スタッフレポート

「咬合の果たす役割と影響の大きさを知ろう」について、勉強会で発表して

顎口腔系の構成要素のなかでも特に咬合は、咀嚼をはじめとする諸機能の場であり、筋や顎関節への

影響はもちろんのこと、全身への影響、更には脳へも顕著な影響を及ぼす極めて重要な要素です。

 

<脳への影響>

咬合の不調和は、アルツハイマー病の原因となるアミロイドBを脳内に正常値の3倍にまで大量に増加

させ、更に咬合を改善することにより脳内のアミロイドBを正常値まで減少させることを動物実験で

明らかにされました。咬合の改善がアルツハイマー病の有効な予防と治療法になる可能性を示唆して

おり、咬合治療の意義と歯科の重要性を示す画期的なものだと考えられます。また、咬合の改善により

大脳皮質前野の著名な活性化が認められました。大脳皮質前野は記憶、計画、意欲に関わるのでどの

年齢層においても咬合治療と日頃の咬合管理がいかに大切かを示しています。

 

<筋と顎関節への影響>

左右の顎関節は下顎骨を介して繋がっており、一対をなす複関節として下顎を誘導しています。その

ため、咀嚼のような極めて複雑で精巧な下顎運動を巧みに制御することができるのです。そして、この

複関節であることが顎関節、筋、咬合の3次元的な調和を不可欠なものにし、咬合が下顎頭位を規制

するため、わずかな咬合の不調和でも顎関節と筋へ大きなメカニカルストレスを加えることになり

ます。

<顔貌や全身への影響>

左側顎関節に相反性クリックを認め、左側の復位性顎関節円板前方転位と診断された患者さんです。

咬合由来で下顎が左側へ偏位し、以下に示すような顔貌への影響が認められました。

1. オトガイの左側傾斜

2. 頭位の左側傾斜

3. 顔の輪郭の非対称

4. 下顎角部の張りの左右差

5. 人中の歪み

6. 口唇の非対称

7. 口角の高さの非対称

8. 微笑時の口角の上がり方の左右差

9. 目の大きさの左右差

10. 目尻と口角の距離の左右差

11. 鼻唇溝(ほうれい線)の深さの左右差

12. 鼻唇溝(ほうれい線)の角度の左右差

13. 鼻翼の非対称

14. 前頸部のたるみ

顔だけでなく、左奥歯が低いために身体も歪み姿勢の変化も現れます。

1. 左奥歯が低い

2. 左へオトガイが偏位

    ・ 咬筋(左側)→低い左奥歯が当たるまで噛む

    ・ 顎二腹筋(左側)→低い左奥歯が当たりやすくするため顎を左後へ引く

3. 左側表情筋の緊張により顔が歪む

    ・ 大頬骨筋頭・小頬骨筋・笑筋・頬筋・口角挙筋・上唇挙筋・上唇鼻翼挙筋

4.左側頸部の筋の緊張により頭が傾斜、捻転  

    ・頭板状筋・頭半棘筋・肩甲挙筋・胸鎖乳突筋

5. 右肩を上げる  僧帽筋(右側)

6. 右側の背中の筋肉で身体を支え背骨は右へ側彎

    ・ 広背筋・胸腸肋筋・胸最長筋

7. 腰を左前へ押し出して身体のバランスをとるため腰痛も生じやすい

8. 左脚に体重が常時かかるため、左脚が短くなり足は内股になる

この状態が軽度で短期間であれば、原因である咬合の不調和を改善することによりこのような姿勢を

とる必要がなくなり、バランスよく歩くなどの普段の生活の中で本来の姿勢に戻ります。

しかし、この状態が長期にわたって継続すれば筋肉や骨格自体が変形してしまい、左側への傾斜が徐々

に進行して、腰を左前へひねるだけではバランスを保って体を支えきれなくなると、頭位を咬合の低く

ない右側へ傾斜させて体を支えざるを得なくなっていきます。こうして、咬合の不調和を改善しただけ

では体の歪みは容易に治らなくなってしまします。 頭位と下顎位や咬合との関係は密接で、身体バラン

スを整えてスプリントにより下顎位の偏位を修正すると身体の歪みが取れて良好な身体バランスが維持

できるようになり、身体運動能力も本来のベストな状態が保たれます。

 

感想

咬合は咀嚼だけではなく全身への影響、さらに脳へも影響を及ぼすとても重要な要素だとわかりま

した。咬合は食事を楽しむことはもちろん、人々の生活の質にも関わる大きな役割です。そのことを

しっかりと理解して歯科治療に取り組みたいです。

                           衛生士 松本

  2017/06/07   ふくだ歯科
タグ:咬合