歯のホワイトニング 基礎編
Ⅰ)1.ホワイトニングとは…歯の漂白(ブリーチ)
2.ホワイトニングコーディネーター制度
☆歯科衛生士の職域を越えてはならない
歯科衛生士の行う事柄(補助)
◆カウンセリング・ホワイトニングについての説明
◆歯科医師の指示の下
…術前の状態の記録・ホワイトニング効果の判定・歯面清掃・ホワイトニング処置
Ⅱ)1.ヒトの歯の色
比較的透明なエナメル質を透過して、不透明で淡黄色の象牙質が見えることにより知覚される。
☆象牙質の厚い犬歯は黄色っぽく見える
☆乾燥すると白く見える
2.歯の測色と記録…L*a*b*値
L*…明るさ(明度)→100=白、0=黒
a*…色相(赤み)→+a=+赤、-a=-緑
b*…色相(黄色み)→+b=+黄、-b=-青
3.歯の測色における留意点
測色計による色調の測定(商品名:クリスタルアイ測色計)
術前・術中・術後の口腔内写真の撮影
片顎ずつ行う事も重要
シェードテイキング…最も明度が高い(白い)のはB1
Ⅲ)歯の着色・変色
ファインマンのテトラサイクリン変色歯分類
F1…淡い黄色、褐色、灰色で歯冠全体が一様に着色されていて、縞模様は見られない…漂白◎
F2…第1度よりは濃く歯冠全体が一様に着色されていて、縞模様は見られない…漂白○
F3…濃い灰色、青みがかかった灰色で縞模様を伴うもの…漂白△
F4…着色が強く、縞模様も著名なもの…漂白×
テトラサイクリン系薬剤による歯の変色のメカニズム
・歯冠形成期に投与されたテトラサイクリンが硬組織内に取り込まれ、象牙質中にテトラサイクリン
-リン酸塩を形成→太陽光線が当たると光化学反応により色調変化を起こし、黄色から褐色を呈する。
・徐々に変色が濃くなる。
Ⅳ)ホワイトニングのメカニズム
ホワイトトニング材
オフィス…3.5~35%過酸化水素
ホーム…10%過酸化尿素
ウォーキングブリーチ…30~35%過酸化水素水+過ホウ酸ナトリウム
過酸化水素の分解と漂白作用
活性酸素が着色有機成分を色の薄い物質or無職の物質に分解する
ホワイトニング材の歯質内部への作用
☆変色しているのはほとんどが象牙質
☆象牙質内部まで浸透する
→ホワイトニング材は歯の表面のみならずエナメル質を透過して、
エナメル象牙境、象牙質まで漂白される。
Ⅴ)ホワイトニングの安全性
ホワイトニングの適応症、非適応症ならびに禁忌症
1.有髄歯
適応症
・増齢に伴う変色(黄ばみ)
…年齢とともにエナメル質が薄くなり黄ばんだ象牙質の色を透過して見えている
・軽度のテトラサイクリン変色歯(Feinmanらの分類第1、2度)
・軽度のフッ素症
非適応症ならびに注意を要する症例
・重度ならびに縞模様のあるテトラサイクリン変色歯(Feinmanらの分類第3、4度)
・重度の石灰化不全のあるもの
・重度の象牙質知覚過敏症
・形成不全など実質欠損の大きいもの
・エナメル質の切縁が黒っぽく見えるもの
→切縁の色調は変わらない(口腔内の暗い色を透過しているから)
・(注)エナメル質に亀裂のあるもの
→知覚過敏の可能性が大きい…検査の時によくエアをかけてチェック
…鏡を見せてKr.に説明
・(注)コンポジットレジンなど大きな修復物があるもの →レジンの色調は変化しない
・(注)軽度の石灰化不全 →(一時的に)縞模様が目立つ
2.無髄歯
適応症→歯髄疾患による変色
・歯髄死による象牙質内有機質の変性
・打撲による出血歯髄死
・失活剤による歯髄出血
・抜髄時の不完全な止血
・不適切な修復による歯髄死
・抜髄、根管治療時の歯髄の取り残し
非適応症
・金属物質による変色(アマルガム、メタルコア)
・歯質が不十分なもの
・仮封がしにくいもの
・根未完成歯
3.全身的な要因による禁忌症(有髄歯および無髄歯)
・無カタラーゼ症(過酸化水素を分解する酵素であるカタラーゼを持たない)
→ホワイトニング時に発生する活性酸素が口腔内や血管内の赤血球に働きかけ
口腔壊死を起こしてしまう
・妊娠中、授乳中の女性
・小児
・光線過敏(オフィスホワイトニング)
・呼吸器疾患(ホームホワイトニング)
※30~35%高濃度過酸化水素
→軟組織に付着した場合、ただちに多量の水で洗い流す
※10%過酸化尿素
→3.6%の過酸化水素と6.4%の尿素に分解される
Ⅵ)ホワイトニングの問題点
1.象牙質知覚過敏症
→知覚過敏が生じた場合、ただちにホワイトニングを中止
→シュウ酸やCPP-ACPなどを含む薬剤などで象牙質知覚過敏処置を行う
→症状の改善後は時間を短くして再開
2.後戻り
ホワイトニング直後はエナメル質表面を覆っているペリクル(ムチンによる歯面の保護膜)
が除去されるため、歯面に色素が付着しやすい
→オフィスホワイトニングの施術後24時間、ホームホワイトニングの実施期間中は、
着色しやすい飲食物摂取を避けるよう指導
ホワイトニング後、2週間くらいの間に多少の後戻りがありますが、その後は比較的安定する。
1か月から3か月に1回程度のPMTCを促し、必要に応じてタッチアップホワイトニング(再漂白)を行う。
Ⅶ)ウォーキングブリーチ法
→無髄歯の髄腔内に漂白剤(30~35%過酸化水素水と過ホウ酸ナトリウムの混合ペースト)
を封入し、内部から漂白する方法
Ⅷ)デュアルホワイトニング(コンビネーションホワイトニング)
→同一歯に対して2種類のホワイトニング法を併用する方法…ホーム+オフィス
【感想・考察】
ホワイトニングコーディネーター講習会に参加させて頂き、基礎編をレポートとしてまとめてみました。講習会では、教科書通りにはいかない診療現場での実情と実際的な内容を、エビデンスと、先生方のこれまでの経験に基づいた、テキストにこだわらない講義をして下さり、大変興味深かったです。知っていることもありましたが、それ以上に初めて知り得た情報も多く、有意義な一日となりました。今まで何気なく行なっていたことや部分的に知っていた内容など、自分の中で“点”として存在していたものが一つに繋がったようなそんな感覚もあり、「あぁ、そういうことだったのか」と大いに納得出来ました。講習会に参加することが出来て本当に良かったと感じています。
衛生士 河本