに
できる
〔控えるべき事〕
①、「ながら飲み」…歯が常に酸にさらされていることになり、歯が
溶けやすい。
②、「ジョギングなど運動後の、強酸性飲用物による水分補給」
…口の中が乾いて、中性に戻す唾液が出にくく、酸蝕されやすい。
〔注意点〕
◇酸の強い飲食物をとったすぐ後の歯磨きは控える。
→酸にさらされた直後の歯は軟らかく、ここで歯を磨くとさらに表面が削れてしまう為、食後30分程おくこと。
…唾液の働きにより、口の中を中性に戻し、また含まれる カルシウムやリンにより再石灰化を促してくれる。
◇酸性の強い飲食物をとったらすぐ、お茶や水で口の中を中和させ
たり、赤ワインにチーズ、紅茶に牛乳というように再石灰化を促す
カルシウムが豊富な乳製品と合わせるのも良い。
《DATA》
エナメル質が溶け出すのはPHが5.5より低く、酸性度が強くなった時。
主な飲み物のPH値 |
||||
|
|
|
|
|
|
PH |
飲み物 |
|
|
酸性(強) |
2.2 |
コーラ |
|
|
|
2.9 |
梅酒 |
|
|
|
3.1 |
黒酢ドリンク |
|
|
|
3.4 |
赤ワイン |
|
|
|
3.8 |
スポーツ飲料 |
|
|
|
4.0 |
100%オレンジジュース |
|
|
|
4.3 |
ビール |
|
|
|
4.9 |
日本酒 |
|
|
|
|
|
|
|
|
5.5 |
エナメル質が溶け始める |
|
|
|
|
|
|
|
|
6.2 |
緑茶 |
|
|
|
6.8 |
牛乳 |
|
|
中性 |
7.0 |
ミネラルウォーター |
|
|
【感想・考察】
歯の色というのは、歯科にかかられる患者さんであれば最も気になる部分だ
と思います。それでこの新聞記事は、黄ばむ要因とそのメカニズムが分かり
やすく説明してあり、大変興味深かったです。また、「歯の色の調査」や
「酸性度の強い飲み物」といったデータは患者さんへのTBIなどに大変参考
になると思いました。虫歯予防には「食べたらすぐ磨く」というのが常識と
なっている中で、「酸の強い飲食物のすぐ後の歯磨きは控える」といった情報は、患者さんに合わせ上手に説明していくことが重要になると感じました。
これからのTBIにも、歯周病や虫歯予防、酸蝕症といった様々な要素と
バランスをとりながら、今回の内容を生かしていければいいなと思いました。
衛生士 河本