デンタルフロスの普及率の低さ
欧米(口腔疾患予防先進国)
口腔疾患好発部位のデンタルプラークに対抗する重要な予防手段の一つとしてデン タルフロスが
推奨されている。
日本
プラークコントロールの指導はTBI(Tooth Brushing Instruction)が中心であり、歯間部や歯頸部
が効果的に清掃する手段を伝えていないということは多くの専門家 が指摘している。
日本におけるデンタルフロスの普及率の低さは、フロッシングをすることの煩わしさや、歯科
医療職がデンタルフロスについて患者さんの疑問を解消するだけの 説明をしていないことが
一因かもしれない。
デンタルフロスは本当に必要か?
デンタルフロスの清掃効果についての研究(American Academy of Periodontology)
A 歯と舌のブラッシング+フロッシング
B 歯と舌のブラッシングのみ
↓
歯周疾患と関連して細菌について比較
結果:A 38%有意に歯肉出血が減少し、さらに口臭も有意に低下した。
B 歯肉の出血部位が約4%増加し、歯周疾患に関連する細菌が多く認められた。
歯周病や隣接面カリエスの原因となる歯と歯肉の間および歯間部のプラークを 除去すること
の重要性は明白であり、ブラッシングに加えてフロッシングを行う ことは日々のセルフケア
に必要不可欠であることが示唆される。
フロッシングを行わない言いわけ
① 「私の指が大きすぎてフロッシングができない。私の手や指は器用ではない」
⇒ホルダーつきのデンタルフロスなどの使用をお勧めする。
② 「デンタルフロスでポケットのより深い部位にプラークを押し入れてしまいそう」
⇒フロッシングのおもな目的は、」歯間に形成されている目に見えないバイオフィ ルムを
除去すること。フロッシングをすることにより、隣接面を中心とした歯面 の約30%が除去
され、これによりプラークが押し込まれることはありません。
③ 「歯ぐきから出血するので嫌だ!」
⇒適切な方法でフロッシングを行ったとき歯肉から出血するのは、不適切なセルフ ケアの
ために起こった歯肉炎の徴候かもしれません。これは、専門的クリーニン グとデンタル
フロスを含めた適切なセルフケアにより改善します。
④ 「年に2回専門的なクリーニングを受けているので必要ない」
⇒プラークは毎日蓄積されるものなので、専門的なクリーニングだけでは間に合い ません。
毎日の適切なセルフケアにより、歯石の沈着も最小限にすることができ ます。
⑤ 「ブラッシングとフロッシングに時間がかかりすぎる!」
⇒徹底的に行っても所要時間は約10分程度です。これは、ひげ剃りやお化粧にか かる時間
よりずっと少ないはずです。
⑥ 「フロッシングによって、歯ぐきに損傷を与えるのが怖い」
⇒歯肉を傷つけないためにも、 正しいデンタルフロスの 使い方を学びましょう。 ただし、
歯間空隙が 大きい場合は、 歯周病予防の観点からも 歯間ブラシのほうが 好ましいという
報告も あります。
感想
フロッシングをした方が口腔衛生的 にもよいとわかっていても、何かと 理由をつけて、しない場合
があります。 患者さんの「できない」「しない」ことの 状況をくんで、「できる」きっかけを 作れ
ればよいと思います。
衛生士 赤木