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「赤ちゃんのためならできる」おめでた禁煙について

☆日頃できないことを可能にする赤ちゃんパワー

 2013年の「健やか親子21」の最終評価によれば、妊娠中の母親の喫煙率は、妊娠前の12.4%から

 3.4%まで減ることが示されました。 この調査から分かるように、妊娠中は日頃できないことでも

 「おなかの子どものために」という思いから行動変容が起きやすい時期であるといえます。

① 家族の喫煙が子どものう蝕を増やす

 兵庫県神戸市の乳幼児健診データを用いた追跡調査では、家庭内受動喫煙がある場合、1歳半の時点

 でう蝕がない子どもでも、3歳までにう蝕を発生した割合が男女とも高くなりました。

 *家庭内喫煙の有無と3歳までのう蝕発生率

  男児:家庭内喫煙なし・・・14.3%    家庭内喫煙あり・・・21.0%

     女児:家庭内喫煙なし・・・12.6%    家庭内喫煙あり・・・18.8%

② 乳歯は特に受動喫煙の影響を受けやすい

     乳歯は永久歯と比べて受動喫煙とう蝕に関連が認められた研究が多く、家庭内受動喫煙の影響を

     調べた12論文の結果を抽出すると、受動喫煙がない場合を1としたら「う蝕のなりやすさ」は、

     乳歯で1.5~3.5、永久歯は1.0~2.0を示しました。

③ 妊娠中の喫煙もおなかの子のう蝕を増やす

    研究の数はまだ少ないですが、母親が妊娠中に喫煙したことによる「出生前受動喫煙」が子どもの

    う蝕に与える影響についてもエビデンスがあります。

    う蝕のなりやすさは、

    出生前受動喫煙が妊娠初期のみ・・・1.4倍  

               妊娠中ずっと・・・1・7倍

    妊娠初期のみの喫煙であっても、生まれた子にう蝕の割合が増えるのは、妊娠初期が乳歯の歯胚が

    形成される時期であることが関係しているのでしょう。

④ 出生前と出生後のダブル受動喫煙でう蝕の割合はさらに増える

  「出生前受動喫煙」と出生後の家庭内受動喫煙(出生後受動喫煙)の両方があった場合は、どちらか

    のみの場合と比べてう蝕がある子ども割合はさらに増えます。

⑤ 喫煙する家族が増えると子どものう蝕も増加する

    家族内の喫煙者数が多くなると、それにともないう蝕も増加することが分かっています。 父親のみが

    喫煙する子どもと比較して両親ともに喫煙する子どもは、1人平均う蝕経験歯数が多くなることが

    示されています。

    う蝕のなりやすさは、

    “両親とも吸わない”に比べると“父親のみ吸う”は1.5倍、

    “父母とも吸う”は2.3倍です。

⑥ 子どもの前で吸わなくても子どものう蝕に影響がある

     喫煙者の呼気や衣類などにタバコ煙の有害成分が残留して健康に影響を及ばす、いわゆる「三次

     喫煙」があるため、子どもの前でタバコを吸わなくても受動喫煙のう蝕への影響はゼロにはなり

     ません。

⑦ 妊娠中や出生後に禁煙すれば子どものう蝕は減少する

     出生前や家庭内の受動喫煙が中断された子どもは、受動喫煙が継続した子どもに比べてう蝕がある

     割合が低いことから、禁煙は子どものう蝕増加を予防すると考えられます。

☆タバコ煙の成分がう蝕をつくる

    ◎ニコチンがう蝕細菌を増やす?

     受動喫煙は、血液中ビタミンC濃度の低下、免疫機能の抑制、鼻づまり(口呼吸の可能性)を引き

        起こし、これらはう蝕細菌を増加させる要因となります。タバコ煙の主成分であるニコチンの濃度

        が高くなると、バイオフィルム(プラーク)の成熟度が増すことや、ミュータンスレンサ球菌の

        成長が促進されることが実証されています。受動喫煙がある子どもはない子どもに比べて、口腔内

        のミュータンスレンサ球菌や乳酸桿菌が多いとの報告もあります。

    ◎カドミウムが唾液の量や質を悪くする?

     タバコ煙に含まれるカドミウムには唾液腺への障害性があり、障害により唾液流量が減少すること

        が考えられます。

    ◎鉛やカドミウムが歯質をもろくする?

     動物実験では、タバコ煙中の鉛やカドミウムが歯質の結晶化を傷害する結果が示されています。

        また、歯の形成期にタバコ煙に曝露された場合、歯の石灰化やエナメル質の正常な形成が抑制

        される可能性があります。

  2018/02/14   ふくだ歯科
タグ:禁煙