~萌出前からの継続した管理で6歳臼歯を守ろう!~
《萌出前の管理と指導》
保護者・子どもへの情報提供がもっとも重要!
☆この時期に考慮したいこと☆
①生えてきたことに保護者が気づきにくい。そのため、萌出直後の6歳臼歯の適切なケアがされない
②保護者が6歳臼歯を乳歯と勘違いしてしまうことが多い。そのため、萌出直後の6歳臼歯が「はじめて生える大切な永久歯である」との認識が欠け、適切な準備ができない
☆歯科衛生士業務のかんどころ☆
①萌出時期を推測する
6歳前後になると乳臼歯の後方の歯槽堤が膨らんできます。
それが萌出のサインですので、5歳を過ぎたら第二乳臼歯後方の歯槽堤を注意深く観察し、
萌出時期を推測します。(図1)
また、同じ時期には下顎前歯がぐらぐらして抜ける、上顎前歯に隙間(発育空隙)などの影響が出てきます。このような変化も観察します。
②う蝕予防についての健康教育
保護者の理解・強力が不可欠であるため、保護者(一番に母親)の予防に対する関心をもってもらうような教育をします。
《萌出開始時期の管理と指導》
特にう蝕になりやすいことを考慮したケアを!
☆この時期に考慮したいこと☆
①萌出時は歯肉弁に覆われているため、うまく咬合面を磨けない
②萌出したての歯は、石灰化が未熟で軟らかいため、脱灰しやすい
③まれに萌出の段階で形成不全を起こしている歯がある(エナメル質形成不全、減形成)
④咬合面溝が、乳歯よりも複雑かつ深いためプラークが溜まりやすい
⑤乳歯列より約1cm後方に位置し、そこまで歯ブラシを入れることは、子どもにとって難しい
☆歯科衛生士業務のかんどころ☆
①萌出直後の6歳臼歯の問題を見逃さない
萌出してきた6歳臼歯の状態をよく確認します。歯冠部エナメル質に形成不全や象牙質深部う蝕が発見された場合、早期に対応が必要となります。完全萌出時には歯髄まで達するう蝕に進行してしまう危険があるため、短い間隔での観察をします。
②予防の計画を立てる
③困難な部位へのケアのサポート
歯肉弁の覆われた状態では、ホームケアではプラークを完全に落とせてないことがあります。(図2)
歯肉弁に覆われた部分や咬合面溝などケアができてない部位のプラークを、プロフェッショナルケアで除去します。
④変化する口腔内の状態を記録に残す
萌出以降の管理と指導
近心面・遠心面のう蝕に注意!
☆この時期に考慮したいこと☆
①第二乳臼歯の脱落後、第二小臼歯の萌出スピードが速いため、6歳臼歯近心面チェックがなされない場合がある。すると近心の脱灰など病変に気づくのが遅れてしまう
②6歳臼歯が第二乳臼歯よりも低い状態で萌出している場合では、ケアが困難
③歯肉弁が取れない状態での萌出早期では、ラバーダムがかけにくくシーラントが困難
④外見上では歯冠部エナメル質に問題ないが、隠れた象牙質う蝕が起きている場合があり、見つけにくい
☆歯科衛生士業務のかんどころ☆
①6歳臼歯近心面の観察
6歳臼歯が萌出、側方歯の交換が進んだ10歳ごろに第二乳臼歯が脱落します。脱落後には6歳臼歯近心面に脱灰があるかを観察します。第二乳臼歯遠心にう蝕があった場合は、高確率で6歳臼歯近心面に初期う蝕が発見されます。このときを逃すと第二小臼歯と接触してしまい初期う蝕の発見が遅れます。
②定期観察中での6歳臼歯の問題を見逃さない
③時期をみてシーラント処置をする
④6歳臼歯の上下咬関係の確認
⑤成長を考慮して保護者とのコミュニケーションに努める
学年が高くなると、塾や習い事で予約が難しくなり、また保護者から離れて子ども1人での来院が多くなります。そのため保護者とコミュニケーションがとりづらくなります。
手紙や連絡ノートなどの工夫で、来院が中断しないようにする努力が一段と必要となってきます。
⑥デンタルフロスによるケア
完全萌出後には、遠心にデンタルフロスを使うように伝えます。これは、6歳臼歯だけでなく、第二大臼歯を守るためということも理解してもらいましょう。
《まとめ・感想》
6歳臼歯は「歯の王様」と呼ばれるとても重要な歯です。しかし、永久歯の中では最もう蝕になりやすい歯です。そのため、かかりつけ歯科医と歯科衛生士が、なるべく早い時期から支援の手を差しのべ、6歳臼歯を守っていくことが大切です。子どもの成長発育は様々です。歯科衛生士はどの時期に何をすべきか、その子どもに合わせた計画を立て、認識しておく必要があります。このことが子どもたちの将来的な正しい歯並びや噛み合せ、咀嚼の上達に繋がります。 衛生士 関口