HIV医療講習会講演「歯科診療時の院内感染対策」 則安俊昭先生
歯科診療時の院内感染対策
一般的な感染経路(進入経路)
経口(食中毒、糞口感染)
感染性胃腸炎、腸管出血性大腸菌感染症、赤痢、アメーバ赤痢、A型感染症 など
経気道
麻しん、インフルエンザ、結核、感冒 など
粘膜
流行性結核炎、りん病、梅毒、性器クラミジア、(エイズ(HIV)、B・C型肝炎)など
創傷(血液感染)←→皮膚は強力なバリア
エイズ(HIV)、B・C型肝炎 など…なんでも
スタンダードプリコーション(標準予防策)
湿性生体物質(血液・体液〔汗は除く〕・分泌物排泄物)、粘膜、損傷のある皮膚は、何らかの
病原体を持っている可能性があることを前提に行う予防策
標準的な予防策
1.「1ケア1手洗い(ウォッシュ)、「ケア前後の手洗い」
・汚れがあれば、流水と(液体)石けん
・汚れがなければ、擦式アルコールで手指消毒
<禁止> ・ベースン法(浸漬法、溜まり水) ・共用タオル
2.防護用品:手袋、エプロン、ガウン、マスク等、汚染の可能性に応じて
3.針刺し、切創事故防止(医療従事者の感染防止)
リキャップ禁止、直ちに廃棄ボックスへ
(どうしてもリキャップしなければいけない時は片手法で)
4.従事者自身も感染源
鼻腔、咽頭、創部にはMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)が存在
指輪、腕時計、爪、マニキュア…
咳エチケット(必要に応じマスク着用)
→※咳・くしゃみの際はティッシュなどで口と鼻を押さえ、他の人から顔をそむけ
1m以上離れる。
※鼻汁・痰などを含んだティッシュをすぐに蓋付きのごみ箱に捨てられる環境を
整える。
※咳をしている人にマスクの着用を促す。
咳をしている場合、周りの方にうつさないために、マスクを着用する。
※マスクの使用は説明書を読んで、正しく着用する。
5.環境の清浄化
汚染は速やかに除去
床よりも高頻度接触部位の消毒(撤去)…ベッド柵、ドアノブ、手すり、のれん等
6.異変を早期に察知して対策を
2週間以上の咳…結核を意識
発熱、嘔吐、下痢患者の多発など(入院施設院内感染など)
B型・C型肝炎ウィルス(=感染力強い)の感染経路
●血液感染
◇注射針・注射器を肝炎ウィルスに感染している人と共用
…麻薬・刺青・歯科処置等において滅菌不十分な場合
◇血液を傷のある手で触ったり、針刺し事故を起こした場合
◇歯ブラシ・ひげそりの共用 ◇B型肝炎ウィルスに感染している人と性交渉をもった場合
◇B型肝炎ウィルスに感染している母親から生まれた子に対して適切な母子感染予防措置を
講じなかった場合(ワクチン接種などで防げる)
※日常生活でうつることはまずありません。
エイズ 後天性免疫不全症候群
HIV(人免疫不全ウィルス)が、免疫のしくみの中心であるヘルパーTリンパ球
(CD4細胞)という白血球に感染し、次第に免疫を破壊する。
自覚症状のない時期(無症候期)が数年続き、その後、免疫が低下してしまうと、本来なら
自分の力で抑えることのできる病気(日和見感染や悪性新生物など)を、発症するように
なる。 HIVは、感染力の弱いウィルスです。
【感染経路】
◆性行為…HIVは主に血液や精液、膣分泌液に多く含まれ、感染者の血液・精液・膣分
泌液から、その性行為の相手の性器や肛門、口などの粘膜や傷口を通って感染
する。 コンドームの正しい使用は、予防に有効な手段。
◆血液感染…針刺し事故、“回しうち”による注射器具の共用など
◆母子感染…HIV治療薬の服用や母乳を与えないことで、予防可能
(感染を1%以下に)
※性感染症(クラミジアなど)を発症しているとエイズにかかりやすくなる。
まとめ
感染力や感染経路をよく理解して正しく警戒する。
恐れすぎず、侮らずやるべきことを確実に行う。
みんな一人ひとりがかけがえのない人。
感染症はその人の付帯状況であり、人格を尊重し、正しく対応すべき。
↓
プロとして正しい知識と適切な対応を。
※診療拒否が起こらないようにすべき
※B型肝炎ウィルス、HIVを完全に排除することは出来ない
※感染力…HBV>HIV
【感想・まとめ】
今回のこの講習会の話から、改めて自分の考えや気持ちを調整することが出来たように思います。
もちろん知っていることや医院として行なっていることも多くありましたが、段々と“慣れ”から見え
なくなっている部分もあると思いますので、自分が今までどう考え、どのように行なってきたかを
振り返るきっかけになったと思います。感染しないこと、感染させないことに十分気を付ける必要は
ありますが、過度に恐れることなく、日々の診療を行なっていけたらと思いました。
衛生士 河本