フッ化物のう蝕予防効果を高める3つの重要事項
1.フッ化物を歯面(リスク部位)に送達する(届ける)
北欧では「イエテボリ法」と呼ばれるトゥースペーストテクニックが推奨されている。
イエテボリ法の手順
①湿らせた歯ブラシに1.5g(小児では0.5g)の歯磨剤をつけ、歯列全体に行 きわたるように
2分間ブラッシングする。
*ブラッシング中には歯磨剤は、吐き出さない
②ブラッシングが終わったら、吐き出さずに少量(約10ml)の水を口に含 み、30秒ブクブク
うがいをする。
③吐き出した後は水で洗口しない。
④ブラッシング後、2時間は飲食をしない。
●患者さんにはこう伝えよう!
①ブラッシング後のすすぎは、1~2回程度
フッ化物が停滞し、予防に効果的。
②ブラッシングは1日2回、そのうち1回は就寝前に
就寝中は唾液分泌が低下してフッ化物を長時間口腔内に留まらせることがで きる。
③フッ化物配合歯磨剤を歯間部や裂溝部にしっかり届ける
当て方や歯ブラシの選択を工夫する。
2.高濃度のフッ化物配合歯磨剤を使用する
フッ化物の濃度:国際標準化機構(ISO)での規格 1,500ppm以下
欧米諸国でのフッ化物配合歯磨剤⇒1,200~1,500ppmのものが広く普及
日本⇒1,000ppm以下と定められている(薬事法)
多くのフッ化物配合歯磨きはおおむね900ppm程度の濃度
●患者さんにはこう伝えよう!
④フッ化物配合歯磨剤は、軽くしめらせた歯ブラシにつける
乾いた歯ブラシに歯磨剤を直接つけてブラッシングを行うと、歯ブラシの 毛束の根元部分
に歯磨剤が残りやすくなる。また、歯磨剤によっては、適 度な水分がないと歯面で広がり
にくいことがある。
⑤磨く順番は、高濃度を保つためにう蝕好発部位から
フッ化物が唾液で希釈されていない高濃度のフッ化物をう蝕好発部位に 効果的に届ける
ために、もっともう蝕になりやすい部位から磨き始めるの が効果的。
*LFD法(Local Fluoride Delivery)
歯間部や裂溝部などのう蝕好発部位に有効な濃度のフッ化物を送達するブ ラッシング法。
う蝕好発部位にはその都度歯磨剤をつけ直すと適切な濃度 でフッ化物が届く。
3.フッ化物の効果が出る量を用いる
口腔内でのフッ化物濃度が300ppm以上あることが大事
300ppm以下では、フッ化物カルシウムは形成されず、イオンとして歯面に吸 着したものは洗口
などで流れやすくなり、歯面への残留性が低下する。
10歳以上では1gのフッ化物配合歯磨剤が必要
ブラッシング中に300ppm以上の口腔内フッ化物濃度を2分間保つためには 歯磨剤の使用量が1g
以上必要。
●患者さんにはこう伝えよう!
⑥フッ化物配合歯磨剤の量は、年齢に応じて
1,000ppmのフッ化物配合歯磨剤の場合
3歳未満(ブクブクうがいができない):「爪を切った程度」の極少量
3歳以上(ブクブクうがいができる):0.5cm(エンドウ豆粒大:0.25g)
6歳ぐらい:0.5g程度で少しずつ増やす
8歳ぐらい:0.7g程度
10歳ごろ:許容上限量は成人の許容量と同じ
小学校高学年:1gを目安
(1gの歯磨剤は毛幅が2cmの歯ブラシの場合、約3分の2程度に相当)
⑦ブラッシング時間は2分程度
フッ化物によるう蝕予防の視点:歯とフッ化物が十分に反応するためには2 分程度の反応時間
が必要。長く磨いても歯磨剤が唾液で希釈され、フッ化 カルシウムは生成されず、フッ化物
の歯面への留まる量が増加しない。 ただし、歯肉炎(歯周炎)の予防にはていねいに時間を
かけたブラッシング が必要。歯肉炎(歯周炎)予防とう蝕予防をかねたブラッシングでは、
最初は 歯磨剤を使わずていねいにゆっくりと磨き、最後の2分間でフッ化物配合 歯磨剤を
用いるとよい。
【感想】
筆者は最後に患者さんが楽しく続けやすいようアレンジをしていくことが大事と述べられていた。
フッ化物配合歯磨剤の年齢に応じた適応量や使用方法など具体的により詳しく知ることができたので
これらを参考に、患者さんに合った方法を伝えていけたらよいと思う。
衛生士 赤木